さーちゃんが喜んでくれるなら
サエの、パンケーキ食べたいのひと言で、
淡路島の「幸せのパンケーキ」情報を必死で探す凰太。
さて、どうなることやら……?
◯登場人物
凰太
39歳
ゲーマー。兵庫県神戸市に住む。
さーちゃん、サエ
42歳 バツイチ子持ち。
香川県に住む。元は神戸市に住んでいたらしい。
『幸せのパンケーキが食べたい』
そのさーちゃんのひと言で、俺は淡路島の「幸せのパンケーキ」の情報を下調べすることにした。
淡路島のどの場所にあるか。営業時間や、予約方法は。そして、どんなメニューがあるか。
ここで思ったのは、デートの約束も取り付けていないのに、先に情報収集っておかしくない? と思うだろう。
よーく聞いてほしい。約束はもちろんまだしていない。でもな、約束ができた時に、すぐに行動できたほうがカッコいいだろ。さーちゃんが見直してくれるかもしれないじゃないか。我ながら無駄になるかもしれないとも思いながら、それでも全ては、さーちゃんに喜んでもらうために。
というか、パンケーキが好きなんて、さーちゃんも女の子っぽいよな。
そうそう、幸せのパンケーキについて調べてみると、一応全国に何店舗かはあるパンケーキ屋さんだった。俺の住んでいる神戸、三宮にもあった。
ただ、淡路島が特別な理由。それはパンケーキ自体ではなく、そこにしかない映えスポットがあったのだ。簡単に説明すると、
◯綺麗な海が目の前で見えるテラス席
◯海岸沿いにそびえる階段
◯海を眺めながらこぐブランコ
◯幸せの鐘
◯幸せの椅子
なんでも幸せを付ければいいってもんじゃねぇぞ、と思いながら調べていたが、その幸せのパンケーキの淡路島リゾートという店舗には、そういうお食事を楽しみながら、記念撮影もできるような場所があった。
あと、予約はなかなか取りにくいのだが、時間帯によってと、平日は割とまだ取れる日もある。一週間前くらいから予約可能だったので、俺は事前にメール登録を先にしておいた。
行けるとなったらすぐに予約をするためだ。
あと一つ問題があった。俺には車がなかった。
え、淡路島って車ないと行けないよな? レンタカー?
そういえば、前にさーちゃんと話してる時に、神戸の親戚のところへたまに行くときがあって、その時は車で子供と一緒に行くのだという。ということは、さーちゃんは香川からでも、淡路島には来れる。
まぁ、そんなこんなで色々調べていた時に、こんなセリフがさーちゃんから飛び出す。
『来週の月曜日、おーくん休みって言ってたやんね?』
「うんうん、それがどうしたん?」
『私、元々仕事やったんやけど、休みになった』
「あ、そうなんやね。よかったやん。ゆっくり休むんやで」
『うん』
こういうやり取りがあった。そして、そのやり取りの翌日か、翌々日だったかな。
『来週の月曜日、休みになったんやけど、何もないからヒマだなー』
「あ、そうなんやね。子供とどっか行ったり買い物とか?」
『子供は学校やわ』
そう。この時は俺は気づけていなかった。あまりにも普段さーちゃんがつれない態度だったのもあって、まさかさーちゃんから、それとなく誘っているのだと言うことに、気づけていなかったのだ。
そして、その来週の月曜日が四日後に迫ったくらいだったと思う、平日の夜。
『来週の月曜日、おーくんは何してるん?』
「ん? 俺は特に何もないで〜、いつものようにゲームしてるだけ。あっ!!」
『どうしたの?おーくん』
「あっ! 月曜日デートしよう!! 午前中から行ける?」
その時にようやく、デートの誘いをした俺。
『んー、どうしよっかなー。病院も行きたいしな』
病院の話なんて聞いてないぞ。
「少しだけ待っててくれる? あ、かけ直すわ」
俺は、すでに準備済みの「幸せのパンケーキ」の予約サイトに繋ぎ、翌週月曜日のオープンすぐくらいのちょっと早めの時間ではあったが、テラス席の予約を取った。そして、再度電話をかける。
「さーちゃん、来週の月曜日『幸せのパンケーキ』食べに行こう! 予約取れたで」
『えっ!! すごい! なんでなんで?』
予想通りの反応に、俺は嬉しくなった。だって前から準備してたもんね。
「さーちゃん行きたいって言ってたやろ。前からちゃんと調べてたんやで。時間が十時過ぎくらいやから、少し微妙なんやけど……大丈夫?」
『うんうん、休みやし子供見送ったら何もないから行けるよ』
よっしゃ! さーちゃんと初デートの約束ができたぞ〜! 俺は有頂天だった。
ただ、有頂天になると同時に、またひとつ不安になることもあった。
俺……全然カッコよくないから、会ったらさーちゃんに嫌われないかな……一応、接客業なのもあってある程度の身だしなみについては、普段もしているほうだ。
人付き合いが苦手ではあるけども、全く喋れないわけではない。
ただ、顔というか、見た目はどうしようもないからな。何の特徴もない顔。二重でもなく、どちらかというとタレ目がちのぼんやりした目。まぁ背は低くはないけども、高くもないという感じ。結構前に営業の仕事をしていたこともあって、その時に何度か言われたのは「お前、やる気あんのか」だった。
決して、ダラダラしているわけではないんだが、声も大きくなくて、取引先にお世辞というか、そういうおべんちゃらも言えない性格だから、どうしても営業向きではない。まぁオタクゲーマーだから仕方ないんだよ。
でも……でも……せっかく約束できたデートだから。自信はないんだけど、生のさーちゃんに会いたい。できれば……さーちゃんに触れたい。
◇ ◇ ◇
そして、デートの前日の夜。
『明日、会うの無理かも』
「えっ!! なんで!!?」
サエのそれとなくの誘いのおかげで
念願のデートの約束を取り付けることができた凰太。
だが……だが……前日の夜に急に無理と言い出す彼女。
どうなってしまうのか?




