37話 「ノアを守る作戦」……?
ツルカネオからノアを守ると意気込んだヒューリスとオーラは、ノープランであった。
「あ!私、いい案があるわ!まずは特訓!」
「特訓?あたしたちの問題は、強さとか関係ないわよ?」
「いいえ!ノアを超えなきゃならない!ノアが危険な以上はね!」
オーラの提案に、ヒューリスは違和感を覚える。
「まぁ…強ければ守れるか。わかったわ。で、何すんのよ?」
「じゃ、まずは魔力操作から教えるわね!」
オーラはヒューリスに教え始める。が、ノアは気づく。
「オーラさん…魔力操作で貴族を殺すのは、ダメです!」
「え…魔力操作って、人を殺せちゃうの?あたし、犯罪者にはなりたくないわよ!」
オーラは、「貴族」という言葉に違和感を覚える。
「貴族…?何言ってるのよ。これは、対ノア戦の訓練よ?」
「対ノア戦って、なんですか?私を守ってくれるんですよね?」
「何言ってるのよ。私は私を守るのよ。ノアは十分強いんだし、1人でどうにかできるでしょう?」
ノアはピンときた。
(オーラさんは、私を危険だと言ってたんだ!……え、なんで?酷くない?)
ノアはため息をつきながら、事の経緯を話す。
「つまり……あなたは、キモイ貴族に狙われてて、それをどうにかしたいと?」
「はい。私は別に大丈夫なんですけど、ヒューリスさんもブスオリ様も、危ないと…」
ノアはヒューリスを見る。見ると、ヒューリスはとても呆れているようだった。
「なんで、ノアが危険だからノアから身を守るって話になるのよ…わかってないなら、初めから言いなさいよ…!」
ブツブツ文句を言うヒューリスに気づかないで、オーラは静かにヒューリスとブスオリを見る。
「……ノアよりも弱そうじゃない。この2人に守ってもらうの?」
「私は別にいいんですよ。依頼は大妖精であるオーラさんを見つけることですし。」
「そう。なら、帰るわ。」
そう言って、オーラが立ち去ろうとすると、ヒューリスが立ちはだかる。
「ねぇ…あんた、仲がいい人を危険にさらすの?へぇ〜…なんて薄っぺらいことぉ!」
オーラは、カチンときた。
「はぁ?私は、ノアの強さをちゃんとわかってて、信用してるから大丈夫って言ってるのよ。あなたこそ、上司だかなんだか知らないけど……ノアのこと何も知らないのねぇ?」
「なんですってぇ…」 イラッ
「ストーップ!」
ノアは2人のことを止める。
「いいですか…仲良くしてください。きっと何もないですから、心配しないでください。」
ノアは真剣に言うが、ヒューリスはオーラにコソコソと説明する。
「お願いよ…ノアに何かあったら、あたしはきっと殺される。」
「そう。それは良かったわね。おめでとう。私はあなたの墓に行ってあげるわよ?」
「ふふ…何言ってるの?あの人は、ノアを守れるはずだった人全員殺すわよ?」
「は?ただの暴君じゃない!」
(殺されるのは御免よ!)
オーラが大声を出すため、ヒューリスは「しーっ!」と止める。
「そんなのどうしてわかるのよ?」
「あの人が怒った時の殺気が…ノアから感じるのよ。あぁ…死にそう。」
「はぁ…ノアを守ればいいのね。何もされなければ。」
「ええ。何もなければ…」
交渉が成立したようで、ヒューリスとオーラはノアの方を向いて話し合う。
「行かなきゃいいんじゃないの?私の城で、一晩過ごせば。」
「でも、報告もしないとですし、食事の誘いもありますし…」
「ギルドで面倒見るわよ!」
「行かないといけませんから…」
ヒューリスとオーラの中では、ツルカネオの元へ帰るという気はない。2人とも「会わなければ、問題なし〜」という考えである。
「ギルドじゃ、圧力に屈してしまうのではなくてぇ?」
「あ〜ら…あんたの城は、さぞボロボロでしょ〜ねぇ?」
ヒューリスとオーラは、ノアを守ることよりも互いをけなしている。
「あのー…私を守るって話は、無しでいいですね…?」
「「あたし・私が守るわよ!」」
2人は睨み合う。
「ちょっと、真似しないでよ!」
「私ではなく、あなたでなくてぇ?」
(息ぴったり…)
ノアの言葉に、2人は仲良く同じ反応を返した。
「ブスオリ様…帰りましょうか?」
「え、いや…あの、大丈夫なんですか?」
「あの2人は大丈夫ですよ。」
そう言って、2人してヒューリスとオーラを見る。
相変わらず2人は互いをけなし合い、圧力と殺気が漂っている。
「さっきまで、共闘する感じだったんですが…」
「きっと、2人ともノアさんを守りたいんですよ。」
ブスオリは、どこか羨ましそうに言った。が、ノアはそのことに気づかない。
「終わりそうにないですし、1度森を出ましょう。」
「え…でも、2人は?」
「……話しながら着いてくるんじゃ…ないですかね?」
「あ、そう、なんだ…」
ノアはブスオリとともに、森の中を歩き始める。歩き始めると、ヒューリスたちの声は少し小さくなったが、しばらくして後ろから聞こえてきた。
「着いてきてますね。ブスオリ様は大丈夫ですか?」
「ええ…でも、この森は迷いそうですね。迷わないんですか?」
「そういえば迷いませんね。テキトーに歩いてるだけなんですが…なぜでしょうか?」
ノアは首を傾げる。ノアは先頭を歩くことがないため、方向はわかっていない。
(もしかして……私には、脳内に地図でも作れるんじゃ?やったー!)
「え…この方向で大丈夫なんですか?」
「うーん…でも、こっちな気がするんです。」
「本当に大丈夫…?」
「大丈夫です!きっと私は、頭の中に地図があるんです♪」
(脳内に地図……取り出せたりするかな…?)
ノアは、自身の新たな能力に思いを馳せる。
(私が森を動かしてるんだけど……)
オーラがため息をつく。
「ちょっと!なんで、ため息ついてんのよ!」
「別にいいでしょ!私はあなたに付き合ってあげてるんだから!」
「何よ!」
ノアとブスオリは、後ろから聞こえる僅かな声を心配した。
「2人とも、本当に大丈夫なんですか?お互い殺し合うんじゃ…」
「だ…大丈夫ですよ!その時は、私がブスオリ様を守るので!」
ヒューリスたちに怯えながら、ノアとブスオリは森を出た。
「2人は…」
「大丈夫です。相変わらず元気 (に言い争ってるん)ですから。」
しばらくして、ヒューリスたちも森を出た。
「もう…本当にノアも帰るの?あたしたちだけで…」
「私も行きます!さっきも言ったじゃないですか…」
「でも…」
ノアはヒューリスから説得を受けているが、考えは変わらない。その時…
「ねぇ…ブス…なんだっけ?」
「ブスオリです…ブスでいいですよ。」
(学校の人からは、そう呼ばれてるし…)
ブスオリはオーラから話しかけられていた。
「あら、そう?じゃあ…ブスオリ。あなたは、父親に何か言われても機嫌よくしてあげなさい。いいわね?」
「あ…はい。でも、なぜ?」
「機嫌良ければ、未遂という口実が…」 ボソッ
オーラは、何か企んでいるようだった。
ノアと話し終わったヒューリスが、オーラに向かって歩いていく。
ノアとブスオリから少し離れたところで、ヒソヒソと話し出す。
「はぁ…無理よ。ノアは行くって言って聞かないわ!せっかく守ろうと思ってるのに…」
「言ったじゃない。ノアは行くの。だから、ちょっと怖い目にあってもらって、オマケに口実作れればいいのよ♪」
「でも…ノアに何かあったら、あたしが殺されるわ!」
「大丈夫よ〜!未遂だもの♪」
2人が森で言い争っていたのは、「ツルカネオからノアを守る方法」……ではなく、「ツルカネオを成敗する作戦」だった。
「ねぇ…ノアは絶対に行くから、何かあった時のことを考えたら?」
「はぁ?そんなのダメよ!馬鹿なの?馬鹿なんでしょ?あたしは、何かあった後じゃダメなの!殺されるの!」
「じゃあ、何かある可能性があるところ…未遂で、助ければいいわね。そうすれば、実質何も起きてないし、貴族も成敗できるでしょ?」
「確かに…」
このようにして2人は、「ツルカネオを成敗する作戦」を完成させた。
「よし…段取りはいいわね?ブスオリには機嫌をよくするように言ったから、ツルカネオは上機嫌で未遂を起こす!」
「……ええ。上手くいけば、あたしたちは生きながらえて報酬も貰えるかも…」
「ダメなら、死んじゃうわねぇ〜?」
その言葉で、ヒューリスはオーラを睨む。
「ふふ…大丈夫よ〜!上手くいくに決まってるわ!」
「上手くいかなかったら呪う…!」
話していたら、ノアが2人を呼ぶ。
「お2人とも、馬車乗らないんですか?」
「乗るわ。」
2人は馬車に乗り込んだ。
こうして、ヒューリスとオーラが考えた「海老を囮に鯛を釣る作戦」が始まった…!
(今頃、ノアは貴族のところか…)
ギルマスであるレイは、仕事をしながら頭を抱える。
「ツルカネオって良い評判聞かないし、大丈夫かな?幼女好きって話も聞くし…」
そう思ったら、レイを吐き気が襲った。
隣で仕事(監視)をするソフィアが言う。
「大丈夫ですよ。ノアさんは強いですから。」
「そうだが…ノアはまだ子供。貴族の言葉には逆らえないだろう?」
「はい。ですが、ヒューリス様も同行してくださっています。」
レイはその言葉を聞いて、「げぇ」という表情をした。
「あいつかぁ…大丈夫だよね?1番会って欲しくないのに…」
「大丈夫とは?」
「あいつ、取らないよね?僕、1度だけ取られたんだ。」
「何をです?」
「狙ってたやつ…」
ソフィアは何も言えない。
(なんて言えばいいんでしょうか…)
「まぁ…誰にも渡さないけどねぇ♪」 ボソッ
「何か言いましたか?」
「いやぁ?別に何も。」
ソフィアは、ハッとする。
「そ、そんなことより、仕事してください!」
「そんなことってなんだ!僕はノアの心配をしてるのに!」
「はぁ…わかりましたから。仕事を終わらせてください…」
ソフィアは日々、ノアのことを想うレイの相手をしながら、ギルド長の面倒を見ながら、ギルド管理をしながら、過ごしている。
とても優秀な秘書なのである。




