24話 報告に「行こう!」とは言った。
「よし……これでラストだ…」
「ああ…これで負けた方が、行く…!」
レイとフィリアは、睨み合う。
「それじゃぁ……」
「「じゃん!けん!ぽん!」」
レイは"グー"、フィリアは"チョキ"を出す。
「いよぉし!行けーっ!」
「クッソォォォォオ!」
ガチャ
「あの…何をしてるんですか?」
「見てわかるだろう?ジャンケンだよ。」
「なぜジャンケンをしてるんですか?」
「どっちが大司教に報告に行くかを決めていたんだ。」
「なるほど。で、なぜフィリアさんは悔しそうにしてるんですか?」
ノアはフィリアを見て問う。
「負けた方は、大司教に報告に行くじゃんけんをして、負けたからだよ。」
「負けたらって言ったら、罰ゲームっぽいじゃないですか!」
「そりゃそうでしょ。フィリアは大司教に魔王討伐の報告をし、魔王との関係や何があったのかなどを聞く。加えて父のことを疑わなければならない。」
「なるほど…酷ですね。なおさら、レイさんが行ってあげればいいんじゃないですか?」
「え…あ、そうだよね。でもね…」
レイはノアの期待の眼差しを見てしまう。
「うっ……」
(ノア…その目はだめだろう…!)
「だめ…ですよね。あ、なら私が」
「僕が行こう!」
レイが名乗り出る。
「え、でも…」
「いいの、いいの!第三者の僕が行ったほうが、信憑性があるよ。」
「おお!その通りだな!助かる。ノア!」
レイはフィリアの服の襟を掴んで、部屋の隅に連れて行く。
戸惑うフィリアを他所に、ノアは「仲は悪くなさそうですね♪」と呟く。
「な、なんだ?」
「ノア"様"だ……!いいな?」
「え、なぜ怖い…?」
「いいか?君は今、ノアに救われたんだ。軽々しく"ノア〜"なんて呼ぶなよ……!」
「え…」
「"はい"は?」
「はい……」
レイは怖い笑みを浮かべ、振り返る。
「よし!行こうね〜♪」
「じゃ、2人とも頑張ってくれ。」
フィリアは1人で立ち去ろうとするが、レイは無理やり連れていく。
「勇者様は行かないとなぁ?」
「クソ…」
「あの、ソフィアさんはどこ行ったんですか?」
「ソフィアは今日1日、ギルマス代理だよ。」
「ギルマス代理……レイさんは、今日1日何をするんですか?」
ノアはソフィアのギルマス姿を思い浮かべる。
「確かに、ソフィアさんなら安心ですね!」
「ああ。じゃ、次こそ3人で行こうか。」
「はい!」
3人は教会最上階にある、大司教の部屋の前に着く。
「よし。ふぅ…」
ガチャッ
レイは勢いよくドアを開けた。
「魔王討伐、ありがとうございます。報告ですね。フィリアにレイ様。おや、ノアさんもですか?」
「ええ。ノアから、は討伐中に出会った精霊に関しての報告です。もし、アレでしたら、戻らせます。」
もちろん、この理由は半分嘘である。
「いいえ。大丈夫です。報告をお願いします。」
「ありがとうございます。では、こちらを。」
レイは書類を渡す。
「まずは、精霊についてです。ノア。」
「はい!」
ノアは1歩前に出る。
「今回、私は途中からの参加になりましたが、戦場には2回、戦場の精霊が呼ばれたと思われます。1回目はレイさんとソフィアさんが戦い、魔力切れで消滅。2度目は私が相手をしました。」
(実際、倒したのはレイさんだけど…)
2時間前、レイとノアは話し合っていた。
「2回目の精霊は、私が倒したことにしろ?どういうことですか?レイさんが倒したのに…」
「1度は僕が倒したし、2回倒しても評価はあまり変わらない。」
「でも…」
「実際、ノアが精霊の魔力を削ってくれたから、残りの魔力で倒せたんだ。」
ノアは少し困った顔をする。
「な?いいだろう?」
「……はい。」
ノアは、レイのお願いを仕方なく聞き入れて今に至る。
「2度も精霊が…」
「はい。レイさんからの話から、2回目は魔力が通常量の3倍あったと思われます。ですが、1回目より大人しかったとの話です。」
「精霊を呼び出した者は、わかりませんか?」
「精霊の魔力量から条件は挙げられますが、特定は難しいですね。」
「そうですか。」
「私からは以上です。」
「はい。ありがとうございます。」
大司教は微笑んで言った。
ノアは1歩下がる。
「次に、魔王と討伐方法についてです。魔王は、元神獣の九尾でした。」
「九尾…」
少しだけ、大司教の眉間にシワができた。
大司教は思い当たる節があるようだった。
「そして、九尾は神聖魔術で攻撃をしていたそうです。」
「…なるほど。戦いの様子はフィリアから聞きましょう。」
「えぁ…は、はい…」
(レイ…!貴様っ……!)
(ふっ…誰が「報告する」なんて言ったぁ?)
「くっ……」 ボソッ
フィリアは1歩前へ出て、コホンと咳払いをして話し始める。
「私は神より武器を授かっていたため、アr…魔王の攻撃は相殺。」
大司教の眉間のシワが消えた。
(シワが……もしかして、何か違う事実を恐れている?検討違いの話題だから、表情が柔らかくなった…?)
「そして、直接の討伐方法は私の武器で首を落としたことです。」
「なるほど。ご苦労。」
「はい。消滅の際、長い時間身体が保たれたままでした。魔力量が多かったと考えられます。以上です。」
大司教は書類を眺める。
「九尾は少し前、神の像が建つ前に神の象徴とされていたんです。像が建つ少し前に亡くなってしまったはずなのですが…」
(自分から切り出してくれるなんて、ありがたいな…)
レイはそう思い、1歩前に出る。
「実は、少し気になることがありましてね。フィリア様。」
「疑いたくはありませんが、父上。魔王となった九尾は、私の育てていた九尾ではありませんか?」
「フィリアが育てていたのは犬にしたはず…」 ボソッ
大司教に少し動揺が見えた。
地獄耳で聞こえたレイは畳み掛ける。
「「にしたはず」って、どういうことです?その言い方だと、まるで…「その事実に置き換えた」みたいですね。」
「何を言いたいのですか?」
レイは、新しい書類を渡す。
「"神の像の調査報告"…?」
「はい。先日、「日々のお祈りで多くの魔力が、像の足元に集められていた」と、ノアが言っていまして。」
「"像の足元には、魔力収集装置と魔法陣があったと思われる。"……何が言いたいのですか?」
「おや…まだシラを切るおつもりですか?」
レイが一気に距離を詰めると、大司教は警戒する。
「空間属性の"空間記憶"で調べると、その2つを置いた人物がわかりましてね…」
「……っ!」
フィリアがレイの肩を掴む。
「父上がやったとでも言うのか!」
「やったと断言していません。ただ、魔法の結果を伝えるだけです。」
大司教はレイを睨んでいる。
(空間記憶っ…?聞いたことのない魔法!)
ノアは魔法のことで頭がいっぱいだ。
「大司教…九尾のことなど、全て話してください。」
「……わかりました。」
今の大司教の発言は、「自分がやった」と言っているのと同じだった。
フィリアは、膝から崩れ落ちる。
「九尾…フィリアが育てているのを見つけた時、保護と偽って神の象徴としました。」
「なぜ、そのようなことを?」
「当時の大司教が死去し、セラシア教は2つに分断されていました。私は、その分断を収めたかったのです。」
「九尾がいれば、分断は収まるんですか。そうなら、私も部下をまとめる際は、九尾を用意しましょう。」
レイが皮肉っぽく言う。
「今思えば、おかしな話です。ですが、あの頃の私は九尾1匹で収まると、本気で信じていました。神の使いである九尾が、まとめてくださると…」
「それで?」
「フィリアには申し訳ないが、少し記憶をいじり、九尾の存在を隠すことで、面倒事を避けました。」
「なぜ?」
レイが聞くと、大司教は教本を渡す。
「教本には、"神が起こすことは奇跡である"と記載されています。」
(記載されています…だと?)
レイは違和感を覚える。
「もし、「うちの息子が育てていたんだ」なんて言ってみてください。神の奇跡しか信じない信者は、分断どころか崩壊です。」
「で、奇跡的に見つけたことにしたんですね?」
「…そうです。」
(分断を解消するために九尾は利用された。なぜ捨てる必要があった?…いや、まずは死んでいないことを確認しないとか。)
「九尾は、なぜ死んだんでしょうか?」
大司教は何も言わない。
「死んでいなかったんですよね?」
フィリアが問う。
「……ああ。捨てました。大司教がいない、当時の信者は自分が大司教にならんとしていました。九尾の力があれば、簡単に大司教になれます。」
「次は、九尾のせいで分断が起こるということですね?」
「そうです。原因を排除するために、捨てざるを得なかったんです。」
「……ですか?」
「ノア、なんて?」
静かに聞いていたノアが、何か言った。
「どれだけ身勝手なんですか?」
「へ…?の、ノア?」
レイは戸惑うが、ノアは大司教に問う。
「なんで九尾任せなんですか?自分だけでどうにかしようと考えもしなかったんですか?2度も家族と離れ離れになった九尾が、なぜ不幸にならなければならないんですか!」
「……っ!」
(ノアは、九尾と自分を重ねているのか…)
レイは、ノアが強く怒る理由が理解できた。
大司教は、静かに立ち上がる。
「では、私はどうすれば良かったのでしょうか……?」
────ガシャンッ!
「ノア!」
大司教は近くにいたノアと共に、背後にあった窓から飛び降りた。
「……え」
ノアは理解が追いつかない。
(落ちている…なぜこうなった?私が何をしたっていうんだ?そもそも、アローを都合よく使ったことを謝罪すべきだろう?)
「なぜ、私が責め立てられなければならないのですか…神のため、信者のため、国のため……"あの方"からも力を貰ってまで、尽くしてきたというのに…!」
「……ふざけるな!」 ボソッ
ノアは杖を取り出して、振る。───シュンッ
「なっ、なぜだ?」
ノアはテレポートで大司教の部屋に戻ってきた。
「神のため、信者のため、国のため…?さっき自分がなんて言っていたか、お忘れになったんですか?」
「……?」
ノアは本気で怒っている。
「「神の奇跡しか信じない」って言ったんです。神しか信じない人間なんて、この世にいませんから。」
「……何を言う。あいつらは神からの恩恵無しじゃ、どうにもならん!魔力も多い私の神聖魔術のおかげで、幸せなんだ!」
ノアは杖を振ろうとするが、レイが止める。
(化けの皮が剥がれたか…)
「まぁまぁ、ノア。杖をしまおうね。」
「……はい。」
ノアが杖をしまうのを見て、レイは続ける。
「今の発言で、ハッキリしましたね?信者のため…でしたっけ?あはは。」
レイは怒りが抑えきれていない笑顔で、大司教に言う。
「他にも、精霊とか魔法陣とかの話も聞かないとな?」
「お前たちが魔王討伐を安全に行えたのも、私のおかげなんだぞ!」
「それがなんだってんです?」
「この話は、無かったことにするのが、礼儀だ!」
「何言ってんだ?
────魔王を生んだのはお前だろう?────」
「!」
レイは大司教を拘束し、連れていく。
「フィリア、ノア。今日は部屋で休みなさい。見張りをつける。もし、部屋から出たり変なことしたら、飛んでいくからね。」
「「………はい。」」
2人は返事をする。
「すみません…フィリアさんのお父さんを……」
「いや、あんなことを思っていたなんて、知らなかった。もっと父の行動や考えを知っておくべきだった。」
「1度、考えるのはやめましょう。怒りが湧くだけです。」
2人が大人しく部屋で過ごしている中、レイは大司教に事情聴取をしていた。
「それで……?ノアのどこを触ったんだ?」
大司教の顔は既に腫れ上がっていた。
「はえはらはひふふほうに…」
「※前から抱きつくように…」
レイは、さらに殴る。
「本当に…なんでお前らは、こうも自己中なんだ?…まぁいい。それで、"あの方"って誰だ?」
「ほはへはひははっははふ!ほーひへ?」
「※お前はいなかったはず!どうして?」
レイはポーションを取り出して、大司教にかける。
「聞き取りづれぇよ。」
レイは、大司教の治った顔に一発殴る。
「で?」
「…私は、絶対に"あの方"の名はいわん。」
「どんなやつだ?」
「私に道をあたえてくださった!」
「神か?」
「あんなものではない!」
「じゃあ、悪魔か。」
「大魔王様だ!」
(!…大魔王だと?)
レイはキョトンとする。
「……名は言わないんじゃないのか?」
「別に、これは名ではない。」
「確かに…?じゃ、さらに詳しく。」
大司教は真面目に話し出す。
「大魔王様は、迷う私に精霊の存在や魔法陣の存在を教えてくれた!私にできないこともできるように、多くの学者を手配し、私にチャンスを与えた!」
「どんなチャンスだ?」
レイは、自然と情報を話させようと、誘導する。
「お前が魔法で見た2つだ。私の魔力で呼び出したところで、精霊は大した強さがなかった。だが、時間をかけて集めた多くの魔力で、より強い精霊を呼び出せる!
だが、無くなっていた!!消えていたのだ。魔法陣で呼び出して、国を滅ぼそうと思ったのに…!」
「はぁ…」
「だが、ノアといた時は大人しかったとはな。なぜだろうか…殺すために、凝視していたとかか?」
レイは一発殴る。
「ノアを殺す…?」
大司教は気絶している。
「お前らの物差しでノアは計れない。ほんと、お前らは見る目ねぇな。」
その時……
「っくしゅ!」
「大丈夫ですか?」
「はい!大丈夫ですよ。きっと、誰かが噂してるんです。」
ノアは心配されていた。
その頃、ソフィアはギルマス代理として会議に参加していた。
「ソフィアちゃーん!あたし、今回は散財しなかったのよ〜♪」
ソフィアは安定に無視をする。
「おい、お前のとこのが喧嘩売ってきたんだが?あ"ぁ?」
「喧嘩売られるほどちっさいやつ、ってことじゃないか?…あ!物理的にもなあ?」
「んだと…お前!」
喧嘩が勃発。
「これから私とディナーでも?」
「私毎回断ってるわよね?」
「はい。ですが、諦めませんよ。」
ナンパが発生。
「このフォルム、たまらんですなぁ!」
「ほんとそうですなぁ!レイ氏の魔法具は最高ですぞ!」
オタクトーク開始。
「はぁ…」
(あの人は、ちゃんと仕事してたんですね…)
ソフィアが考えていると、声をかけられる。
「あたし、レイが気に入ったノアって子に会ってみたいなぁ〜♪」
「え…へ?あ、は、、い?」




