幸せのパンケーキ食べたい
せっかくの初デートの約束が、絶望のお別れになりそうな凰太だったが、
サエは待ち合わせの場所に車で到着。
一気にテンションが上がる凰太であった。
◯登場人物
凰太
39歳
ゲーマー。兵庫県神戸市に住む。
さーちゃん、サエ
42歳 バツイチ子持ち。
香川県に住む。元は神戸市に住んでいたらしい。
「おーくんやんね? 全然おじさん臭くないやん」
さーちゃんの声だった。
「さーちゃん……可愛い」
俺は、それを言うのがやっとだった。というか、さーちゃんの姿はなんだか、オシャレっぽい? なんだかふにゃふにゃのスカートに上は半袖の白いブラウスと上から薄手のジャケットを羽織っていた。
「可愛いてなんなん。もっと具体的に褒めてよ〜」
そりゃそうだ。なんというか、目がしぱしぱしていた。俺の語彙力どうにかしてくれ。
「あ。とりあえずパンケーキのお店の近くに行く? ちょい寒くて……コンビニがあったらホットコーヒーが飲みたいんやけど」
北淡インターから「幸せのパンケーキ」の店舗までは車で十分もかからないくらいだった。その途中にコンビニを見つけ、予約までまだ時間があったので、そこで待つことにした。
「あ……あまり聞くのもなんなんやけど、なんで来てくれたん?」
「んー……色々迷ったんやけど。やっぱり私も会いたかったし」
え。それは喜んでもいいんだろうか。コンビニでホットコーヒーだけを買う。あとでパンケーキも食べることだしな。
「仕事のほうは急に大丈夫になったん?」
さーちゃんに無理をさせてないか心配だったので、俺は聞いてみる。
「あ、ごめん……昨日の夜中の時点でもう段取りは付いてたんよ……でも、それよりも私の気持ちがどうしたらいいか、迷ってて。ごめんね、連絡ちゃんとしなくて」
あ、そうだったのか……でも全然俺は大丈夫。来てくれただけで嬉しい。
「ううん。こうやって来てくれたことが嬉しいから、いいんやで。あ、少しお願いがあるんやけど……」
「ん? どうしたん?」
「手を……少し触ってもいいかな?」
中学生かよ。と、俺は自分でも思ったが、ちゃんと俺は聞いてみた。
「ちょっと。なんか改めて言われたら余計に照れるんやけど……」
さーちゃんはうつむく。今は車の中で隣り合わせで座っている。俺は助手席から手を差し出した。
「じゃあ、連絡をちゃんと返してくれなかったお詫びってことやったらいい? 仲直りしよう」
さーちゃんはうつむきながら、ゆっくりと手を差し出した。
そっと触れたさーちゃんの手は、とても温かかった。
「わっ。おーくんの手冷たいね! びっくりした」
「ご、ごめん。朝方はちょっと風が寒くて冷えてたんかもやわ」
さーちゃんは顔をうつむいたままだが、少し笑っていた。
「あ、そろそろ向かう? 運転よかったら変わろっか?」
「あ、うん。いいん? してくれたら嬉しいかも」
俺は今は自家用車は持ってないが、元々営業仕事の時は普通に運転はしていたので、ペーパードライバーではない。
コンビニから「幸せのパンケーキ」まで海沿いの道を走っていく。
「パンケーキ楽しみやね〜!」
楽しみにしてくれたんだ。それならよかった。昨日の夜は凄く悲しかった……。
やっぱ、初めて会うことだし、緊張するよな。俺もまだなんかふわふわしてるもん。何を話したらいいかも迷ってしまう。電話やメールの時は普通に話せたのに。
「おーくん、背高いね。あと凄くシュッとしてる」
そ、そうなのかな。シュッとしてる……ってなんだ。
「あ、ありがとう。さーちゃんは背ちいさくて可愛らしいやんね。なんていうか目もしぱしぱしてる」
「えっ? しぱしぱって何?」
「なんかパッチリしてるって言うか……」
「あっ、これマツエクしてるの。まつげエクステっていうやつ」
なんか聞いたことはあるけど、そういう女の人と絡むことがないから、お目にかかるのは初めてである。
「マツエクって言うんやね。すごく可愛いで」
「ありがと。でも、夏になったら汗をかいちゃうから、もう少ししたら付けれなくなっちゃうねん」
さーちゃんは、なんだかオシャレさんなんだな。そんな話をしてる間に、パンケーキのお店に着いた。
オープンすぐの時間だからか、駐車場も割と空いていた。ただ、入り口のほうはまぁまぁ、いや、結構並んでいた。
「わっ、オープンすぐなのに、もうすでに並んでるんだ!! 朝から並んでる人もいたのかな?」
「え〜、どうなんやろ。まぁでも予約をしてるから、それは大丈夫やと思う」
◇ ◇ ◇
予約をバッチリしていた俺達はスムーズに店に入ることができた。入り口に設置されているタッチパネルで先に注文をしてから、番号札を持って座席に着くようなスタイルらしい。
さーちゃんは定番の、ノーマルな「幸せのパンケーキ」を、俺は「バナナホイップパンケーキチョコソース添え」にした。長い名前だな。
あと飲みものも色々あったが、先ほどホットコーヒーを飲んだので、少し冷たいものを飲みたいなと言うことで「島のシトラスソルティースカッシュ」と「自家製ジンジャーエール」を頼んだ。俺がジンジャーエールだ。
「おーくん、見てみて! 幸せの階段! 幸せのブランコ!」
そんな幸せが付く名前ばっかりだったっけ……俺はうろ覚えだったが、店舗のテラス席から海沿いの綺麗な景色の奥に、確かにブランコと、海に向かって続く白い階段があった。
「凄いね〜! なんかほんまに島のリゾートに来たみたいな気分!」
嬉しそうにはしゃぐさーちゃんを見て、俺はほんとによかったと思った。俺も嬉しいな。
「パンケーキと飲み物を頂いてから、それから階段とかも見に行ってみよっか」
「うんうん、そうする〜!」
パンケーキと飲み物を店員さんが運んでくれた。
「わぁっ! 美味しそう〜!!」
なんだか俺の知っているホットケーキとはまた違うオシャレなカタチだった。
緊張しながらも、パンケーキのお店に向かう二人。
予約をしていたのでスムーズに店にも入れ、
二人分のパンケーキと飲み物を注文する。
めちゃくちゃ美味しそうなパンケーキだ。




