32話 直しました。うるさくなりました。
「ティオの報酬も貰ってない!オーラさんの話も聞けてない!オーラさんだけでも、生かさなければぁぁぁぁ!」
そう叫んで書き始める。
「崩壊ということは、分解されたのと同じ…と考えると、分解した物は治せる。だから、単純に繋ぎ合わせればいい…」
ノアは呟きながら、ノートを殴り書きで埋めていく。
「てことは……魔力を使ってくっつければいい。体は細胞の塊。つまり細胞も一種の生命であり、魔力で動く。魔力で細胞同士をくっつけて、体を元に戻せばいいかな?」
ノアは魔力を操作して崩れてしまった、"体だった"ものをくっつけ始める。
「ここをこうして……よしっ!」
大体の形ができ、魔力操作を緩めだす。
ポロ…
「ん…?」
────ボロボロ…
「……できない。やっぱり、神聖魔術でしか治せない?いやいや、どうにかなるでしょ…魔法は全てに通じるはずだもん…!」
ノアは試行錯誤しながら何度も試してみたが、2人の体は、未だに人の形をしていない。
「うーん…無理か。神聖魔術を使うしかない…神様は、なんて言ってたか…」
ノアは神様からの「神聖魔術の使い方レクチャー」を思い出す。
『イメージだよ。とにかくイメージ。治れ!って思えば治るし、心綺麗に!って思えば浄化される。とりあえず、妄想でもして想像力を鍛えるんだよ!』
神様は、フワフワしたことを言っていたため、ノアはとても不安になった。
「イメージ……」
ノアは教会で見てきた治癒系の神聖魔術を思い浮かべる。
だが…
(心の傷を癒すのばっかり…物理的なのがない…)
「ねぇ…まだなの?」
「!」
声がしたと思ったら、少し回復したオーラが催促してきた。
「今、妄想しますから!」
「妄想?……あなた、神聖魔術を使えないの?セラシアから来たのに?」
「言いましたっけ?」
「勝手に見たのよ。気にしないで。神聖魔術なら、1度使ってるんじゃない?」
ノアは、そんなことをした記憶はない。頭を傾げて考えていると、オーラが呆れたように言う。
「爆発があったんでしょ!」
ノアは爆発で思い出す。
「あぁ!確かに…すっかり忘れてました…」
「いいから!早く治してちょうだい!」
ノアは杖を取り出し、神聖魔術の記号を描き始める。
(前よりスラスラ描ける…神聖魔術を使えるようになったからかな?)
────ピカッ
記号が光り、崩壊していた身体が綺麗に治っていく。
「2人とも、大丈夫ですか?」
「ええ。足だけだったし、私は別に大丈夫よ。それより、あの子の方が…」
「ひぃ…おっかないですね。」
オーラが指さす方向にいるティオは、まだ完全に治ってはいないものの、既に治った目はノアを睨みつけている。
「そりゃそうよ…」
しばらくすると、ティオの体は完全に治った。
「大丈夫ですか…?」
「大丈夫ですかぁ?じゃない!僕のこと、友達だって言ってたよね?今までの友情はどこ行ったの?やりたいなぁでやるやついねぇんだよ!おかしいだろう!死んでたらどうするんだ!」
「……ティオは、頑丈ですからね。しかも、大妖精様の頼みですし…」
ティオは、ちらりとオーラを見る。
「私だけなの?やれとは言ったけど、実行するかはノアの自由よ?私だけが全て悪いわけではないわ。」
「でも…」
ティオはオーラの肩に手を置き、目一杯力を入れる。
「いだだだ!」
「ノアを止めることくらい、簡単だよなぁ?大妖精さんよぉ?」
「そもそも!あなたが私に、剣を向けなければよかったのよ!」
「はぁ?逆ギレは良くないと思うなぁ?」
オーラは目で、ノアに助けを求める。
「……ティオ、そのくらいにしましょう…私がやったんですから。怒るなら私に対してですよ?」
ティオはオーラから離れる。
「はぁ…酷い目にあったわ。ノアは、その犬の手網を握ってなさい。」
「犬じゃないんだが?」
「ティオ!」
ティオは1歩前に出ていたが、ノアのそばに戻る。
「で?確か…ティオに会わせたいって考えていたのよね?」
「そうでしたね。彼に、依頼達成の報酬をあげてほしくてですね…」
「ああ。いいわよ。ほら。なんでも言ってごらんなさい?できる範囲でやってあげれたりするかもだし。」
(私の時より雑だ…)
ノアはティオを伺う。
「「なんでも」ねぇ?」
「できる範囲よ!」
ティオは、ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべる。
「ダメ!ダメだし、絶対に嫌よ!」
「何も言ってないが?」
「自分と同じ目に遭わせるなんて、絶対にダメ!」
「チッ…」
(ティオは、心を読まれている点はどうでもいいんだ…)
ノアはティオを見る。すると、ティオと目が合った。
「どうしました?早く決めてくださいね?」
「…うん。」
オーラはティオを見て、ニヤニヤする。
「残念だけれど、私は魅了させるとか出来ないわよ〜?」
「なっ?!何を言い出す!もういい!すごい剣をくれ!」
「……テキトーね。いいの?すごいって言っても、色々あるわよ?」
「そうだな…大魔王を討ち取れるほどの剣だ。」
「いいわよ。最も大魔王を打ち取れる可能性のある剣をあげる。」
そう言うと、オーラは何もない空間から剣を取り出した。
「はい。持っていきなさい。簡単には壊れないけど、手入れはしなさいよ?」
「もちろんだ!」
剣を持ってはしゃぐティオは、オーラに背を向ける。
ノアは、同じ歳のティオが可愛く思えた。
「ノア…」
すると、オーラがノアに声をかけて手招きする。
「どうしましたか?」
「実は、この前は「もう情報は無い」って言っちゃったけど、もう1つの特徴を思い出したのよ。」
「本当ですか?!」
「ええ。報酬がしっかり支払われないのは、良くないことだもの。」
オーラはヒソヒソと会話を進める。
「あの…もっと大きな声で話しちゃダメですか?聞き取りずらくて…」
「ダメよ。この情報は、きっとほとんどの国が知らない。」
そう言って、オーラはティオや周囲を確認する。
「誰も聞いてないわね…」
「もったいぶらず!」
「はいはい…大魔王はね、未来が視えるのよ。」
「……はい?」
ノアは目をぱちくりさせる。
(未来が視える?)
「聞き間違いですかね?」
「いいえ。間違ってないわ。」
「あ!心を読んだんですね?」
「そうよ。でもね、ノア…この情報は確かなのよ。」
「どこ情報ですか?」
オーラは少し俯いて話し出す。
「私の祖先よ。かつて、大魔王と出会った1匹の大妖精は、魔王へと進化した。そして、この国を滅亡寸前まで追い込んだわ。」
「なるほど…では、確実ですね。」
「大魔王と出会った時、「未来で君は殺されるけど、いい?」と祖先に尋ねたそうよ。」
ノアはオーラの頭を撫でた。
「何?」
オーラは、きょとんとしている。
「私のお姉ちゃんのような人は、私が元気じゃない時に頭を撫でてくれました。元気になるんです。」
「そう…//」
オーラは恥ずかしそうに俯いた。
「では、私はこれで失礼しますね。」
「え…もう行っちゃうのかしら?」
「はい。とりあえず、宿に戻ります。ここは世界一人が多い国ですし、冒険者がたくさんいます。私のやるべき事をやるんです!」
「無詠唱魔術を広めるってやつね……そう。なら、私も失礼するわ。」
オーラが席から立つと、ティオが呼び止めた。
「大妖精…ありがとう。」
「あら、礼をいえたのね?」
「そん…確かに、言ってなかったな。すまない。」
「ふんっ…別にあなたに言われても、嬉しくないわよ。で?聞きたいことがあるんでしょう?」
ティオは席に座って、あらたまる。
ティオに合わせて、オーラも席に着く。
「なんとなく、聞きたいことはわかるけど。一応聞いてあげるわ。何が知りたいの?」
「ノアの未来だ。」
その時、ノアは2人から少し離れて立っていた。
(2人とも…そんな風に話せるようになるなんて!)
ノアは感動していた。




