第十話 フランボワーズショコラタルト③
ヴァルハルト様が外へ出たので、私たちは片付けと洗濯をしてショコラタルトの準備を始めました。
今回はタルト生地にココアを混ぜたところ、エステルは興味津々で粉をなめていました。お行儀が悪いので注意しましたが、どちらにせよ美味しくなかったようです。「にが〜い」と顔をしかめていました。
「フランボワーズのピューレを作ってくれる? お砂糖と混ぜて、弱火でゆっくり煮込むのよ。魔石を使ったコンロがあるわ」
「はーい」
エステルは焦らずコトコトとピューレを混ぜています。その間に、私は卵を卵白と卵黄に分け、卵白とグラニュー糖を泡立て器で混ぜてメレンゲを作りました。
チョコレートを湯煎で溶かし、メレンゲと生クリームと一緒に軽く混ぜます。タルト生地に流し込み、一時間ほど冷やして固めます。
「ピューレができた!」
「じゃあ、ゼラチンと一緒に混ぜましょうね」
「わぁ、トロトロになってる」
ピューレは置いておき、その間に使った道具を洗って片付けました。
一時間後。ショコラクリームが固まったのを確認したら、チョコと生クリームでガナッシュを作ります。
「ショコラクリームの上にピューレをかけてくれる?」
「はーい! うわぁ、とっても綺麗⋯⋯!」
「この上にガナッシュをかけて、冷やして固めましょう」
「上は何をかけるの?」
「軽くココアパウダーをふって、フランボワーズを飾ったらいいと思うわ」
固まるのを待っている間、私たちはお昼ご飯を作りました。今日はミネストローネとフレンチトーストです。コンソメは野菜や肉を細かく刻み、オーブンで乾かして作りました。
「ただいま! お、また美味そうな香りがする」
昼食が完成したころ、ヴァルハルトが帰ってきました。メイルを脱いで湯浴みをしてもらい、上がってきたところでご飯です。
「わ、野菜がいっぱい! トマトがトロトロしてて美味しい!」
「身体に良さそうなスープだな!」
三人で食事をしながら、色々なことを話します。私はエステルに魔王の好きなものを聞いてみました。
「エステル。貴女のお父様の好きなものは何がありますか? お父様に、私の作ったものを食べてもらえればと思って⋯⋯」
「父様は甘いものが大好きよ」
「よかった。それならタルトも気に入ってもらえるかもしれないですね」
「後、父様は人間の飲むこおひい? がすごく好き」
「ありがとうございます。とても参考になりました」
これなら、もう選択肢は一つです。
タルト・オ・フロマージュ・モカ。
チーズとコーヒーのタルトです。ほんのり苦みもあり、甘酸っぱく大人の味です。ただ、後はコーヒー豆が手に入るかどうかですね。
三人で話は弾み、いよいよフランボワーズとショコラのタルトを食べ始めた時。エステルは「甘酸っぱい〜!」、ヴァルハルト様は「甘みと酸味がちょうどいいな!」と話しながら一口、二口と口に運びました。
「アリサはタルトを売ったりはしないのか? 見た目も可愛らしいし、女性に人気が出そうだが⋯⋯」
「あまり考えたことがなかったです」
「これを俺達だけで食べるのはもったいない気がする。どうにか出来ないか検討したい」
「ヴァルハルト様にだけ任せるのは申し訳ないです。私も少し考えてみますね」
もしどこかへ売りに出すなら、次はプラリネを入れても合うかもしれませんね。
新しいタルトに思考を巡らせながら、皆でゆったりと食後のハーブティーを飲んでいる時。なぜか外からガタガタと音が聞こえました。




