ホテル
「今日は泊まりになる」
「何故?」
車に乗り込んだ僕とシノタキ。その問に対する答えは無かったし、彼女の顔は窺えなかった。
車は緩やかに走り出し、加速した。
「何で戦うんだろうね」
車に乗り込んで何時間か経った後、突然彼女は僕に尋ねた。
「さあ……君は?」
「さて…………飛びたいから?」
飛びたいから、戦い、殺し、飛び……。
「殺したいからかもしれない」
「そう思ったことが?」
「……有ったかもしれない」
「じゃあ、なぜ戦争は無くならないか」
僕は吹き出した。
「それが分かれば苦労しない」
「誰が?」
「政治家か、設計士か、軍人か……」
「…………」
「オーバーフローしているのかもしれない」
「オーバーフロー?」
「そう。つまり、組織的な殺し合いは人口を増やしすぎないための生存本能なんだ」
「?」
「こう考えることはできないかな。もう既に人間は多すぎる」
「それで?」
「多すぎると、バランスが崩れて滅んでしまう。オーバーフローしてしまう」
「だから、人口を抑制する」
「殺しあって、数を減らす。人間はもうとっくのとうに限界を超えていて、あとは緩やかに破滅へと向かう、とも考えられるね」
「物騒」
僕はまた吹き出した。
「人を殺しているのに?」
「私たちが墜としているのは、敵機」
「相手が生きようが死のうが関係ない、と」
「そう」
「自分も例外ではない」
「そう。いつか死ぬ。死に場所も、時も、状況も選べない」
「だから飛ぶのかもしれない」
「あぁ、そこに戻るんだ」
道は緩やかに曲がる。
「このままハンドルを逆に切れば、死に場所も、時も、状況も選べる」
「そうだね」
それ以降、会話は無かった。
車は走り続け、何か食べに行く、といったのにドライブスルーで終わらせてしまった。
たまたま見えたホテルに入り、チェックインする。
「どうする?」
「何を?」
「部屋を」
「別にすれば…………」
「一部屋しかない」
「……」
「私は……」
「?」
「私は、気にならない」
結局、部屋に入ることにした。




