20話 ノア「魔法は神より偉大なり…!」
「あなたは"神"を信じますか?」
「…………はい。」
「…」
沈黙が流れる。
「どうしたんですか?ワタシ、カミヲシンジマスヨ?」
「しん…」
「なら、入信の方ですね!」
ノアはカタコトで言った。
ソフィアは「神聖魔術は辞めておきましょう。」と、言おうとしたが何者かに遮られる。
「私はセラシア国の第3司教の"メフィ"と申します!入信の方ですね。こちらへどうぞ!入信手続きをしますね〜♪」
メフィと名乗る女が、ノアを連れていく。
「え、ちょっと待ってください。入信は…」
「あ、あなたも入信ですね♪」
「いや、ちょ…」
ソフィアが断ろうとするが、メフィはソフィアさえも連れていく。
ノアとソフィアは修道服に着替えさせられた。
ソフィアはノアを見る。
(ノアさん、似合ってますね…)
「よし!これで神聖魔術を学べます…!!」
(楽しみ〜!)
(この子、神を信じてませんよね…)
「では、こちらへどうぞ!」
メフィは部屋へと案内する。
「学院くらい大きいですね。」
「そうですね。神の誕生を祝う、神生祭の際には信者全員が、この建物に集まるからですよ。では、この部屋で説明しますね!」
メフィは、ノアとソフィアと向かい合うように席につく。
「まず、お名前は?」
「私はノア・フェレアです。」
「ソフィア・パクトです。」
メフィは、なるほど。と言いながら書類に記載する。
「では次に、入信の理由はなんですか?話せる範囲で構いませんので、お聞かせください。」
(ノアさん…絶対に「神聖魔術を使いたいから〜」とか、やめてください!)
ソフィアの頭の中は、必死にノアにテレパシーを送っていた。
「そうですね……神を信じれば (神聖魔術を) 楽しめると思ったからです!」
「っ!」
(ノアって子、素晴らしい…目に一切の曇りなし。純粋に神を想っている…)
メフィは勢いよく立ち上がり、ノアの手を握る。
「きっと (人生を) 楽しめます!!私は、あなたを応援します!いつでも頼ってください♡ソフィアさんは?」
「わ、私は…」
(いっその事、教会に身を寄せるのも悪くないのかもしれないです…)
ソフィアの中で思い出される、押し付けられたレイの面倒事の数々…
「 (仕事から解放されて) 楽になれると…思ってます…」
「楽…?っ! (辛い記憶から解放させて) 楽にしてみせます!お2人とも、私が全力でサポートしますので!」
3人の思いが、少しズレながらも一致した。奇跡の瞬間だった。
メフィは席につき、改める。
「それでは、説明を始めますね。まずは神に仕えるために、必要な業務です。イメージとか、ありますか?」
「うーん…お掃除とか募金とかですかね?」
「ノアさん、半分正解です!」
「半分…?」
「はい!イメージされることは、業務というよりは当たり前のことです。なので、仕えるのに必要だけど業務とは呼ばない。そんなところですね。」
「はい。」
ソフィアが手を挙げる。
「ソフィアさん、どうぞ!」
「歌や舞を送る、芸術や文化の発展。と聞いたことがあります。」
「あ!カンニングでしたか。めっ!ですよ!」
「す…すみません…」
(ソフィアさん、メフィさんの押しには弱めかな?)
「でも、ここまでで正解になりますね。神生祭で神に送るため日頃行うのは練習です。ですが、日頃の積み重ねが神に届いた時、人生が豊かになるのです!!」
「なるほど!!」
(神聖魔術が使えるようになる…と!)
ノアの目は、輝いていた!
そんなことも気づかず、メフィは立ち上がる。
「では、早速お仕事に…」
「ちょ、ちょっと待ってください!神聖魔術の説明は無いんですか?」
「あー…忘れてました。あはは…」
メフィはパンフレットのような物を持ってくる。
「こちらに記されています。
・神聖魔術は、魔法とは違って無詠唱。かつ、無意識的に発動します。
・神への信仰無しでは、到底発動しません。
そして、その信仰を示す行為こそ、歌や舞、芸術や文化発展です。
…さっき、ノアさんはこのような本を読んでましたよね?」
「はい!でも、聞きたいことがあるんです。」
「聞きたいこと?」
「神聖魔術の発動方法です。歌ったり舞ったりしてる時のみに発動なのか、全て終わった後なのか。あと、魔力をどの程度使うのか…などですね!」
「ああ、なるほど!神聖魔術は信仰心があれば、誰でも発動しますよ。日常生活で、常に歌ったりは大変ですし。」
「確かに…」
(ノアさん……)
ソフィアは少し呆れた。
「では、信仰心の強さなどでは、威力なども異なってくるんですか?」
「い、威力…ですか?威力?」
「はい!魔王にも攻撃が効くという魔術の威力です!」
「あ…えっと…信仰心が強ければ、魔術のレベルが変わると、聞いてます。威力は魔力量で決まります。」
「魔力を使うんですね…超常現象だと書いてあったので、驚きです…」
「も、もちろん!生活用の魔術は、威力など関係ないので魔力は使わないんですよ。でも、攻撃となると…魔力を使わないとならないんです。きっと。この国を囲う結界も、魔力あっての物です。」
「結界には魔力が必要…」 ボソッ
(街を見ても、信者の人たちの魔力量は少なかった。どこから大量の魔力を得ているんだろう?)
ノアは黙りこくって考え出す。
「これで、説明は以上ですね。ノアさん。信仰心を持って、イメージでもしてみてください。そして、早く帰りましょう。」
ソフィアは、レイが帰る前に終わらせようとする。
「それだと、生活用の魔術しか見れません…もっと、神聖魔術っぽいのが見たいんです!」
「ですが…」
ソフィアは「ノアさんの魔力量だと、何か起きるかもしれないのでダメです。」と言おうとしたが、グッと我慢した。
「あの、メフィさん!いつ神聖魔術っぽい神聖魔術をしますか?」
「そうですね……2ヶ月後の神生祭ですね!ノアさんは、まだ幼いですから、1人で発動は難しいかもしれないです。なので、大勢で発動させる神生祭がベストですね!」
「参加しますね!……ソフィアさんも、一緒に…ダメですか?」
ノアはソフィアの顔色を伺う。
「あ…いえ……その……」
(そんな……しょんぼりしないでください!!一緒に参加したくなっちゃうでしょう!!)
「……わ、わかりました…」
「良いんですか?やった〜!」
ソフィアの実家で飼っていた犬にそっくりな、しょんぼり顔だったため承諾してしまった。
「では、お話も終わったことですし、お仕事しましょうか!ノアさんは、本が好きなんですよね?」
「はい!」
「では、先程の図書館のお掃除をお願いしますね♪ソフィアさんは…私と一緒に教会のお掃除です!広いので、大変なんですよ…」
「わかりました。」
掃除道具を手に、図書館に行く。
「さっきも思ったけど、図書館にはあまり人がいないな。司書っぽい人もいないし…でも、神聖魔術を使うため!2ヶ月でも、半年でもやってやる…!」
ノアは掃除を始める。
し────ん…
「なんでこんなに人がいないんだろう?良い本ばかり置いてあるのに、読まないなんてもったいない…」
ノアは2時間もの間、無心で掃除をした。
室内は全て大理石であるため、差し込む太陽光が反射している。
「ま…眩しい。……ん?」
反射した光が一点に集中している。気づかないほど僅かに床が斜めになっているのだろう。
近づいてみると、古そうな本の背表紙にマークが書かれており、そのマークに光が集中していた。
ノアは、その本を手に取る。
表紙には"mohmrigmernk-rkswymtkktdmermn-"と書かれている。
「どういう意味だろ…?」
ガチャ…
音がして顔を上げると、本棚が一斉に床に収納された。
「ど、どういう仕組み?!というか、なにこれ?」
謎の部屋が広がっており、多くの資料がある。紙質からして、最近の資料だろう。
ノアは1つの資料を手に取る。
「魔王弱体化における神聖魔術の無効化……?そんなこと、できるものなの?」
ドサッ
ノアは振り返ると、ソフィアとメフィがいた。メフィは驚いて掃除道具を落として、唖然としている。
「こ、これは……一体なんですか?」
「ソフィアさん!太陽光が集中していた本を引き抜いたら、現れたんです。」
「現れた?……ノアさんは怪我とかないですか?」
ソフィアも驚いているようだ。
「大丈夫です。どれも面白そうですし、色々見てみましょう!」
ノアは気になる資料を、片っ端から手に取っていく。
("神聖魔術を防ぐ魔法実験"…超常現象を魔法で?むちゃくちゃだ…!
こっちは…"神聖魔術と魔法の相性-混合実験-"か。現象と魔法式を組み合わせるなんて、ぶっ飛んでる!この布は?)
ノアが夢中になっている中、ソフィアは部屋に足を踏み入れる。
机の上には、剣が置かれていた。
「これは…!アーティファクトですよね?メフィさん。」
「え…?あぁ、はい。アーティファクトですね。でも、なぜこんな場所に?本来、神が勇者に持たせる物。勇者の務めが終われば、神の手に戻るはずなのに…」
(ここは、きっと上位魔物の実験室ですね。危ないですし、レイにすぐに連絡しないとです…)
「メフィさん。私はギルマスに連絡します。少し待っていてください。お怪我などしないように、何か起きる前に部屋を出てください。」
ソフィアは、2人を置いて(ノアは忘れてた)部屋を出る。
「そ…ソフィアさん?行っちゃった…」
その時ノアは、怪しげな布の奥に行っていた。まだ部屋は広がっていた。
「ここは……暗くて見えない…」
ノアは杖を出し、軽く振る。
頭上に光が発生し、部屋を明るく照らす。
「うわぁ……!こ…これはぁ!!」
部屋にあったのは、神聖魔術と魔法を組み合わせた式"魔法陣"。
そして、ノアが特に気になるのは……
「実体化された、、精霊……?あはは…」
(すごい!!本来精霊は実体化されることはほとんどない!概念が精霊だから。なのに……)
ノアは、ホルマリン漬けにされている精霊を、じっくりと観察する。
「なるほど……!これは面白い!神聖魔術で呼び出した精霊を、錬金術で生み出した肉体に無理矢理入れ込んだのか!」
見れば見るほど、精霊は複雑かつ高密度の錬金術式でしまい込まれていた。
他にも、精霊が編み込まれた魔法陣や、錬成された肉体に魔法陣を埋め込んでいる物もあった。
「よし!何個か持ち帰ろう。流石にこれほど非道だと、倫理的(?)に大変だし。壊される前に、確保!確保!」
学院を去る際に、エースたちから貰ったポーチに押し込んでいく。
タタタッ…
(誰か来た…)
バサッ!
振り向く、レイがいた。ソフィアも後ろにいて、2人とも安心したような顔になった。
「良かった…ノアさんが無事で。怪我は?1人で調査なんて、ダメだよ。」
「すみません…」
「さぁ。ここは今から調査が入る。ソフィアと一緒に食事でもしていると良い。ソフィア。」
「はい。報告は後ほど…」
レイはその場に残って、調査団に指示を出す。
ノアはソフィアと食堂に行く。
「ノアさんは大丈夫でしたか?」
「?はい。大丈夫でしたよ。」
「なんの事だかわかってませんね…」
「すみません…」
「あそこにあった物は全て、人間が耐えられないほど濃い魔力を纏っていたんです。なので、魔力中毒などを起こしていないかと思ったんです。……まあ、ノアさんなら大丈夫だとは思ってましたが。」
「確かに、濃度が高かったと思います。でも、そこまでではないと思いますよ?」
ガシャンッ
ソフィアはノアの言葉に驚いて、手にしていたスプーンを落とした。
「あれが…そこまでではない、と?」
「はい。本気のオムケルの方が凄いと思いますよ。」
「あのドラゴンですか…だとしても、普通は耐えられません!」
「す、すみません……」
ノアは、珍しく焦りが表に出ているソフィアに驚いた。
食事も済んで、メフィの体調を見に行くことになった。
「メフィさんは、神聖魔術で回復しているとのことです。」
「神聖魔術は、やっぱり便利ですね。早く習得しないとです!」
メフィの部屋に入ると、メフィは座って本を読んでいた。
「メフィさん!大丈夫ですか?」
「ノアさん。私は大丈夫です。これでも、第3司教。魔力量はそれなりにあるんです♪私なんかより、ノアさんは大丈夫でしたか?」
「はい!何ともなかったですよ。」
コンコンッ
「お休みのところすみません。ノアさんはいますか?」
「はい。いますよ。入ってもらって構いません。」
「失礼します。」
入ってきたのは、レイだった。
「あ、いたいた。ノアさんにちょっと聞きたいことがあったんだ。お邪魔だったら、待ってるよ。」
レイは微笑んでいる。だが、少し怒っているように感じる。
「だ、大丈夫です…もう用は済みました……」
(なんかやったっけ?……もしかして、私がお借りした(勝手に持ち帰った)魔法陣とかがバレた…?)
「行こうか。」
「はい…」
ノアは、ロボットのように歩き出した。
レイのあとを着いていくと、ノアが使っていた部屋に案内された。
「さ、座って。楽にしてくれていいよ。ソフィア、お茶お願い。」
「はい。」
(いつもなら「お願い」なんて言わないんですけどね…)
ソフィアは、すぐにお茶を用意して出す。
「ノアさん、これを見てどう思う?」
そう言って、レイは紙に書かれた魔法陣を机に置く。
「そ、そうですね…とてもすごいと思います。神聖魔術を無理矢理魔法で式にしたような感じですね……」
「……とても落ち着いているね?」 ニコッ
「あ……」
ノアは、カマかけられていることに気づいた。
「あの部屋をたくさん見てないノアさんなら、興奮して仕方ないでしょ?でも、驚いてるようにも見えない。」
「はい…たくさん見ました。」
「正直でよろしい!でも……」
レイは立ち上がり、ノアの背後に立つ。
「学院でも学んだりしない魔法陣にとても詳しいみたいだねぇ?もしかして……何か知ってたりするんじゃない?」
「い…いえ?ちょっと魔法書で読んだことがあるだけですよ。」
「ほんとに?」
「……ほんとに本当です!」
レイは机の上に置いた魔法陣の紙をしまう。
「そう!なら、いいんだ。怪我も無いようだし、特別依頼まで大人しくしてるようにね。じゃ、僕は失礼するよ。」
「はい。ありがとうございます……」
レイは部屋を後にした。
「ソフィアさん…私、やっちゃいましたよね……」
「大丈夫です。(多分)怒ってるわけではないので。」
「だと……いいんですけど。」
「今日はもう休まれては?掃除も、床に太陽光が反射するほど磨いてましたし。」
「のめり込んじゃって。」
コンコンッ
「メフィです。これから、お祈りをするんです。一緒に行きましょう!」
ノアは立ち上がり、ドアを開ける。
「行きますっ!」
(お祈りでも神聖魔術が発動すると、図書館の本にも書いてあった…!)
ノアは、先程のしょんぼりが吹っ飛んで、目がキラキラしだす。
「ソフィアさんも行きましょう!」
「はい。」
メフィに案内されて、礼拝室に来た。正面には、神の像があった。
「もう、みんな集まってますね。」
「作法とかあるんですか?」
「はいっ!両手を握って、胸の高さまで持ってきて……こう、目を瞑って祈ります。」
「わかりました。」
メフィは説明し終わると、司教たちの列に並ぶ。
第1司教「では、お祈りを始めます。」
第1司教の合図で、信者が一斉に祈りを始める。
しばらくして、ノアはチラリと目を開ける。
(っ!)
見ると、天井から光が差し込んでいた。光に当たると、僅かに体が軽くなる感覚があった。
(なるほど。治癒系の魔術か…)
そして、ノアが特に気になったのが…
(像の足元に、信者たちの魔力が吸い込まれてる?どういう仕組み?なぜ吸い込む?)
祈りが終わると、信者たちの中からメフィが出てきた。
「お待たせしました!残りのお仕事をしましょうか♪」
ノアは洗濯物を畳み、ソフィアは書類の整理をする。
「まず、魔力を集めて何をするんだろう…?
魔王討伐に向けて溜めてる?……結界に使ってるのかも。
次に、どういう仕組みか。
魔力を集める魔法具は存在するけど、あまり多くは集められない。できるとしたら、アーティファクトのみ。
だとしても、「アーティファクトが地上に降りてきた」なんて話は、聞いてない。……わからん!
……ちょっと覗くくらい、良いよねぇ…
まぁ、それは置いといて……」
ここまで、ノアはボソボソと呟いていた。
一緒に洗濯物を畳んでいる同年代の子供たちは、ノアをチラチラと見て警戒している。
「神聖魔術……魔法式とは比べ物にならないほど複雑!
魔法の記号と同じ感じだけど、はっきりとした記号でもないから解読は難しい…
魔法式のようにするためには、まずは書き出すところからだよね。……早く習得しないとだ。」
ボンッ!
「うわぁぁぁぁ!」 「きゃぁぁぁ!」
ノアがボソボソと呟いていると、爆発が起きた。ノアからは離れている。
ノアは、杖を振ってテレポートする。
「大丈夫ですか?」
「うっ………」
ノアがテレポートした場所付近は、多くの魔力が漂っている。爆発で天文台であろう建物が崩れていた。
目の前にいた女性に声をかけるが、出血が多い。女性の魔力が徐々に弱まっていく。
「そんな…ダメです!起きてください!」
(まだ…私は神聖魔術が使えない…)
「き、気を失わないでください!目を開けてください!」
ノアの声で目は開いたが、意識がはっきりとしていないようだ。
周りには、他にも負傷した信者たちが倒れている。みな怪我をしていて、辛そうだ。
(私は、この人たちを助けたいのに…!)
「ダメ…魔術も、魔力を使うから……原理は同じはず。魔法で無理矢理でも、魔術を構築すればいい……!」
ノアは杖を構える。ついさっき見たばかりの、治癒系の神聖魔術の記号を、空中に描く。
「こんなに祈ったのに、神は何をしてるんだろ…なんで、助けてあげないの?苦しそうなのに。」
神聖魔術の記号を描き終える。
魔法式よりも複雑かつ不安定な記号。
(神聖魔術だからなのか…記号が違うのか…)
「やらないとわからない。この人たちは助からず、私も巻き込まれるかも。……でも、やりたいっ……!!」
描いた記号に魔力を一気にこめる。
「くっ………!まだ魔力が必要か…なら、、次はここの部分を……」
ノアは楽しそうに魔力をこめ続ける。
ピカッ────!
最後まで読んでいただきありがとうございます
次の21話もお楽しみに




