クリスマスデートはどこに行こう?
もう少しでクリスマス、
そして一年が終わる。
凰太にとってこの一年は、今までの一年と随分違っていた。
サエがいない一年か、サエがいる一年か、だ。
◯登場人物
凰太
39歳
ゲーマー。兵庫県神戸市に住む。
沙絵、さーちゃん
42歳
香川県に住む。元は神戸市に住んでいたらしい。
バツイチで、中三の娘がひとりいる。
さーちゃんと知り合ってから一年以上が経つ。
実際にリアルで会ってからだと八か月くらいかな。
初めはオンラインゲームでたまたま知り合っただけだった。そして、ゲーム上で長く知り合ったことで通話するようになって。
そして、さーちゃんの声を聞いて俺は恋に落ちる。
彼女自身が恋愛に消極的になっていたこともあったが、俺は、俺のできる限りの方法で、彼女に笑ってもらおうと努力した。楽しんでもらおうと思った。
彼女の男の影だったり、前に付き合っていたゲームの知り合いだったり、様々なヤキモチもあったが、お互いに気持ちを素直に言い合うことで、少しずつわだかまりも消していくことができていったように思う。
前にも一度話したかもしれないが、キッカケは大したことのない、ただのオンラインゲームかもしれない。
でも、そんなちょっとしたキッカケで出会った相手が、生涯想い合える人になることもあるかもしれない。
俺は平凡なサラリーマン。両親は特別仲良くしているわけではないが、まだ生きているし、たまにやりとりもする。
それに対して、さーちゃんは中三の娘が一人。両親は二人とも亡くなっており、唯一の肉親である姉も神戸には住んでいるが、疎遠である。
お互いの家庭環境も違うし、住んでいるところも、仕事も違う。
でも、お互いを想い合う気持ちがあれば、きっとこれからも上手くいくと思っている。
すれ違いもきっとあるし、言い合いになることもあるかもしれない。でも、その都度、素直な気持ちになって、きちんと話し合うことができれば。相手の気持ちを考えて、思いやりを示し合うことができれば。
『あっ、おーくんおーくん! クリスマスなんやけどね。ここ行ってみたいんやけど! まんのう公園!』
クリスマスまであと十日くらいのある日の電話で、さーちゃんが言った。まんのう公園?? なんかすごい名前の公園だな。
「お、クリスマスな、まんのう公園って……なに? てか年末やからまぁまぁ寒いと思うんやけど……さーちゃん寒さ大丈夫??」
俺も暑さ寒さにはそんなに強いほうではないが、さーちゃんは更に俺より弱い。なのに訪問介護で外を走り回ったり、日々の激務でくたくたの時もあるのだ。ホントに凄いと思うし、実は俺はあまり無理をしてほしくないと思っている。
まぁそんなわけで屋外へのデートは極端な気温の時はなるべく控えるようにしているのだ。なぜなら暑かったり寒かったりでデートどころじゃ無くなってしまう、というのも理由のひとつ。
『うん、うん。大丈夫! 冬はいっぱい着込むから』
「まぁそれやったらいいんやけど……あ、まんのう公園てとこでなんかあんの?」
『あ、テレビのニュースでやってたんやけどね、イルミネーションがあるみたい! 私、綺麗なイルミネーション見に行きたい』
イルミネーション!! 街なかで歩いているとたまに見かけることはあっても、イルミネーションをどこどこに見に行くということ自体をしたことが俺はなかった。
神戸の場合ルミナリエが有名だが、まず人が多い。俺がオタクゲーマーだからというのは別にして、人混みがしんどい人はきっと多いはず。ぶつからないように避けたり、なるべく端っこに寄ったり、そういう気疲れもあって、人が多い時点で俺は楽しめなくなってしまう。
「イルミネーションか……俺あまり行ったことないんやけど、クリスマスとかやったら人多くないかな?」
『う〜ん、どうかな……私も行ったことないからわからんのやけど……でも、めちゃくちゃ田舎のとこやけん、大丈夫ちゃうかな〜?』
あ、まんのう公園は田舎の方にあるのか。
我ながら都会の方だと行かないのか、と情けなくなるが、田舎と都会だと、田舎の方が好きだ。
ちなみに田舎と都会のオレ基準は、人の多さと、自然の多さのバランスだ。都会は人が多く、便利かもしれないが、自然は少ない。田舎は自然が多く、人は少ない。
もの凄く偏見も混じっているかもしれないが、俺の個人の所感である。
「あ、人がそんなに多くないんやったら大丈夫かな……わかった。クリスマスはそこに行こう。チサちゃんは一緒に行くん?」
『ううん、チサは部活があるし、行かないよ〜』
というわけで、クリスマスのデートの場所は決まった。
まんのう公園、サエからまた新たなワードが出てきた。
イルミネーションデートなんて、そんな洒落たことをするなんて、今まで思いもしなかった。
これも、サエと一緒にいるおかげだなと、感じる凰太であった。




