明石海峡大橋と大鳴門橋
クリスマスを三人で過ごしたあと、年末年始をどうするかという話になる。
サエは割と休みが長いが、凰太は二日くらいしか休みがないが……
◯登場人物
凰太
39歳
ゲーマー。兵庫県神戸市に住む。
沙絵、さーちゃん
42歳
香川県に住む。元は神戸市に住んでいたらしい。
バツイチで、中三の娘がひとりいる。
千沙
15歳
沙絵の娘。
俺と、さーちゃんと、チサちゃんの三人で過ごせたクリスマスイヴ。楽しかったし、美味しかったな。
そして、クリスマスが来たっていうことは、そうなのだ。そろそろ一年が終わるということだ。
これは事前に聞いてたんだけど、さーちゃんの職場は年末年始のお休みは一週間くらいある。それに対して俺の職場は年末年始の休みがほとんどない。というか元日の一日だけは定休があるが、あとはシフト制で二日から仕事だ。
「う〜ん、大晦日と元日だけやけども、そっちに行こうかな」
『わかったよ〜、いつも来てもらってありがとうね。嬉しいよ』
そうやって、いつも御礼を言ってくれる。それだけで嬉しいし、俺も会いたいから行くんだから、全然構わないのだ。
「あ、ホントはもっとゆっくりできたらと思うけども、30日の仕事終わった夜にそのまま舞子から高速バスに乗って、そっち行こかな。ちょっと到着は夜遅めになってしまうかもやけど。そしたら大晦日の午前中にバス乗ってお昼にそっちに着くよりも、少しでも長くいれるやろ」
というわけで、大晦日の前日の仕事終わりに、そのまま会いに行くことになった。
◇ ◇ ◇
さーちゃんに会える日は、朝からウキウキしているので、仕事も全然苦ではない。むしろ笑顔で一日過ごしている。
「おつかれさまでーす」
定時でサクッと仕事を上がり、市バスでJR舞子駅まで向かう。高速バスの便の兼ね合いもあって、さーちゃんの住む志度に着くのは22時過ぎくらいになってしまうが、早く会えるのが嬉しい。
初めて会った淡路島デートが五月で、それから何回、四国に来ただろう。香川に来ただろう。
いつものように俺は、舞子から高速バスに乗って、明石海峡大橋を渡り、淡路島を通過して、大鳴門橋を渡って、四国に入る。
当たり前のように渡っている明石大橋も、これは少し前に調べたんだけど、1998年に出来たということは、俺が小さい頃には無かったのだ。大鳴門橋はもっと前の1985年に完成している。これは俺がまだ赤ちゃんの頃だなきっと。
橋を架けるのって、俺には想像も出来ないくらいの人数と、費用と、長い年月がかかったんだと思う。たくさんの人の夢と努力が詰まっている。
この二つの大きな橋がなければ、俺がさーちゃんのところに辿り着くには、二時間どころでなく、もっとかかっていたに違いない。
今更だけど、橋を作ってくれた人達、作ろうと思ってくれた人達に感謝しなければ。
と、感慨に浸っている間に、大鳴門橋を渡り徳島県に入る。そういえば高速バスのルートをあまり話していなかったかもしれない。
俺が乗る場所は明石大橋のすぐ近くの高速舞子というバス停だ。高速道路の途中にバス停があって、すぐに明石大橋がある。
そこから、淡路島の高速道路をぐいぐいと走り、途中に一度だけトイレ休憩にパーキングエリアに停まる。
そして、大鳴門橋を渡り、徳島県に入ったあと、鳴門西のバス停から、高速引田、高速大内、高速津田、そして俺の降りる高速志度まで行く。高速バスはルートによってもちろん行き先が変わるが、俺の乗っているバスの終着は確か高松駅のはずだ。
だいたい鳴門西のバス停を通過してから30分ほどで高速志度に着くので、そのあたりでさーちゃんにメールを送る。
「今、鳴門西を通過したでー」
『はよ来てほしい』
「今、高速引田やでー」
『もっと早く』
「急ぎすぎたらバス事故ってまうで」
『それはだめ』
だいたいいつもそんなやり取りをしながら、いつのまにか到着する。さーちゃんが仕事終わっている時は、バス乗り場まで迎えに来てくれる。
「もうすぐ着くでー」
『私もバス停の駐車場に着いたよ』
バスから降りて、階段で下の道路まで降りて、高速バス用の駐車場まで行く。
「さーちゃん、久しぶり。一週間も経ってないかもやけど」
「おーくん、仕事おつかれさま。仕事のあとで来てくれてありがとね」
車に乗ってすぐに、さーちゃんにキスをする。
「会いたかったで」
「私も」
チサちゃんが居てる目の前ではイチャイチャできないから、今のうちにする。
「おーくん、今日は唐揚げ作ったよ。チサはもう先に食べちゃってるけど」
「わっ、唐揚げありがとう。自分では揚げ物とかはなかなかせーへんから嬉しいわ」
俺とさーちゃんは、志度の自宅に向かう。
出会ってから初めての年末年始だ。
兵庫から香川までの高速バスの道。
それは当たり前にあるわけではなく、大勢の人の努力が作り上げた、
夢のたくさん詰まった橋のおかげなのだ。
さて、年末年始の休暇を楽しむぞ。




