21話 神「神聖魔術を授けましょう」
ピカッ────!
〜〜〜
「ノアさん!大丈夫です、か?……え?」
ソフィアが急いで天文台に駆けつけた。
ソフィアも、多くの負傷者や死者が出ることを予想していた。
「みなさん…何ともないんですか?」
信者たちの怪我はすっかり治り、全員がノアを囲んでいた。
ヒュンッ
「おい!大丈夫かっ?急に結界が消え……え?」
そこにレイがテレポートしてきた。
「囲まれてるのは……ノア?」 ボソッ
(なんで囲まれてる?はっ!あの男っ!!)
見知らぬ男がひざまづき、ノアの手を取って話している。
「あんの野郎…!」
レイは止めに行こうとするが、ソフィアが止める。
「お待ちください!ただ感謝を伝えてるだけですから!」
(止まらない…馬鹿力です……)
ソフィアはレイを必死に止める。
ノアは、ソフィアの頑張りに気づかない。
「ノアさん、あなたのお陰で助かりました…!本当にありがとう。」
男はそう言って、ノアの手の甲に軽くキスする。
「な、なんです?」
「ここでは、感謝の印です。」
男がそう言うと、他の信者たちもノアの手の甲にキスをしていく。
「ノアさん!!こちらに来てください!!」
「あ、はい!」
(あれは、ソフィアさんと……レイさん………)
ノアは振り向き、レイの"怒りオーラ"を見て嫌な予感がした。だが、ソフィアが困っているのに気づき、急いで行く。
「ど、どうしたんですか?」
ピタッ…
ノアが来たのを感じたレイが、動きを止めてノアを見る。
「……怪我は?」
「無いですよ。」
レイはソフィアを振り払って、ノアの肩を掴んで怪我が無いか確認する。
「ほんとに怪我は無いみたいだ。良かった……!」
レイは、緊張の糸が切れたように、その場に座り込んだ。
「ふぅ…整理しよう……さっきの信者たちの様子から、あの人々は怪我をしていて、ノアさんに助けて貰ったってところだよね?」
「はい。私が見ていました。神聖魔術ではない「何か」をしたんでしょうが、わかりません。」
「神聖魔術だとしても、重傷者を癒せるほどの効果はない。」
レイはソフィアと共に整理するが、「神聖魔術無しに重傷者の治療をした方法」がわからない。
「ノアさん。どうやったの?」
「今日のお祈りの際に、神聖魔術の記号を見たので真似をしたんです。神聖魔術だとしても魔力を使うらしいので。」
「だとしても、神聖魔術はあまり効果は無い…ノアさんがここに来た時、重傷者はいたのかな?」
「はい…いましたよ?」
(重傷者を完治させるなんて、神聖魔術じゃ不可能。魔族の魔法などでしかできない……)
レイはその場で考え込む。
「ノアさん、魔術は魔法と違って原理が不明な物なんです。それを記号で表すのは不可能だと思います。そもそも、記号とはなんでしょうか?」
「え…記号は記号ですよ?お祈りの時に見たら、空中に記号が浮かんでたんです。」
「私も、お祈りの際に目を開けましたが、そんな記号は見えませんでした。」
「えっ…?」
(私しか見えてないの?)
ノアとソフィアが困惑していると、レイが言う。
「それはきっと、ノアさんの目が特殊だからだね。魔法の才があるノアさんなら、おかしくない。僕も、神聖魔術の記号を見たことがある。」
「なるほど。私は魔法をあまり使いませんからね。」
ソフィアは納得した。レイは立ち上がる。
「とりあえず、調査団に調査してもらおう。今日だけで2件も変なことが起きるなんて、おかしな話だよ。」
〜〜〜
「はぁ…疲れましたね。」
「そうですね。あの後もギルマスから事情聴取されましたし…無理もありません。今日はもう、寝た方がいいですね。」
「はい。もうクタクタです……」
コンコンッ
「どちら様ですか?」
「レイだ。入るぞ。」
(まだ何かあるのか…)
レイは書類を持っていた。ノアと向き合って座る。
「さっきは、聴取に応じてくれてありがとう。疲れたろう?」
「まぁ、少しだけ疲れましたね…」
「そうか。まぁ、ゆっくり休んでくれ。話があってね。」
レイは書類を机に広げる。
「調査の結果だ。爆発したのは、結界で使う魔力を溜め込む魔法具だった。原因は魔力過多。魔力過多になった原因はわからないが。」
「魔力を吸い込む魔法具と溜め込む魔法具は、連動してなかったんですね。」
「そうだな。吸い込む魔法具でも、多少の魔力を溜め込めるが、連動はしていない。今後は、その部分の改良をする必要がある。」
「そうですね。」
(吸い込む魔法具側に、吸い込む魔力量の限度を決めるのもいいかもな…)
ノアは魔法具のことを考え出す。レイは書類をまとめ、1枚の紙を出す。
「この件で、国を守っていた結界が無くなった。」
「と、言うと?」
「簡単に国が破壊できる"無防備な状態"になった。ということだ。よって、2週間後に予定していた特別依頼を、延期することになった。」
「……え?」
(確かに無防備な状態でも、騎士団を配置すれば問題ないはず……)
ノアはこの国の人々を思い出す。
(好戦的ではない…魔力量は少ない…頭お花畑っぽい…)
今日過ごしていて、皆が平和的だったことやメフィのような、神様ファーストが多かったことを思い出した。
「延期というのは、どのくらいでしょう…?」
「ざっと……2ヶ月かな?まだ決まってないけどね。」
「神生祭は見れなそうですね……」
ノアは残念そうにする。
「いや、神生祭で結界を張り直すと思うから、見れるよ。」
「神生祭で張り直すんですか?」
「そうだ。元々神生祭では、結界の強度維持の為に祈りが行われていたからね。」
「強度維持……日頃行われているお祈りは、何のためなんですか?」
「ただの祈りだね。結界魔力収集はない。結界の維持は、司教7人の魔力で行われているから。」
「なるほど…?」
ノアは引っかかった。今日の祈りで、魔力を吸っていた理由がわからないからだ。
「今日はもう休みな。この部屋使っていいからね。ソフィアは僕と来てね。」
「はい。では、ノアさん。おやすみなさい。」
「はい。おやすみなさい。」
ガチャン…
部屋を出たレイは、ソフィアを羨ましそうに見る。
「ねぇソフィア……僕もノアに「おやすみ」って言いたい…」
「言えばよかったじゃないですか。」
「なんか、馴れ馴れしいじゃん?仲良くなるには、どうすればいいと思う?」
「お得意の魔法でも教えればいいじゃないですか。」
「それだとさ、師匠的な立ち位置じゃん!僕は対等な関係になりたいの!」
「……めんどくさ」ボソッ
「何?」
「なら、呼び方を変えたらどうですか?互いに"さん"付けでしたし。それか、先輩の立ち位置から始めてみては?」
「!それがいいな。呼び方を対等にしつつ、頼って貰えるようになれば、一気に関係が良くなる!ナイスだ!」
「……どうして、そんなにノアさんにこだわるんですか?」
ソフィアが聞く。
「うーん……まぁ、片思い…的な?」
「…………は?」
その頃ノアは、ベッドの上で考えていた。
「通常の祈りでは魔力収集を行わないのに、今日は魔力収集を行った……
考えられるのは、意図的に収集。でも、理由がわからない。なんのために集めていたか……うーん
魔力が必要な状況だったって事は、足りてないか、新しい何かに使いたかったかだよね〜」
ノアは頭の中で考える。
「ああ゛ぁ゛ぁ゛!ミリアさん達の意見が欲しい……」
学院にいれば、エースの誰かしらが助言や意見をくれた。それらが無い状態は、ノアにとって辛いことだった。
「わからない…わからない……」
ノアは丸まって考える。
2時間後。ノアはしっかりと寝ていた。
「はっ!寝てた…?」
時計を見ると11時を示していた。
「なぜ魔力収集を?うーん……魔力が吸収されていったのは、像の足元だったもんなぁ。」
(足元…あ!覗こうと思ってたの忘れてた)
ノアは起き上がり、用意する。
ミリアたちが持たせてくれた服の中にあった、黒いローブを身にまとう。
部屋から出ると、廊下は涼しかった。
「なるべく人に合わないようにしないと…」
礼拝室はノアの部屋から10分程度。遠くはないが、他の部屋があるため油断はできない。
コツコツコツ…
(足音聞こえる…隠れる?いや、隠れるところなんてないし…)
足音が近づいてくる。ノアは「夜の散歩です。」という言い訳を考えておく。
コツコツ………
足音が止まった。月の光で、ちょうど相手の顔とノアの顔が見えた。
歩いていたのは、ヴァンだった。
「ノア?」
「ヴァンさん?!」
「こんな所で何してんだ?良い子は寝る時間だろう?」
「あはは…ちょっと眠れなくて、夜の散歩に。」
「あぁ。そういう時あるよなぁ。どこまで行くんだ?」
「礼拝室までですね…あ…」
「ん?」
ノアは一瞬思った。
(足元を見るためには、力持ちが必要。ヴァンは好奇心旺盛な少年だし、上手く丸め込めれば手伝ってくれるかも…)
「ヴァンさん…」
「な、なんだよ?」
「礼拝室の像って、見たことありますか?」
「あるけど…それがどうした?」
「足元って、見たことは?」
「足元になんかあんのか?」
「はい。噂ですけど……まあ、噂程度ですし、ヴァンはあまり興味無さそうですし。何でもないですよ。」
「…え!気になるぞ!教えろよぉ!」
ノアは「かかった!」と言わんばかりに、心の中でガッツポーズをした。
「えぇ〜、どうしましょうかね〜。」
「お願い!何でもするから!」
「何でも?」
「ああ!何でも!」
「なら、一緒に見に行きましょうか。」
「え?今からか?」
「はい♪」
ノアは、ヴァンの服の裾を掴んで連れていく。
礼拝室は警備員もおらず、簡単に入ることができた。
「いいですか?ここでして欲しいのは、像を持ち上げることです。私が魔法で軽くしますので、軽く持ち上げてください。……あと、このことは他言厳禁でお願いします。」
「もちろん!」
ノアは像の足元まで来て、杖を取り出す。
杖を軽く振って、空間魔法で像の重さを軽くする。
「どうぞ。持ち上げてください。」
「おう。」
ノアは、軽く上げられた像の下の空間を覗く。
「どうだ?見えるか?」
「はい…」
あったのは、魔法陣だった。精霊が封印されており、魔力吸収の魔法がかけられている。
「ありがとうございます。次は、私が持ちますね。」
「何があった?」
「それは、自分の目で見た方がいいですよ♪」
ノアはそう言って、持ち上げようと力を入れる。
グッ…
「あれ…?これ、持ち上げてたんですよね?」
「あぁ。軽かったぞ?」
(ヴァンさんは脳筋なのか…)
「これは無理ですね。もっと軽くなるように、魔法を重ねないと。」
ノアは杖を振って、3重に魔法をかける。
グッ…
「やっと持ち上がりました…どうぞ。見てください。」
「おう!」
ヴァンは嬉しそうに覗く。
「おい…これは、ギルマスに報告する案件だぜ…」
「…え?」
「いや…今日あった事件で、これは最重要の証拠になる。神に背く者がいること、その者を特定できるかも。」
「で…でも、ここであったことは他言厳禁ですよ…?」
「うーん…そうなんだよなぁ…そこがネックだ。」
ヴァンは考え込む。流石は脳筋。
「私のポーチに入れましょう。そうすれば、丸く収まります!」
「名案だ!でも、ノアが持つのは危ない。」
「そっ…そんなことはありませんよ…」
ヴァンは魔法陣を取り出して、自分のポケットにしまう。
「俺が持ち帰ろう!」
「…はい。」
(大事な資料が……)
礼拝室を出ると、ノアはヴァンに声をかける。
「あの…魔法陣ってどうするんですか?」
「うーん…そうだな。廃棄…かな?」
「あ!なら、もう1回見てみたいです。」
「見たいのか?ノアって変わってるなぁ!ま、見るくらいならいいぞ!」
ヴァンは魔法陣を広げる。
(今でも魔力を、私はヴァンさんから吸い込んでる。精霊は、"戦場の精霊"?!
昔封印されたって、本で読んだのになぜ?
封印を解いて、さらに封印した者がいる?
いやでも、これは封印の魔法ではない。……まるで固定だ。………っ!)
ノアは顔を上げる。
「ヴァンさん、ありがとうございます!私、ちょっと急いで戻りますね!ありがとうございます!本当に!」
「え?あ…おう!………?」
ノアは、すごい勢いで部屋に戻る。
バタンッ
「確かここに……あった!」
ノアは、たくさんの本の中から"精霊の種類と特徴"という本を手に取る。
「戦場の精霊…せ…せ…戦場…これこれ!」
―戦場の精霊
戦争において、この精霊の存在は大きい。
精霊の中で唯一、攻撃的な精霊であるため、精霊たちの中でもあまり好まれていない。
この精霊が呼び出された場所は、確実に血の海と化す。
呼び出した者には、勝利を与えるだろう。―
「やっぱり、あんなのが放たれたら危険だ…」
次にノアは、同じ棚にあった"精霊と魔力の関係"という本を手に取る。
「関係あるかも…」
―以上の実験から、精霊と魔力は密接に関係があると考えられる。
呼び出した者の魔力が多ければ、精霊の魔力も多くなる。その逆も然り。
また、魔力が多い精霊ほど強い能力があると考えられる。
魔力を流し込む実験は失敗したが、流し込めば精霊の力は大きくなるだろう。―
「もし、これが本当なら、あの精霊はとても強くなるはず。私の魔力、めっちゃ吸ってたし…ま、ヴァンさんなら破棄してくれるだろうな♪」
ノアは、ベッドに横になる。
「あれは確実に実験だっただろうなぁ…精霊に魔力を流し込めば強くなる。あの精霊を使って、何かしようとしてる人物がいるのかも。いや、単なる好奇心かも。……どっちにせよ、危険なのは間違いないか…」
ノアは、「今度自分でも実験しよ♪」と心の中で決意して、眠りについた。
翌日。ノアの部屋にレイが尋ねてきた。
「おはよう。朝食は取ったかい?」
「おはようございます。まだ朝食は取ってません。」
「なら、ソフィアも一緒に3人で食べようか!」
「いいんですか?」
「もちろん!話すこともあるしさ!行こう♪」
レイはノリノリで歩き出す。
「ソフィアさん…」
「おはようございます。」
「おはようございます。…今日のレイさんは、機嫌良いんですか?」
「……気のせいですよ。」
(今の間何?)
食堂に着くと、レイのおすすめのメニューを勧められた。
「どう?美味しいでしょ?」
「はいっ!名前は変ですけど、とっても美味しいです!」
「名前?」
レイに勧められたのは、"カッチャゴパッチャゴ"という料理の定食だったが、美味しかった。
「それで、話というのは?」
「特別依頼の日程についてだよ。日程は、神生祭の2日後に決まった。結界の様子を1日見てから、討伐に向かう。」
「わかりました。準備しておきますね。」
「それと……ノアって呼んでもいいかな?僕のことは"さん"付けじゃなくて、"レイ"って呼んで。」
「え、でも、目上の人ですし…」
「そこは大丈夫!僕が許可してるから。…だめ?」
ノアは、これ以上渋ったら、レイが怒るかもと思った。
「わ、わかりました…」
レイはニコニコとノアを見つめる。
(今呼べと?)
「……れ、レイ…」
レイは嬉しそうにする。
「ノア♡いつでも僕を頼ってね?」
「はい…他に何かありますか?」
「無いよ〜♡」
(これだけ?)
ノアの頭は混乱していた…!
「これは何かの罰ゲームか!」と。
〜2ヶ月後〜
像の前には大司教が立って話していた。
「我々に道を与えてくださる神に、誕生の感謝を。それだけでなく、日頃の感謝や全てに感謝を込めて、歌いましょう。」
ちなみに、ノアは歌の練習はしてこなかった。
理由は簡単。ロアンとクララから、「もう歌わないで!」と泣いて言われたからだ。
それ以来、ノアは自分は音痴だと思って、ちゃんと自粛してきたのである。
だが、今回は自粛できない。神に届けなければならないのだ。下手でも頑張りを見せなければ、神聖魔術は見れない!
(神様…下手でごめんなさい。)
大司教がパイプオルガンの前に座る。第1司教が指揮として、タクトを振る。
大司教の奏でるパイプオルガンは、落ち着いていて美しい。
〜♫〜〜♪
信者たち(この子、練習してなかったけど大丈夫なの?)
ノアたち信者が歌い出す。
信者たち(っ!!)
ノアは物怖じせず、大きな声で歌う。綺麗な歌声が響く中、空中には全ての信者が見えるほど濃く現れた、魔術記号がある。
(うわぁ…!綺麗!これが結界の記号!覚えなきゃ!)
ノアは記号を、脳に刻む込むように覚える。
信者A(なんだ…この美声……まるで天使!)
信者B(これは、魔術が発動している?)
大司教(我々でも、こんなに濃く、ハッキリと現れることはない!一体誰が?)
歌い終わる頃には、その場の全員が犯人がわかっていた。
大司教が前に出てくる。
「皆さんの歌は素晴らしいものでした。神の心を潤すことができたでしょう。そして…ノア・フェレアさん、前へ。」
「…はい。」
ノアが大司教の前に出てくると、頭をポンポンと撫でてくれた。
「あなたは以前、「私は歌を台無しにするから。」と言っていましたが、そんなことはありません。」
大司教は優しい声で言う。
「あなたの歌は素晴らしい…!もっと自信を…」 カサッ
像の方から音がした。見ると、像の足元に丸まった紙が落ちていた。
「これはなんでしょう?」
第1司教が拾い上げ、大司教に渡す。
大司教は紙を広げる。
「―ノア・フェレアよ。
貴方になら、大魔王も倒せるだろう。
私は貴方の歌のファンになった。
貴方に我が力、神聖魔術を授ける。―
……神がお言葉を!」
信者C「そんなこと、奇跡です!」
信者D「おお、神よ…!!この子があれらへ遣わした天使なのですね!」
ノアは驚いた。
(神聖魔術を……自由に使える?!どう使うんだろ?歌う?あ、舞う?)
〝ノアよ。〟
(え…もしかして、神様ですか?)
〝ああ、私が神だ。貴方に授けた神聖魔術は、貴方が想うだけで自由に使える。以前の貴方には、もどかしい思いをさせてしまった…〟
ノアは、2ヶ月前の爆発の時を思い出す。
(本当に、ありがとうございます。それで……何か、自由に使う条件とか、あるんですか?)
〝そうだな…考えてなかったが……たまに歌を歌ってくれ。それが私の望み。あとは……効けばでいいが、大魔王を伐て。〟
(歌は、わかりました。大魔王は……努力します…)
〝うむ。では、期待している。〟
(で、できるかわかりませんよ!)
〝……〟
(あ…もういない。)
その後、多くの信者から祝福の言葉を受け、疲れ果てたノアは部屋にいた。
「疲れた…」
コンコンッ
「開いてます。どうぞ。」
「やぁ!明日の特別依頼、順調に行けそうだよ。って、大丈夫?」
「へ?……あ!」
シュシュッ
ノアはレイと目が合い、急いで席に座る。失礼になってしまう。
「すみません…特別依頼ですね。結界が治って良かったです。」
「うん。」 じーっ
レイはノアを見る。
「?……なんでしょうか?」
「いやぁ?なんか、神様に睨まれてる気がしてさ。」
「ああ。神聖魔術が、自由に使えるようになったんですよ。」
「神聖魔術……自由に?は?それって、すごいんだよ?前例がないんだよ?わかってる?」
「はい…なんか、神様は私の歌のファンらしいんです。」
「へぇ〜!僕も聞きたかったなぁ…」
「今日はちょっと、もう疲れちゃって…」
「うんうん。ゆっくり休みな。明日も早いから。」
「はい。ありがとうございます。」
レイがドアを開けて、振り返る。
「の…ノア。おやすみ。」
「?おやすみなさい。」
レイはバタンッと、強くドアを閉めた。
「はぁ…緊張したぁ!ソフィア!上手くできてたよね?」
「大丈夫だと思いますよ。」
「でも、ほんとにノアはすごいよ。神まで味方につけるとは。」
「歌、すごく綺麗でしたよ。」
「クソッ!俺が行けてれば…!ま、ソフィアも明日は着いてきてね。」
「わかりました。」
「おやすみ。」
「……」
レイは会議室に行く。
「神怖かった…あんな睨まなくてもいいじゃない!僕の方がノアのこと知ってるし!」
天に向かって怒った。
「まぁ、明日は僕たちに味方してください。ノアの為にも。僕の為にも。……ね?」




