第34話 偽装ラベルの終着地
取り押さえた男たちの供述は、朝までにほぼ揃った。
ベルノー商会は実行役にすぎない。仕掛けたのは調達官フェナールだ。王宮の春宴で費用を削り、もし味や安全に問題が出れば、ゼファール経由の荷と、その監督を担った私へ責任を被せるつもりだった。
「あなたが王宮へ戻れば、都合よく幕引きもできたのでしょうね」
ヘレナの声には、珍しく露骨な嫌悪が混じっていた。
「現場を守る気がない人です」
「数字しか見ていない」
私は帳面の端をなぞる。安い仕入れ、責任転嫁、都合のいい人材の再利用。全部、王宮で何度も見てきた構図だ。
だが今回は違う。港の倉庫、青い封蝋、偽印章、番頭の証言。隠しようのない形で証拠が残った。
「王都へ送るだけでは足りません」
私が言うと、エイドリアンが視線を上げる。
「まだ何かするのか」
「ゼファールの名を使われた以上、こちらの名で終わらせます。次の港祭で、検品済みの献立を公に出しましょう。王宮の荷がどう守られるべきだったかも含めて」
「公開で」
「はい。黙って書類を返すだけでは、噂の尾が残ります」
ヘレナが腕を組み、少ししてから頷いた。
「私も立ち会います。フェナールの名を伏せる理由はありません」
王宮の人間がそこまで言うなら十分だ。私は深く息を吸う。
戻れと言われるままに動くのではなく、ここで決めて、ここで終わらせる。ようやくその順番になったのだと思った。




