P.8-5 緊急召集
頑張ります。
10月30日
スライム討伐から帰ってきた俺たちは、ギルドで報酬をもらい、帰路についていた。
「サキちゃんさっすがー」とミーシャ。
「あの魔法の威力、凄いな……」とエレナ。
会話を交わす三人の後ろにストーカーの如くついていくのはこの俺、シンキソウである。
微笑ましい光景。
……これがずっと続けばいい、そう思った。
しかし、現実はそうもいかない。
『緊急召集! ギルド会員の方は、ギルドに集合してください』
街の中に響く声。
これは確か、伝心石とかいう石を削って、伝心石の核がある方から、ない方に声を伝えることを利用した伝達装置だ。
しかも、緊急召集とはな……。
嫌な予感しかしないぜ。
俺たちは、先ほどいたギルドに向かった。
*
俺たちがギルドに着いたころにはたくさんの人がいた。
これが全員ギルド会員となると凄いな。
「おーい、ソウー!」
人がごった返すギルドの中で、俺に声を掛けてきた人物がいた。
クレイス=ダスターだ。
俺がまだ新米だったころに-まだ新米だが-酒を奢ってくれた人物だ。
「おぉ、クレイス。生きてたか」
「生きてたかって……これでもギルド内じゃ中堅クラスだぞ? 相変わらずのひねくれ具合だな……」
なんやかんやで仲良くなったクライスとは最近会っていなかった。
「この騒ぎは何だ? 祭りでもやんのかな」
クライスは軽口を叩き、この召集にあまり危機感を持っていないようだ。
俺はただ事ではないと思うのだが……。
「おっ、始まるみたいだぞ」
いつの間にか、いつものお姉さんが台に登っていた。
これから緊急召集の理由を説明するようだ。
「えーっと、あまり時間がありません。手短に説明させてもらいます」
その言葉にギルド内の空気が変わる。
その言葉に緊迫感を覚えたようだ。
隣にいるクライスも、表情が硬くなる。
「……あの、グレイトフォレスティアが、この街に向かって進撃しています」
その瞬間、俺と神無月以外のギルド会員の顔から血の気が引く。
進撃、という言葉から、グレイトフォレスティアとやらはかなりの危険物らしい。
「おい、クライス! グレイトフォレスティアって何だ?」
俺は、青い顔して立ち尽くしているクライスに質問する。
すると、クライスは鬼気迫る顔で騒ぎたてる。
「オマッ、ちょっ、それでギルド会員かよ! グレイトフォレスティアはなぁ、どこからともなく現れて、進行方向にあるものすべてを破壊する動く密林だよ!」
なるほどな。
「被害額、規模ともに最高レベル! 三大危険因子の一つだよ!」
それがこの街に、ね。
ヤバいね。
明らかに空気の重くなったギルド内に喧騒を戻したのは、だれでもなく、受付のお姉さんだ。
「そこで皆さんに、グレイトフォレスティアの撃退をお願いします」
……。
一瞬の沈黙。そして……
「逃げろォォォー!」
「死にたくない!」
「ふざけんなァァァー!」
喧騒ではない。
悲鳴だ。
ギルド内は阿鼻叫喚。
「もちろんボーナス出ますよ?」
空気を読まないお姉さんの発言に、ギルド会員たちは……
「要らねぇよ!」
「命の方が大事だっつーの!」
この反応。
「補足なんですけどー、このギルドの近くに、結界張られているので、逃げられませんよ?」
……。
またも沈黙。そしてもちろん……
「ふざけんなァァァー!」
「もう終わりだ……」
「飯、ちゃんと食えばよかったな……」
こうしてフュルーレのギルド会員は、グレイトフォレスティア撃退任務をすることになった。
クライスといえば……
「ハハハ……」
渇いた笑いで、死にかけていた。
最初の軽口はどうした。
そういえば、俺のパーティーメンバーはというと……
「フム……どうしたものか……」冷静に分析をし始めるエレナ。
「短い人生だった……」諦めの言葉を口にするミーシャ。
そして、神無月は……受付のお姉さんと怪しい会話をしている。
フムフムと受付のお姉さんは、相槌を打つ。
そして……
「大丈夫ですよ。皆さんのもう一つの気掛かり、フォレスティアギャザーは、シンキソウさんが一手に引き受けるそうです!」
「「は!?」」
俺と他のギルド会員の声が重なる。
フォレスティアギャザー?
しかも、俺が一手?
「だ、大丈夫かよ? フォレスティアギャザーを一手って……」
クライスの心配そうに声を掛けてきた。
「フォレスティアギャザーって何だ?」
「それも知らないのかよ!」
はい、知りません。
すいません。
「フォレスティアギャザーってのは、グレイトフォレスティアの後ろに付いてくる取り巻きみたいなもんだよ。厄介なのはその量でさ……グレイトフォレスティアの規模にもよるけど、少なくとも数百体以上はいるぞ?」
「数百……は? 何? あの野郎……!」
この状態にした、神無月を睨む。
神無月はというと、俺から目をそらしている。
「では皆さん。ギャザーの方は大丈夫です。皆さんは本体の方をお願いします!」
「俺はいいって言ってな……い……」
最後の方が弱くなっているのは、ギルド会員が騒ぎ始めたからだ。
希望が生まれたとばかりに騒ぐため、声が出せなくなってしまった。
「頑張りたまえ、うん」
「恨むぞ……」
近寄ってきた神無月が軽く言う。
俺の気持ち考えろ。
こうして俺たち、いや、フュルーレのギルド会員たちは、グレイトフォレスティアの撃退任務を受けることになった。
俺だけ完全に負担が多いけどな……こうなったら断れない。
ありがとうございました。
切羽詰まってます。




