27話 魔法のためなら、何にでも!
ノアは山から協会に戻って、出発の準備をする。
「洗濯した服を受け取って、お祈りをして、皆さんに挨拶をして……」
ノアはふと考える。
(ユアリーベって、どうやって行くんだろう?)
「……ま、いっか。とりあえず準備しないと!」
ノアは、干してある自分の服を取りに行く。
「ノアさん!どうしたんですか?」
「メフィさん。私、服を取りに来たんです。」
「なるほど、お洋服を……でも、どうしてですか?」
「妖精に会いに行こうかと思ってるんです。」
「妖…精……?」
メフィは目をパチクリさせる。
「ここ(セラシア)にはいませんね。」
「はい。なので、ユアリーベに行くんです。今日か明日中には、出発しようと思ってます。」
「ここ(セラシア)を出るんですか…?」
「はい。精霊と妖精って、似ているらしいんです!なので、比較するためにも自分の目で見に行くんです♪」
ノアはルンルンで答える。メフィは少し暗い顔をする。
「どうしました…?」
「ノアさんには、もう少しいてほしかったんですが…」
「何かあったんですか?」
「いえ!何かあるわけではないんですが……ちょっと、部屋で話しましょうか。」
「…はい。」
メフィはノアと図書館に行く。相変わらず、図書館には人がいない。
「実は、私たち7人の司教で話し合った結果、新しい大司教はフィリアさんとノアさんの2人にしようと考えているんです。」
「……え、今なんて言いましたか?」
「大司教を、フィリアさんとノアさんにしようと考えているんです。」
「フィリアさんはわかりますが、なぜ私まで?」
「フィリアさんは、勇者としてリーダーシップを発揮していました。魔王を討伐したという実績からも、多くの支持が得られるでしょう。」
「はい。」
それだけで、フィリアを選ぶ十分な理由だと、ノアは思う。
「ノアさんは、神聖魔術を自由に使えます。魔王討伐にも尽力してくれましたし、知らない人を進んで助ける優しさもあります。」
「は、はい…?」
(特別なことでもないと思うけど…)
ノアは首を傾げる。
「よくわかりませんよね。ですが、今回の一件で大司教は2人以上必要だと結論づけたんです。」
「だからって、私じゃなくてもいいんじゃないですか?」
「いいえ。力を持つのに慢心をせず、どんな人にも優しいノアさんだからこそ、大司教となってほしいのです。」
ノアは悩む。
(私1人でできない神聖魔術もある。その研究も、いつかしたいと思っている以上、お互いにwin&winてことで協力してもいいのかも……でも、縛られたら面倒なんだよなぁ。大魔王を倒したいし…)
ノアは、ロアンとクララの顔を思い出す。
メフィは立ち上がり、本棚に目を向ける。
「やはり、嫌ですよね…魔王のこともありましたし、象徴として見られるのは嫌ですよね。実は、フィリアさんは少し抜けている…というか、お馬鹿というか、周りを見ずに進んでしまうことがあるんです。ノアさんがいれば、フィリアさんも迷った時や間違いそうな時に、立ち止まらせられるかもと思ったんです。そして、多くの困難や…」
メフィは話し続けるが、ノアは聞かずに悩み続けている。
(もし、"この国を出たら神聖魔術は使えない"とかだったら、どうしよう。せめて他の国でも使えるように、関わりを持っておく方がいいかも……)
ノアは大司教になることを決める。
「私、大司教になります。条件付きですが…」
「もちろん、無理にとは言いません!ノアさんは……え、今、なんて言いました?」
「条件付きですが、大司教になりますよ。」
メフィは机に乗り出して、ノアの手を握る。
「本当ですか!ありがとうございます!!」
「条件付きですよ…」
「はい!何なりと!」
ノアは、「コホン」と咳払いする。
「私の行動の自由を約束してください。建前では、"無詠唱魔法を広める"という旅ですが、本当の目的は、魔王への復讐なんです。なので、自由に行動させてほしいんです。」
「復讐……そうだったんですね。無理を言ってしまいました…すみません…」
「いえいえ!言ってませんでしたし、私は大司教になりますよ?」
メフィは、一瞬目を輝かせるが、すぐに首を横に振った。
「ダメです。ノアさんの成し遂げたいことは、世界が成し遂げたいこと……ノアさんなら、出来るかもしれないんです。私たちは、それを応援します…!」
「メフィさん…」
(応援はありがたい……けど、神聖魔術が使えなくなったら、元も子もない!)
「メフィさん……私は、 (研究室の件で)お世話になりました。なので、お役に立ちたい、恩返しがしたいと思っています。」
「(私たちに)お世話になりましたって、そんなにすごいことしてませんよ。逆に、魔王討伐の協力など、我々の方がお世話になっています。釣り合いがとれませんよ…」
「……釣り合いがとれればいいですか?なら…」
ノアは立ち上がり、メフィを真っ直ぐ見つめる。
ノアの髪は差し込む太陽光で透けて、うっすらと虹を宿した透明感を持った。
(ノアさんの髪……綺麗…)
「メフィさん、私を大司教にしてください。」
ノアは優しく微笑んで言った。
「綺麗……」 ボソッ
「……メフィさん?」
「え…あ、すみません。」
「顔赤いですけど、大丈夫ですか?」
メフィは、見惚れて呟いた言葉を恥ずかしく思った。
「大丈夫です!えっと…」
「私を大司教にしてください。」
「っ!」
(ノアさんは、本当に優しい人ですね。)
メフィは満面の笑みを浮かべる。
「はい。お願いします!」
「…良かったです♪あの、私ってどういう立ち位置なんですか?大司教2人ですし…」
「任命の儀があります。なので、それまでは滞在していただきます。」
「わかりました。任命の儀って、いつ頃ですか?」
「えーっと…まだ、決まってなくてですね…」
メフィは申し訳なさそうにする。
「わかりました。では、決まったら教えてください。」
「はい。その……まだフィリアさんにもお話していなくて…」
「えっ…そうだったんですか?!」
「はい…ノアさんより前にお伝えしようと、今日話す予定だったんです…」
「そうだったんですか。……もし、フィリアさんが断ったら……?」
「ノアさんが、1人で大司教になることになります………」
ノアは、膝から崩れ落ちた。
「ノアさん!」
「だ、大丈夫です…ちょっと驚いただけです。」
ノア1人が大司教ということは、セラシアに拘束される可能性が高まるということ。ノアにとっては、避けるべきことだった。
「私も行きます。フィリアさんには、大司教になる義務がありますよねー?」
「え…ひっ!」
目がキマってるノアに、メフィは怖がる。
「絶対に大司教になってもらわないと…」
(「嫌だ」と言われたら、「父の尻拭いをしろ」とでも言おう。)
ノアはメフィの手を引っ張る。
「メフィさん、行きますよ……!」
「はぇ…?」
────コンコンコンコンコンコンコン!
「わかった!出る!出るから!」
ノアのうるさいノックで、フィリアが部屋から出てくる。
「ノアとメフィ?どうした?」
「お話があります。お部屋、失礼します。」
ノアは淡白に答えると、部屋にズカズカと入っていく。
「え…話?」
「はい。率直に言います。大司教になってください。」
「……は?」
「そうですよね。私と同じ反応です。」
「いやいや……どういう…?」
「私と2人で大司教となることが、7名の司教様たちの考えらしいんです。私は、行動の自由を条件に了承しました。」
フィリアは困惑している。
「ノア……は、なぜ?」
「端的に言うと、力と優しさ。ということらしいです。」
「……なるほど。2人である必要は?」
「えっと……」
ノアは、ちらりとメフィを見る。メフィは気づき、説明しようとする。
「あっ!えっと……」
(フィリアさんにお馬鹿なんて言えないし…)
「メフィさん…」
「えーっと、今回の大司教の一件があったので、2人いれば安全かな…と。」
「なるほど。他には?」
「え…えっと……あ!リーダーシップと優しさです!」
「ふむ…」
フィリアは、しっくりきているようだった。
「実は、冒険者をしながら協会を手伝おうと思っていたんだ。大司教になるのは、荷が重いし…」
ノアは「やれ!」と言わんばかりに、フィリアを睨む。
(やれ!やれやれやれやれやれやれやれやれやれ……)
(え…ノア、怖いんだけど……)
「ヤリマス…ヤラセテイタダキマス」
フィリアは、ノアの目力に負けた。
「本当ですか!ありがとうございます!」
「はい…」
「良かったですね!メフィさん♪」
「はい♪早速、任命の儀の日程を、司教たちで話し合ってきます!2人は、いつがいいとかありますか?」
「私は大丈夫ですよ。」
「大丈夫だ…」
フィリアは、元気なく返事をする。
「わかりました!ノアさんの予定も考えて、なるべく早めに行えるようにしますからね!」
「はい!ありがとうございます♪」
メフィは、フィリアの部屋から出ていく。
フィリアはノアに問う。
「なんで、あんなに睨んでたの?」
「いやその…断られたら、私が1人で大司教をすることになってたんです。それは避けたいじゃないですか。」
「……なんか、怖かったんだけど。」
「正直、無理にでもやってもらおうと思ってました……」
「無理にって…魔法で無理にとかか!」
ノアは、フィリアと目を合わせないようにする。
「ひぃ!ケダモノ!!」
「違います!色々考えた時に、私のすべきことをするためには、仕方がないんです!」
「理由は?」
「……私は建前があって旅をしてますが、本当は義両親(家族)の仇である魔王への復讐なので、それができなくなるのは……」
「魔王…か。なら、そう言えよ!」
「……すみません。」
ノアは本気で申し訳なさそうにする。
「まぁいい。魔王はどこのだ?やっぱ、ルミスティアのとこか?」
「わかりません。なので、1回魔王全員を倒そうと……」
「馬鹿か?」
「馬鹿じゃないです!魔王の手下に家族が殺されたんです。でも、手下はもう倒しました。私は、手下を送り込んできた魔王への復讐がしたい…なぜ、私の義両親(家族)だったのか、理由が知りたい!」
「っ!」
ノアの真剣さは、フィリアに伝わった。
「真面目に考えてたのに、すまなかった。」
「別にいいです。どうせ、魔法使いじゃ魔王なんて倒せませんよ…」
ノアはムスッと拗ねながら言う。
「いや、魔王全員じゃなくても、大魔王を倒せば一発だと思っただけでだな……」
「大魔王を倒す……」
ノアは目をパチクリさせる。
「確かに、盲点でした……!私、大魔王を倒します!あ…でも、それだと理由が聞けない…」
「……こういう時は、オタク脳を捨てろ。」
「オタクって…」 ──ポン…
ノアは怒ろうとするが、フィリアはノアの頭を撫でる。
「なん…」
「復讐だろ?動く理由なんて、"義両親(家族)が殺された"っていう事実だけで十分だ…」
フィリアは、同じくアロー(家族)を奪われた身として、ノアの気持ちを汲み取った。
ノアはフィリアを、ちらりと見る。
(とても真剣…)
「………はい。」
〜1週間後〜
「大司教となる儀式"任命の儀"を行う!」
第1司教がアナウンスすると、信者たちが立ち上がる。
同時にドアが開き、ノアとフィリアが立っている。
「大司教フィリア・セレシア!」
「はいっ」
「大司教ノア・フェレア!」
「はい…」
2人は信者たちが作った道を、ゆっくりと歩く。
像の前まできて、膝をつく。
「大司教として神を愛し、信者を愛することを誓うか?」
第1司教は2人に問う。
「はい。我が身は神のため…信者のために使うことを誓う!」
フィリアが先に答えた。だが、ノアはなんと言えばいいのかわからない。打ち合わせなどはしていない。
『フィリアさんの真似をすればいいですよ♪』
メフィの指示はこれだけだった。
「…はい。…我が力は信者のため……世界のために使うと誓います。」
信者はザワザワする。
(あ、やばい……変なこと言っちゃったかも。)
「よろしい…フィリア・セラシア、ノア・フェレアを、大司教に任命する!」
フィリアは立ち上がる。ノアも立ち上がる。
フィリアは信者の方を向く。ノアも同じように動く。
────パチパチパチッ
信者たちは祝福の拍手を送る。
「ノア、戻るよ。」 ボソッ
フィリアとノアは部屋を出た。
「お疲れ様です!これで任命の儀は終わりですよ。」
「とても緊張しました…というか、私は何か変なことを言いましたか?」
「いえ、ただ……」
メフィは目をそらす。
「今までの大司教は、この国のことしか言わなかったんですよ。」
「……どういう意味ですか?」
「あははは!」
フィリアが笑い出す。
「あはは!ノアって、本当にすごいね!世界のためとか、正直あんまり言わないってこと。」
「ダメでしたか?」
「いやいや。スケールのでかさに、みんなは驚いてただけ。別に変じゃないよ。」
「笑わなくたって…」
「ごめんごめん……あはは!」
フィリアは、ツボにはまっている。
ノアは睨むが、あまり気にしていない。
「メフィさん。そういえば、レイさんやヴァンさんがいなかったんですが、予定があったんですか?」
「えっと…レイさんは定例会議。ヴァンさんは国に帰って、やることがあるそうです。レイさんからは、これを受け取ってます。」
そう言って、ノアに手紙を渡す。
「手紙…」
ノアは覚悟して手紙を開く。
―ノアへ
大司教になったんだよね。おめでとう!
任命の儀は、仕事で見れなくて残念だよ。
できれば行きたかったんだけど、ちょっとしつこい人達がいてさ。ノアのため、僕のためにお話し合いをしないといけないんだ……
ユアリーベは遠いから、護衛をつけて行ってね。
妖精は狂って……じゃなくて、とてもユニークだから、あまり刺激しないようにね。
この手紙と一緒に、紹介状も同封しているから、ユアリーベでは快適に過ごせると思うよ!
依頼も、月に1回の頻度で受けてね。やらないと、他の冒険者がうるさいから……
じゃ、頑張って!
PS.森ではあまり騒がないようにね
君の上司レイより―
「どうでしたか?」
メフィはノアを伺う。
「珍しく、普通でしたね…」
「珍しく普通…?どういう意味ですか?」
「いえいえ。こちらの話です。それで……ユアリーベって、どうやって行くんですか?」
「飛ぶんですよ。」
「飛ぶ…どういう?」
「飛行船がありますから、それで行きます。知っての通り、ユアリーベは大きな島ですから。」
「飛行船って…なんですか?」
メフィは驚いた表情をした。
「飛行船を知らない人、いるんですね…」 (悪意はない
「山の中で育ったもので…」
「大丈夫ですよ!飛行船っていうのは、大勢の人を乗せて遠くまで飛んでいくことができる乗り物です。とっても楽しいらしいですよ♪」
「へ、へぇ…」
ノアは「んなことできるわけない!」と言いそうになったが、我慢する。
「魔法使いでも、魔法で飛ぶのは無理なのに、どういう原理で飛んでるんでしょうか?」
「それは、わかりませんが……ユアリーベに行くついでにのるんです。見てきたらどうですか?」
「そうしようと思います。ここ(セラシア)からは、飛行船が出発してるんですか?」
「もちろん!今日の午後3時に出発ですよ♪月に1回ほどしか飛ばないんです!」
ノアは時計を見る。時刻は11時。
「時間がありますね…」
(もしかして…私のために?)
メフィを見ると、褒めてほしそうにノアを見ていた。
「もしかして、任命の儀と合わせてくれたんですか…?」
メフィは、「待ってました!」と言わんばかりに目を輝かせた。
「はい!私たち、頑張ったんです♪ノアさんに喜んでほしくて!なので……結界の強化を、して欲しいなぁ……と、思ってまして。」
メフィは目をそらす。
(それが本命か…)
「いいですよ。言ってくれればやるのに…」
「ほ、本当ですか……?」
「もちろん!セラシアは、私に多く (の魔法陣)を与えてくれましたから!」
「ノアさん……!」
メフィは感動している。
フィリアはメフィを見て言う。
「じゃ、お昼に近いし、司教たちも一緒に食べよう!」
「はい!」
「そうですね!美味しいものを用意します!」
メフィたちは、ノアが出発するということで、ご馳走を用意してくれていた。
初めはノアも緊張していたが、話しかけてくれるメフィたちのおかげで、みんなと打ち解けることができた。
ノアが美味しそうに食べる姿を見て、「こっちも食べて!」「これ、美味しいよ♪」と、餌付けするようにノアにあげていった。
「うっ…もう、食べられません……」
苦しそうなノアに、第5司教が聞く。
「美味しかった?」
「はい!また食べたいです!」
メフィたちは、ノアが「また」と言ってくれたのが嬉しかった。
「また来て、みんなで食べましょう!」
「はい!」
ノアの出発の時、メフィたちは見送るために来てくれた。
「ノア。気をつけて!」
「はい!」
「ノアさん…神は常に、我々を導いてくださいますよ。」
「……はい。」
(連れて行ってくれるのは、飛行船だけど…)
ノアは感謝の気持ちを込めて、深々と頭を下げる。
────ヒュワン…
後ろから風を感じて、ノアは振り向く。
すると、飛行船であろう大きな船のような乗り物が、本当に宙に浮いている。
「うわぁ…!」
ノアは大きな船がなぜ浮くのか、という疑問で頭がいっぱいになる。
「ありがとうございました!」
ノアは、再度礼を伝えて飛行船に乗り込んだ。
ノアを乗せると、飛行船はすぐに動き出す。
「ノアー!魔法ばっかりやってるんじゃないぞー!」
「はーい!!」
ノアを乗せた飛行船は、どんどん見えなくなる。
「メフィ……ノア、絶対魔法ばかりになるよな…」
「なぜ、そう思うんですか?」
「ギルマスから聞いたんだ。そして、「ノアに魔法ばかりさせるな」という命令も受けた…」
「……まぁ、ノアさんなら自制できますよ!」
「そうだといいんだが…」
フィリアはとても心配している。
上昇した飛行船は、雲の中を通っていた。
ノアの他にも、ルミスティアから乗っている客が、見えるだけで7名ほどいる。皆、冒険者の装いだ。
「ふぅ…落ち着いた。部屋に荷物を置いて、少し休もうかな。」
ノアは1人で大移動するのは初めてだったが、不安な気持ちはあまり無さそうだった。
ノアが角を曲がると、口論している冒険者4人がいた。
「だから!妖精を売れば、それなりの金になるんだよ!」
「そのことがバレたら、儲けなんかないだろ。捕まって出られなくなる!」
ノアは息を潜める。
(私は、聞いてはいけないことを聞いてるんじゃ…?)
「レイジー、その案は止めよう。真っ当に依頼受けようよ…」
「ウェイクまで!」
1人の、何も言わない仲間が、気づく。
「みんな…聞かれてるよ。気配がある……」
「ん?……ほんとだ。誰だ!」
レイジーが声を荒らげる。
(え…気づくの?てか、出ていかないとやばいんじゃ…)
ノアは、降参ポーズで4人の前に現れる。
「子供じゃねぇか。」
「子供じゃないです。立派な11歳です!」
ノアの威勢に、レイジーは何も言い返さない。
「皆さん、冒険者ですか?話が聞こえましたけど…」
「聞いたんだろ?」
「あくまで、聞こえたんです。妖精を売るとか、どういうことですか?」
レイジーは悪い笑顔で、ノアに近づく。
「なんだ?お前も金に困ってんのかぁ?」
「私は…」
ノアは否定しようとするが、思いとどまる。
(話を聞くためには、肯定したほうがいいかも。)
「はい。私もお金に困ってるんです。いいお話なら、聞かせてください。」
「おぉ!仲間なら、大歓迎だ!な?お前ら。」
レイジーは仲間の3人を見る。皆、別に良いという風に頷いた。
「俺らはな…妖精を売った金で借金を返そうと思ってんだ。しかも、滅多に見つからねぇが、"大妖精"がいるって話だぜ!大妖精を売れば、儲かるぜ!」
(大妖精…!)
ノアは大妖精に興味が湧いた。
というのも、『精霊と妖精は、実体を持たない。』と聞いている。
ユアリーベで見つけた"実体化された精霊"から、"実体化した妖精"を作りたい、とノアは考えている。
「皆さん……」
「なんだ?」
「手伝いましょう!でも、お金ではなく、何人か妖精をいただきたいんです。」
「いいぜ!な?」
レイジーの仲間は頷く。
「ありがとうございます!」
(あ!でも、妖精が減ったら、研究できない…)
ノアは冷静に考える。
(この人たちは、悪い人。妖精を売るのは良くない。つまり、捕まえられる……妖精を独り占めするためには、この人たちには捕まってもらう必要がある……!!)
「改めまして、私はノア・フェレア。目的(妖精を独り占めする)のためになら、何でもします!」
「おう!俺はレイジー・トラブトル。目的(金)のためなら、俺らもなんでもやるぞ!」
ノアとレイジーたちの利害が一致した。
奇跡的な勘違いによって。




