31話 大妖精に不敬と崩壊を
ピカ────
オーラから貰ったお守りが光りだし、ノアとティオは思わず目を瞑った。
「結構早くお呼ばれするとは、思わなかったわ…」
ノアは聞き覚えのある声がして、目を開けた。
「お…オーラさん?!一体なぜ?」
「なぜって……あなたが心の中で私を呼んだんでしょ?」
「呼んでま…」
ノアは「ティオとオーラを会わせよう」と思ったことを思い出す。
「心であなたを呼びました…」
「素直でよろしい。で?私を呼んだのは、そこの剣士のためよね?」
「ティオに、オーラさんからの報酬の話をしようと…」
ここまで言って、ノアはティオの方を見た。
「何、構えてるんですか?」
ティオはオーラに対して剣を向けていた。
「こいつはなんだ?やけに強いぞ。」
「大妖精ですよ!王様でもあるんですから、行儀よくしてください!」
ノアはティオを怒鳴る。
「王様ぁ?兵器の間違いだろ。」
ティオに引く気はないらしい。
ノアの目から見ても、オーラの魔力はとても多い。だが、ノアはオーラよりも多く、濃い魔力を見ている。
「そんなことありません!」
オーラは驚く。兵器という表現に、自身も納得していたからだ。
「へ…兵器並に魔力が多いのは、本当のことよ?」
「オーラさんは、弱気にならないでください!ティオは魔力なんて、1ミリも見えませんから!」
(あ…そうなの……じゃあ何?野生の勘ってやつなの?)
「私、結構見えないように縮めたつもりなのよ?」
「安心してください。威厳が保てるほどの魔力はまとってますから!」
「え…」
オーラは、自身の魔力隠蔽能力に自信があった。それをあっさりと見破られ、魔力は漏れていると言われた。
オーラは悔しく思った。
「纏ってないもの…」
「大丈夫ですよ!綺麗なまとい方です。ティオでも雰囲気でわかるほどですから!」
「ぐっ…!」
オーラの自信は砕け散った。
「おい…そんなこと言ってないで、質問に答えろ。」
「質問?」
ノアはティオの手を見る。剣を持つ手は、小刻みに震えていた。
(ははーん…)
「手が震えてますねぇ?やっぱり怖いんですか?」
「こ、怖くなんかない!とにかく質問に答えろ!」
「あー話の論点ずらしましたね?都合が悪いんですね。」
「う、うるさい!その大妖精とやら、殺してやる!」
ティオはオーラに斬りかかる。
「勝てると思ってるのかしら?不思議ね。」
オーラがティオに手を向けると、ティオの動きが止まった。
「おお…!どういう魔法ですか?…もしかして"超能力"?」
「うふふ♪詳しいのね…」
「じゃあ、やっぱり…!」
「そう……ただの魔力操作よ♪」
ノアは落胆した。超能力を知れると思ったのに、盛り上げるだけ盛り上げて、ただの魔力操作…がっかりするのも無理はない。
「……魔力操作で、どうして動けなくなるんですか…」
「魔力は、どんなものにもあるのよ。体内の魔力は常に循環してる。」
オーラは説明しながら席につく。
「その循環があるから、生物は動けている…と言っても過言でもない。常に循環をしている魔力が、急に止まったら?」
「動きが止まりますね!なるほど。他者への魔力操作の技術が必要ですね。」
「ええ…私もたくさん練習して、使えるようになったのよ。正しく操作しないと身体が崩壊するから…」
オーラはティオを見て、ニヤリと悪い顔をする。
「な…なんだ?いい加減、動けるようにしてもらいたいのだが?」
「ねぇ、ノア。この子は体は丈夫かしら?」
「風邪なんてひいたことがないくらい丈夫ですよ。それがどうしたんですか?」
「この子を、あなたの魔力操作の練習台にするわよ♪」
「……あぁ、それはいい考えですねぇ♪」
ノアはオーラの意図を理解し、一緒にニヤニヤとティオを見る。
「お…おい!その目、キモイぞ!お前らおかしい!僕にそんな目向けてどうすんだ!」
「ちょうどいいモルモット…じゃなくて、ボランティアですね。オーラ♪」
「ええ。ちょうどいいモルモット♪」
ティオの声に耳を傾けず、ノアとオーラはじりじりとティオに迫る。
「おい…!やめろぉぉぉぉぉ!」
ティオの魔力に、ノアの魔力が繋がっていく…
どのくらい経ったか。カフェでそのまま、ノアの魔力操作練習が始まり、店内にはティオの叫び声が響き続けていた。
「あぁぁぁぁぁ!」
「いいわよ!魔力をちゃんと操れてるわ!あとは自由に動かしてみましょうか♪」
ざっと1時間。ティオは体の中の、意味不明な痛みや倦怠感、吐き気で精神的に疲れてきていた。
ノってきたノアは、魔力操作をマスターして気分が良かった。
「はい!………それ、ティオ死にませんか?」
「……体は丈夫なのでしょう?…なら、大丈夫よ。私も多少なら治せるわ…きっとね。」
ノアはティオを見る。
(どうなるか知りたいけど……流石に、あのティオでも体がバラバラになったりしたら、死んじゃう…)
「ここら辺で、止めましょう…」
「えぇ…でも!……なら!ダメそうだったら、セラシアにでも駆け込んで治してもらえばいいのよ!」
オーラは内心、自分に剣を向けたティオに怒っていた。その怒りをぶつけたいと思って、ノアを通して罰を与えていたのだ。
「治せばいい…ああ!確かにそうですね!」
「は?おいっ────」
ノアは「これが最後」と言わんばかりに、張り切ってティオの魔力を暴れさせる。
「いぁあ"ぁぁぁ!」
ティオは苦しそうに叫ぶ。
「すごいです…!血管を通っていた魔力が筋肉に広がるだけで、筋肉が分解し始めましたよ!」
「あははは!足元から徐々に崩れていくから、面白いのよ!じわじわと広がっていくの!あはは!」
オーラは笑いながらそう言った。その途端…
────ボロボロ…
ティオの身体が一気に崩壊した。
「え…ノア!あなた、一気に…これじゃ、あの子戻らないかもしれないわ!私が治せる範囲を超えてる!」
ノアはオーラの魔力と、自分の魔力を繋げようとする。
「嫌よ!何?何なのよ。私、何か気に障ることをしたかしら?」
「オーラさん……実験というのは、何が面白いかわかりますか?」
「実験?申し訳ないけど、実験には興味無いの。あ"ぁ"!」
オーラは苦しみ出す。
「いいですか…?たとえ結果がわかりきっていても、目で見て知ることが楽しいんですよ…」
「そう…ぅ…で?私が、何したってのよ!」
ノアはオーラの魔力を少し、筋肉に渡らせる。
「あ"ぁ"ぁ!」
「あなたから、「崩れる」と聞いてたんです。具体的にどう崩れるのか、どのような条件なのか…その他もろもろ、私は知りたいことがあったんです。自分の目で!」
ノアは、自身の目で見る前に崩れる様子を説明したことが、何よりも許せなかった。
「な…何よ!別にいいじゃない!」
「良くないですよ…ティオが壊れちゃったんです。」
「あなたがやったことよ!そんなに見たいなら、他の人使えばいいじゃない?」
オーラは、ノアが冗談を言っているのだと思った。
「はい。なので、あなたを使います。」
「え…あぁ…」
(本気?本気なの…?)
オーラはノアの目を見る。心を読んでノアの意図を知ろうとする。
(魔力を一定量ずつ暴走させていけば、痛みもなくなるかも…?もしかしたら、筋肉が慣れてきて崩壊もしなくなるかもなぁ。壊れたらどうしよう……ま、後で考えよ。足全体が〜〜)
ノアの心が、オーラに恐怖を植え付けた。
(研究者目線で何言ってんのよ…?慣れるわけないでしょ!魔力が暴走した時点で崩壊するんだから!私が死ぬのよ…?)
「ノア…ほ…崩壊したら、慣れも何もないわよ?」
オーラは、まだ考え直してもらえるかもと思い、問いかける。
「確かに…でも、まぁ…慣れなくても、「魔力量と筋肉の崩壊の関係性」がわかれば、なんでもいいですよ♪」
「ひっ…!」
オーラは恐怖でしりもちをついた。
怖がるオーラの顔を、ノアは覗き込む。ノアの目は死んでいた。語尾に対して、顔が怖すぎる…
「なんでもよくないわ!私、死んじゃうのよ?」
「大丈夫ですよ…きっと治してあげますから。」
ノアはオーラの魔力を暴走させる。たったの少量だが、オーラの足は熱くなる。
「あぁぁ!」
「まずはこの量で、20分耐えましょうね!」
10分ほど経って、オーラの足が徐々にボロボロと崩れていく。
「なるほど…妖精という種族でも、崩れるのは同じ…人間で試してみて比較する必要もありますね…」
「あ…あぁ……」
オーラは気絶した。
ノアはしばらく観察し、膝あたりまで崩れたところで止めた。
「よし!2時間くらいで膝まで崩れる…と。」
ノアは、メモを取り終えると立ち上がり、辺りを見回す。
崩れたティオ……足がないオーラ…
(私のせい…だよねぇ…)
ノアは気絶しているオーラを見て、「やばい!」と感じた。
「妖精を確実に治せる保証がないし、これ以上やっちゃうのはダメだよね…」
ノアは神聖魔術を使って、ティオとオーラを治そうとする。……が、どうすれば発動するのか、わからない。
「…歌う?治癒系は使ったことあったっけ?」
(歌ったりすればいいのかな?)
ノアは、恥ずかしいと思いながら小声で歌い出す。
し────ん……
「恥ずかしい…//」
ノアは顔を手で覆う。
(私、1人で何やってんの?)
「やっぱり、大人数じゃないといけないのかな…」
ノアが恥ずかしがっている中、ティオとオーラは意識だけがあった。魔力が暴走したため、動くことはできない。
五感が働くオーラは、めちゃくちゃ怒っていた。
(なぁにが「恥ずかしい//」よ!恥ずかしがってないで、早く治しなさいよ!)
ティオは混乱していた。なにせ、ティオの体はボロボロ…見るに堪えないほどに。
目もない、耳もない中で様々な感情が入り交じり、パンク寸前である。
(ノア…僕、死ぬのかな?うぅ気持ち悪い…吐きそ。口ないけど…)
すると、ノアはノートとペンを取り出した。
(治癒系の魔術の発動が、わからない!やばい…かなりやばい!大妖精だよ?)
「ティオの報酬も貰ってない!オーラさんの話も聞けてない!オーラさんだけでも、生かさなければぁぁぁぁ!」




