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さぬき恋物語  作者: くろくまくん
第六章 さぬき恋物語

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実家帰省と父親の見舞い

サエとチサと三人で初詣に行った時に、母親からの電話で父親の入院を知る凰太。


あまり気は乗らなかったが、大阪の実家帰省に父親の見舞いがてら行くことにした。



◯登場人物

凰太おうた

39歳

ゲーマー。兵庫県神戸市に住む。


凰太の父親

70歳

無職。大阪北摂に住む。お酒が好き。


凰太の母親

65歳

専業主婦。凰太の父と2人暮らし。趣味でパソコン教室に通っている。

 さーちゃんとチサちゃんと年明けに初詣はつもうでに行った日は、翌日から俺が仕事だったのでその日は夕方くらいに神戸こうべに帰ることにした。


「お父さん、またどんな様子やったか教えてね。お大事にしてね」


「うんうん、ありがとう。たぶんそんな大したことないと思うんやけどね。今回もありがとうね」


 帰りの高速バスに乗り込み、俺は窓際の席に座った。さーちゃんは俺が座っているバスの窓に背伸びして手を触れた。



◇ ◇ ◇



 帰りのバスの中で母親にメールをしたら、父親は蜂窩織炎ほうかしきえんという、傷口から菌が入り込んで腫れたりしてくる病気らしく、足がパンパンにれて歩けないくらいになってしまったようだった。


 俺が記憶している限りでは親が入院するのを聞いたのは初めてだったので、そういうこともあるんだなと感じた。


 実家に行く用事もなく、俺が行って助けるというほどのことでもなかったんだが、なんとなく年明けの次の休みに、大阪の実家に見舞いがてらいくことにした。


『思ってたより症状が治りにくいみたいで、二週間くらいかかるみたいやねん』


 と、母親。


「あ、そうなんやな。なんか荷物とか持っていくのとか、見舞いのついでに手伝おか?」


 まぁこんな感じの当たり障りのない会話だが、俺はなんとなく母親が苦手だった。なんとなく、ってなんなんだという感じだが、なんとなくはなんとなくなのだ。


 というわけで、仕事の休みの一日を使って、日帰りで久しぶりの実家帰省……といっても片道一時間もかからない道のりなんだけど。俺の実家は大阪の北摂ほくせつの方になる。実家のマンションは駅から歩いてたと少し遠くて、バスに乗って行く。


「久しぶりやんね、おーたくん元気にしてた?」


 久しぶりに会った母親のひと言はそれだった。あ、そうそう俺の親は俺のことを「おーたくん」とくん付けで呼ぶ。母親だけでなく、父親もだ。理由は知らない。


「まぁ、ぼちぼちかな。お父さん大丈夫なん? まぁ大丈夫ちゃうから入院してるんやろけど」


「足がだいぶ腫れてて痛そうやね……あまり体悪くなることなかったから、ちょっと落ち込んでるわ」


 父親も落ち込んでいるらしい。


「そうなんやね」


 実家に着いたのがお昼前だったので、家でお昼ご飯を食べてから病院に行くことになった。お昼ご飯は温かい肉うどんと出来合いの稲荷寿司いなりずしだった。うどんを食べると、さーちゃんの顔が浮かんできた。


「お父さんとはたまに飲みにいったりしてるんやんね? 楽しそうやんね」


「うん……一年に一回行くかいかんかくらいやけど。なんかお父さん言ってた?」


 母親は父親のことをお父さんと呼ぶ。


「うーん……帰ってきたらだいたい酔っ払ってるから何言ってるかわからないんよね」


「そうか……」


 あとは黙々と肉うどんと稲荷寿司をいただく。


「ごちそうさま、肉うどん美味しかったわ」


 母親が嬉しそうな顔をした。


「それやったらよかったわ。おーたくん小さい頃からご飯は良く食べてくれるんやけど、美味しいか美味しくないか、感想ってあまり言わんかったんよね。たぶん覚えてないと思うんやけど」


 え。そうだったかな……自分のことながらあまり記憶にない。


「そうなんや。ご飯は普通に美味しかったし、ちゃんと食べてたやろ。あ、病院の面会の時間って決まってたりするんかな?」


「あまり詳しく聞いてないんやけど……夕方くらいまではいけるんちゃうかな?」


 というわけで、父親の着替えとか身の回りのもの、父がよく読む文庫本などをまとめて、病院に持っていくことにした。病院へ向かう市バスの中で俺は母親に話した。


「そういえば……彼女が出来たで。三つ上で……子供がいる人なんやけどね」


 母親は少し驚いた顔をした。


「え、そうなんや! おーたくんから彼女の話なんてあまり聞いたことないような気がするやんね」


「まぁ……そやな。介護の仕事してる人なんやけどね。介護の仕事って大変なんやな、たまに聞くんやけど」


 返事がなかったので、ふと横を見ると、母親はウトウトしていた。満腹とバスの揺れで眠くなったのかな。十年とはいかないけど、八年ぶりくらいに見た母親は随分歳をとったように感じた。前は確か五十代、今は六十五歳くらいのはずなので、そりゃ歳もとるよな。


 バスを降りてすぐ目の前が病院だった。病棟のナースステーションで面会のことを告げ、病室に入る。父親は病室のベッドでちょこんと寝転んでいた。


「おーたくん、来てくれてありがとうね」


 さーちゃんと知り合ってからは、父親とも飲みに行ってなかったので、母親よりは久しぶりではないが一年以上ぶりくらいかな。


「うん、久しぶり。足は痛いん?」


「あぁ、まだずっと痛いから歩くの辛いなぁ。でもまぁ死ぬほどじゃないからマシなんかもやわ」


 まぁ死ぬほど痛かったらこんなとこで静かに寝てないよな。


「お父さん、おーたくん彼女出来たんやって!」


 第一声がそれかい。こういうところが俺はあまり好きではない。


「そうなんやね〜。彼女出来たからお父さんの飲みの誘いもあまり聞いてくれなくなったんやな」


 これは誤解をしないように言っておくと、元々さーちゃんとの約束とか、香川に行く日にちが決まっている時に、父親から誘いがあることが多いので、その日は用事があると断っただけのことだ。何もないのに断ったわけではない。


「タイミングなかなか合わへんからちゃうかな。まぁ今の体調良くなって、落ち着いたら行ったらいいやん」


「まぁそやなぁ……その彼女はお酒は飲む人なんかいな?」


 これは一緒に飲みに行かないか、ということだと思う。


「いや、彼女は全然飲まないし、子供もおるし、住んでるのが香川やから気軽にはこっちこれへんわ」


 なんだか自分で話していて、さーちゃんのことをこうやって説明しているのが、少し照れくさかったが、なんだか誇らしくもあった。



久しぶりの実家帰省で、


多少居心地の悪さもあったが、それなりに自分のことやサエのことも話せていることに、


自分自身驚いていた凰太であった。

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― 新着の感想 ―
おー君の両親が出てきましたね。 母親もおー君と呼んでいるんですね。 (*^。^*) 可愛いですね。 彼女が子供がいるって知っても、さほど驚かない。 それはおー君が既に親元から離れて暮らしてるせいもある…
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