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第3話:実技試験

次の試験場に着くと、すでに三十人ほどが集まっていた。


その後も続々と人が増え、気づけば五十人ほどになっていた。


「……多いな」


自然と肩に力が入る。


少しの静寂のあと――


「全員揃ったみたいね」


試験官の女性が口を開いた。


落ち着いた声だが、不思議と場の空気が締まる。


「ここからが本番です。気を引き締めてくださいね」


柔らかな口調とは裏腹に、緊張感が一気に高まった。


そして――


「これから皆さんには、一対一の“殺し合い”をしてもらいます」


一瞬、意味が理解できなかった。


「……は?」


ざわめきが広がる。

当然だ。


「安心してください」


試験官は軽く手を上げた。


「この結界の中で行います」


詠唱が響く。


――神聖なる戦いに加護を(フロンティア)


次の瞬間、巨大な結界が展開された。


半径五十メートルほどの空間が、淡い光に包まれる。


「この結界内では、死亡しても外に出れば元に戻ります」


にこやかに言う。



「怪我も同様です。ですので――安心して“殺されて”くださいね」


(いや無理だろ)

思わず心の中で突っ込む。


死ぬ痛みは味わうってことだろ、それ。


周囲の顔も引きつっている。


「では、最初に挑戦する方はいますか?」


沈黙。


誰も動かない。


当然だ。


ここで名乗り出るのは、相当な自信があるか――ただの無謀か。


(まあ様子見だよな……)



そう思った、その時。



「この人がいいと思います」


背後から声がした。


「……は?」


振り返る。


一人の男が、俺を指差していた。

「さっき序列一位になるって言ってたので」


ざわめきが走る。


(言ってねえよ!)



確かに似たようなことは言ったが、だいぶ盛られている。


「なるほど」


試験官はあっさり頷いた。


「では、あなた。前へ」


「ちょ、待てよ」


完全に巻き込まれた。


だが――


(……いいか)

ここで逃げる理由もない。

むしろ都合がいい。


「未来」

ふと、手に温もりが触れた。

見ると、ティナが俺の手を握っていた。


「頑張って」



小さな声。


だが、妙に落ち着く。


「……おう」


俺は頷き、前に出た。



________________________________________


結界の前に立つ。


心臓の音がやけに大きく聞こえる。


(……緊張してるな)


試験官がこちらを見る。


「名前は?」


「春風未来です」



一つ、確認しておく。


「刀は使っていいですか」


「俺の得物なんで」


「ええ、問題ありません。杖と同じ扱いです」


よし。


最悪の事態は避けられた。


(素手で魔術師と戦うとか、さすがに無理だ)

「では――対戦相手ですが」


試験官が言いかけた、その時。


「あーーーーーー!!」


甲高い声が響いた。


嫌な予感しかしない。


「さっきの変態じゃない!」


(やっぱりお前か)


振り返ると、金髪の少女――アリスがこちらに向かってきていた。


そのまま俺の前に立ち、指を突きつける。


「予定変更よ」


高らかに宣言する。


「私がこの人と戦うわ」


ざわめきが再び広がる。


「こんな変態を入学させるわけにはいかないもの」


おい。


「私が負けたら……好きにしていいわ」


さらにとんでもないことを言い出した。


「その方が本気を出せるでしょう?」


(いや出さねえよ)


周囲が妙な盛り上がりを見せる。


「マジかよ……」

「うらやましい……」

「どんな変態なんだ……」


(だから違うっての!)

誤解がどんどん悪化していく。


「……まあいい」


ため息をつく。


「俺は変態じゃないけどな」


一応否定しておく。


「でも戦うなら本気でやる」


「条件なんてなくてもな」


そう言って、結界の中へ入った。


アリスも続く。


「ふん。強がりね」


じっとこちらを見る。


「さっきも私の身体、見てたくせに」


「見てねえよ!」


「間接的に味見してたじゃない」


「意味が分からん!」

なんなんだこいつ。

頭が痛くなってきた。



だが――

「名前を聞いてなかったわね」

急に口調が変わる。


「春風未来だ」


「……サクラミナミ国ね」


少しだけ表情が緩む。


「私はアリス=クインフォード。フィニジアリスト国の人間よ」


ざわめき。


「クインフォード家だと……?」


「名門じゃねえか……」

(なるほど、エリートか)


雰囲気で分かる。


さっきの炎も、ただの魔術じゃなかった。


(油断はできないな)



むしろ――


(本気でいかないと死ぬ)


「準備はいいかしら?」

「ああ」


短く答える。


静寂。


空気が張り詰める。



結界の外からの視線が突き刺さる。


生き返るとはいえ、“死ぬ戦い”だ。


緊張が極限まで高まる。


その時――


視界の端に、ティナが見えた。

じっとこちらを見ている。


感情の読めない目で。


(……なんだ、その顔)


一瞬だけ違和感がよぎる。



だが――


「では」

試験官の声が響く。



「――始め!」


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