38/40
第38話 女主人の席順表
騒ぎのあと、広場の一角に小さな晩餐の席が改めて整えられた。
今度は祝うためだけの食卓だ。私は席札を並べながら、誰をどこへ座らせるか考えていた。ヘレナは正面すぎると落ち着かなそうだから窓際。ノーラは厨房への出入りがしやすい端。オーウェンは帳面を広げても邪魔にならない柱の近く。
「自然にやっているな」
背後でエイドリアンが言う。
「何をですか」
「人を座らせる順番を決めることだ。誰が何を見やすくて、誰の隣なら話しやすいかまで考えている」
私は小さく息を吐いた。
「食卓は料理だけでできませんから」
「その通りだ」
彼は私の手元の最後の席札を見た。そこには、エイドリアンの隣に私の名を書いてある。
「そこに座るのは義務ではない」
「知っています」
「なら」
私は席札をまっすぐ置いた。
「自分で決めました。今日はそこがいちばん見やすいので」
少しだけ意地悪な言い方をすると、エイドリアンの目がやわらぐ。
「理由が仕事でも構わない」
「半分はそうです」
「残り半分は」
答えずに席札を整えると、彼はそれ以上追わなかった。追わないところが、この人らしい。
やがて皆が席につき、笑い声と食器の音が重なる。私は自分の名札の前に座り、広がる食卓を見渡した。ここにはもう、私を黙って差し出す席は一つもない。




