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栗林(1)

 毎日がただの命の繰り返しで、そこに意義や意味などもはやあるとも思えなかった。

 ただ生きる為にやりたくない事を頑張り、理不尽に詰められ、食事と睡眠を行うだけの日々。


 虚しい。空しい。空虚。

 空っぽよりも少ない人生。そんなふうに思えてならなかった。

 

 子供の頃はただ馬鹿みたいに毎日が楽しかった。今日が終わるのが残念で、でも明日がある事が輝いているような毎日だった。

 

 どうしてだろう。周りを見ても皆同じようだった。

 温度のない言葉と顔で部下の実績を詰める上司も、申し訳ございませんなんて神妙な表情を張り付けながらも一切心を許すどころかどす黒い憎悪を客達に向ける同僚達も、皆空っぽだった。


「栗林もさ、もっと頑張れよ」

「さっさと結婚して子供つくっちまえよ」

「人生よ、楽しんでなんぼだろ」


 言葉では行きますと言いながら何一つ望んでもない時間と金をドブに吐き捨てたような飲み会の場で向けられる言葉は、金言だぞ言わんばかりの堂々としたバカみたいな声量の癖に一切中身のないガラクタ以下だった。

 

 頑張れって何を? 

 毎日夜遅くに帰り休日も潰れ、家にもほとんどいれないような仕事をしてまで結婚して子供を作る意味は? 

 人生を楽しめっていうのは、今の仕事に骨まで埋めろって事か?


 考えるだけ無駄に思えた。仕事もそうだが国もどんどんおかしくなっている。ただ生きる為に頑張っているだけの人間達から、その気力すら奪う施策ばかりだ。


【人生の楽しみって何だよ】


 俺は何も考えずに画面に打ち込んだ。


【楽しみがないなら見つけましょう。私があなたをサポートします】


 ――AIの癖に。


 そう思いながら、嫌な気持ちにはならなかった。それどころか、生身の人間以上にその言葉に温かみを感じている自分がいた。


「AIの癖に」


 口に出した後、自然とわずかに上がっていた口角を俺はすっと戻した。

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