第十八話 プラリネ入りガトーショコラ④
商業ギルドの受付に戻ると、案内係の女性が慌てた様子で「どうぞこちらへ」と鑑定の窓口へ案内してきます。窓口には複数の職員らしき人々が集まっていました。
「大変お待たせいたしました。審査結果をお伝えします」
椅子に腰掛けると、最初に品を受け取ったのとは別の方が話し始めました。年配の女性で、眼鏡をかけています。
「まず衛生面ですが、完璧です。何も問題はありません。さすが聖女様の浄化のお力です」
「安心しました」
「次に味と品質です。こちらも素晴らしかったですわ。材料はそこの商店で買われたものですか?」
「ええ、そうです。他国の珍しい材料も取り扱いがあったので」
「そこの商店は私も利用しますが、同じものは決して作れないでしょう。またこのラップという保護膜⋯⋯こちらも乾燥を防ぎ、外からの付着物を防ぐ点において非常に優秀です。包装もおしゃれですね」
「商いは許されますか?」
「当然です。むしろ屋台で売るのがもったいないほどです。資金に余裕があるなら、店舗もおすすめしますわ」
「数を作ることができないので、まずは屋台で少し出してみたいんです」
「かしこまりました。他に種類を増やすご予定はありますか?」
「はい。ガトーショコラタルトの売れ行きを見て、少しずつ増やす予定です」
「でしたら、お願いがございます」
女性は眼鏡をキラッと光らせました。周囲の職員の方が何かを持ってきます。
それは青や緑にちらちらと輝く薄いカードでした。横には証明書のような物も置かれています。
「私どものギルドと専売契約を結んでいただきたいのです。その代わり、このプラチナギルドパスとプラチナ証明書をお渡しします。プラチナギルドパスがあれば、販売経路の拡大を考える際に、大きな品質証明になります。また、プラチナ証明書を屋台に掲げればよりたくさんの集客が見込めるはずです」
「どちらも商人が喉から手が出るほど欲しがるものだ。悪い話じゃない」とヴァルハルト様が耳打ちしてきました。
「なぜ、そこまでしていただけるのですか?」
「確実に売上が見込めるためです。この街に、あれほど軽やかで可愛らしいお菓子は存在しません。出来れば、よそとは契約していただきたくないのが本音です」
私はしばらく悩みましたが、専売契約を受け入れました。そこそこ大きな街ですし、街の人は皆いい人です。いずれは販売経路の拡大も検討してもらえるそうですし、プラチナパスも品質証明書もとても魅力的です。
これなら、不安無くタルトを売ることが出来ますね。
「屋台についてですが、場所のご希望はございますか? 商業区は西側ですが、私共としては、北側の冒険者ギルドのそばをおすすめします。最近は女性の冒険者も多いので、甘いものは喜ばれますよ」
「はい、そこでお願いします」
「では、続けて契約締結とギルドカードの発行に移ります」
こうして全ての手続きを終える頃には、もう夕方になっていました。
屋台にも案内してもらったところ、屋台というより売店に近いようなしっかりした作りです。大まかに出店の打ち合わせをし、夕食の材料を買い込んで私たちは帰路につきました。
銀竜の鱗が震えるような不測の事態は起こらず、私もヴァルハルト様も心の底からホッとしました。さあ、後は商品作りを頑張らなければなりませんね。




