一年の終わりはご馳走で締めくくる
仕事上がりに、そのまま香川へ行く凰太。
サエとチサに迎えられ、そのまま大晦日と元日を過ごすことにした。
◯登場人物
凰太
39歳
ゲーマー。兵庫県神戸市に住む。
沙絵、さーちゃん
42歳
香川県に住む。元は神戸市に住んでいたらしい。
バツイチで、中三の娘がひとりいる。
千沙
15歳
沙絵の娘。
「唐揚げうまっ!! やっぱさーちゃんの料理はサイコーやわ〜」
家に着いて、お風呂に入ってさっそく唐揚げをいただいた。なんかその時によって唐揚げのレシピを変えるみたいなんだけども、前に聞いたのはなんだったかな、ニンニク、ショウガ、醤油、マヨネーズ、だったかな。んで、片栗粉と小麦粉を半分ずつくらい混ぜた粉をまぶして揚げてるらしい。
最後にちょこっと火加減を調整すると言っていたが、俺はよくわからないけど、なんかプロの味って思っている。
「チサちゃんも毎日こんな美味しい料理ばっかり食べてたら、外で食べれなくなるんちゃう?」
俺はチサちゃんに話をふる。
「え、おーたさん来る時、ママめちゃくちゃ張り切ってご飯作ってるけど、普段は質素だよ」
そうらしい。なんだか俺が来る時はそうやって特別って思ってくれてるのは嬉しいな。たまたま聞いたことだけど、そういう風に気遣ってくれてるのは凄く嬉しいと思う。
「あ、明日は買い物に一緒に行こか? お正月っていつもどうしてるん? お節とかは作るんやったっけ?」
「んー、実は今までそんなに正月らしいことってしたことないんよね。お餅食べるくらいかな? あ、こっちはね、あんこのお餅をお雑煮に入れるんだよ」
えっ、あんこ餅を雑煮……それはダメだろ……
「それって大丈夫なん……まぁ試しに食べてみてもええけど。あ、俺、実家にいる時は、テリーヌって知ってる? 洋風のカマボコみたいなんがあるんやけど、それとか、ハムとか、焼豚とか、好きなものを買って、お重に詰めて、正月は過ごしてたな。実家を出てからはもちろん一人ではしないけども」
「わっ、なんかお洒落な感じやんね、それやりたいかも。じゃあお餅と、その洋風お節に詰めるやつと、お雑煮の材料とかも買おっか」
香川に着いたのもだいぶ遅めだったので、晩ごはんを食べたあとは、身体も温まっていたので、眠くなってきたので、早めに寝ることにした。
◇ ◇ ◇
大晦日の朝。
「おはよ〜。めちゃくちゃぐっすり寝れたわ」
「うんうん、俺も美味しいご飯食べて、栄養もたっぷりとれて、寝れたで」
午前中のうちにチサちゃんと三人で食材の買い物に行くことにした。ここ最近は年末年始でもスーパーはずっと開いている。だからまとめ買いとかもあまりしなくていいんだが、一応いつものさーちゃんの買い物の仕方にならい、およそ一週間ぶんくらいの買い物をした。
お昼ご飯は出先で、チサちゃんのリクエストもあり、ドライブスルーでハンバーガーとポテトにした。
「ホントにチサちゃん、ポテト好きやんね」
「そうやねん。ポテトサラダも好きやねん。じゃがいもが好きなんかな〜」
家に帰ってから、少しお昼寝をして。それからゆっくりと晩ごはんとお節とお雑煮の準備をする。
「わっ! テリーヌって私初めて見たんやけど、凄いお洒落そうやんね」
そうなのだ。なんだかオードブルに出てきそうな感じだけど、味が特別美味しいというより、食卓を彩るという感じで好きなのかも。テリーヌは四種類だけ買ったが「海老&チーズ」、「サラミ&チーズ」、「サーモン&アボカド」、「蟹&パルメザンチーズ」というやつにした。あとは普段は買わないような少しお高めのハムやら、焼豚やらを切り、レタスやプチトマトと合わせて重箱に盛り付ける。
「なんか注文するお節みたいな感じでいいね〜! おーくんってお洒落やんね」
俺自身は全然オシャレではないんだけど、そうやってさーちゃんは色々褒めてくれる。俺がお節の盛り付けをしてる間、さーちゃんはお雑煮と、焼き魚をしてくれた。あと先ほど言っていたチサちゃん好物のポテトサラダ。
お雑煮はお雑煮用の細い大根と、同じく細くて赤い金時人参とカマボコだけのシンプルな具に、白味噌を入れる。
あと、ホントはお正月で食べるものだけども、俺が二日から仕事なこともあり、大晦日の晩からお節と雑煮はいただくことにした。
普段はあまりお酒飲まないんだけども、せっかくの一緒に過ごす年末年始なので、ビールとチューハイを一本ずつ買った。
「いただきまーす。かんぱーい!」
「んっ、このポテトサラダうまっ! なんかじゃがいもとゆで卵も入ってる? あと、なんか少しだけピリッとしてるような」
「うんうん、じゃがいもとゆで卵も潰したやつ入れてるよ。あとマヨネーズの他に明太子を混ぜるとチサが喜ぶから入れてる。アクセントがあっていいでしょ?」
さーちゃんさすがのひと言だ。シンプルな料理なんだけども、ひと手間かけているのがわかる。
あと、さっき話していた、あんこ餅のお雑煮。香川ではあんもち雑煮と言って、それが普通らしいのだ。俺は恐る恐るいただいたんだけど……
「えっ! めちゃくちゃ美味しいんやけど! 絶対アンコがしつこくなると思ってたのに、全然しつこくないし、むしろ白味噌と合ってるやんね」
「でしょ? 私も初めこれは絶対あかんって思ったんやけど、食べて考え変わったもん」
ポテトサラダと、お節と、お雑煮と、焼き魚。ちょこちょこ食べていると、すぐにお腹いっぱいになった。ちなみにチサちゃんはご飯を食べてお腹いっぱいになると、もう早めに寝てしまう。
しばらくゆっくりとしていたが、さーちゃんが俺に言う。
「ねぇねぇ。ちょっと夜出かけよ?」
「え、どうしたん? 明日も休みやから全然大丈夫やけど、前みたいに高松の方に行くん?」
「ううん……年越しの時に、できたらくっつきたいなーと思って……」
俺はその瞬間にお酒を飲んでしまったことを後悔した。だいたい俺がこっちに来ている時は、俺が運転を担当しているからだ。でも、さーちゃんはそれも分かってくれたようだ。
「あ、大丈夫やで。私お酒飲んでないから運転するよ。向こうでお腹空いてもいいようにお節を詰めていこっか」
俺……こんな幸せでいいのかな。
年末年始も好きな人と過ごすことが出来て。
こうやって、愛情を素直に示してくれる。
一年の終わりに、こうやって過ごすのも、いいもんだな。
サエ特製ポテトサラダに、焼き魚、色々好きなものお節に、あんもち雑煮。
ご馳走をたくさんいただいたあとに、
一番のメイン……あ、これは言わないでおく。
サエと年越しデートに出発する凰太であった。




