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第38話 女主人の席順表

騒ぎのあと、広場の一角に小さな晩餐の席が改めて整えられた。


 今度は祝うためだけの食卓だ。私は席札を並べながら、誰をどこへ座らせるか考えていた。ヘレナは正面すぎると落ち着かなそうだから窓際。ノーラは厨房への出入りがしやすい端。オーウェンは帳面を広げても邪魔にならない柱の近く。


「自然にやっているな」


 背後でエイドリアンが言う。


「何をですか」


「人を座らせる順番を決めることだ。誰が何を見やすくて、誰の隣なら話しやすいかまで考えている」


 私は小さく息を吐いた。


「食卓は料理だけでできませんから」


「その通りだ」


 彼は私の手元の最後の席札を見た。そこには、エイドリアンの隣に私の名を書いてある。


「そこに座るのは義務ではない」


「知っています」


「なら」


 私は席札をまっすぐ置いた。


「自分で決めました。今日はそこがいちばん見やすいので」


 少しだけ意地悪な言い方をすると、エイドリアンの目がやわらぐ。


「理由が仕事でも構わない」


「半分はそうです」


「残り半分は」


 答えずに席札を整えると、彼はそれ以上追わなかった。追わないところが、この人らしい。


 やがて皆が席につき、笑い声と食器の音が重なる。私は自分の名札の前に座り、広がる食卓を見渡した。ここにはもう、私を黙って差し出す席は一つもない。


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