小豆島のエンジェルロード
合同誕生日旅行がついに始まる。
凰太と沙絵は、高松にあるジャンボフェリー乗り場に着いた。
◯登場人物
凰太
39歳
ゲーマー。兵庫県神戸市に住む。
沙絵、さーちゃん
42歳
香川県に住む。元は神戸市に住んでいたらしい。
バツイチで、中三の娘がひとりいる。
「ほんとにめちゃくちゃジャンボ!! フェリーってこんな大きかったっけ!!?」
ジャンボフェリーは、ほんとにジャンボだった。
俺が小さな頃に乗った記憶にあるフェリーの倍以上かなというくらいのド迫力だった。行きと帰りで、二隻両方乗れる往復プランにしている。行きのフェリーは「あおい」という名前のフェリーで、それが新しい船らしい。帰りのフェリーは「りつりん」だ。
実際に船内を巡ってみると、めちゃくちゃ綺麗だった。俺が家族で乗ったことのあるフェリーとは大違いで、なんだか揺れも少ないような? 全く船酔いもなかった。
乗船時間は一時間くらいだったが、結局そんなに船内を見て回るところもなかったのと、十一月初めとはいえ、少し風は寒くなってきていたので、船内の休憩スペースで、ゆっくり仮眠することにした。
「小豆島楽しみだね〜!」
「うん、俺も楽しみ。なんか船で行く島って、もう海外旅行みたいな気分になるやんね。俺、あまり遠出するのって、今までなかったし、苦手なイメージやったんやけど、さーちゃんと一緒やったら、どこまでも行けそうやわ」
「おーくん……好きっ!!」
「いてっ!!」
何故この時、痛かったかと言うと、さーちゃんは俺に好きの気持ちをぶつけてくれる時に、体というか、頭というか、まぁまぁの勢いで物理的にぶつかってくる(さーちゃん本人はじゃれていると仰っています)ので、たまにゴツッと痛めの時があるのだ。
もちろんそれも可愛いんだけどね。
そうそう、フェリーが小豆島の港に着いてからは、まず別荘へのチェックインの前に、エンジェルロードに行く予定にしていた。
これは事前に調べていたから分かったことだが、前にも話していた、干潮時のみ道が現れるというのが、日にちによって時間帯が結構変わる。要は一定ではないので、訪れた日の干潮時間を見ておかないと、そもそもエンジェルロードのロードがない状態の場合もあるということだ。
そりゃ、恋人客もがっかりだよな。
それで、今回訪れる日程の干潮時間、およそ四時間幅くらいあるんだが、夕方四時から夜の八時頃までだったので、そのタイミングで先に見に行くことにした。そして、エンジェルロードを見てから近くのスーパーで買い物をして、別荘にチェックインという段取りだ。
「エンジェルロード楽しみ〜!!」
「ほんまやね。ちゃんと道出来てるかな?」
車で三十分ほど走ると、エンジェルロードの駐車場に着いた。
平日の夕方なのにまぁまぁの観光客だった。
「わっ! 結構、たくさん人がいるね〜!」
ちょうど暑くも寒くもない程よい季節だったからか、国内だけでなく、外国人の観光客もかなりの数がいたと思う。こんなに有名なんだな、俺はそれにびっくりした。
「人多くて、なんか写真で見てたのとは違うね〜」
さーちゃんはちょっぴり人混みにトーンダウンしてしまっていたけど、なるべく人の多いところを避けながら、エンジェルロードを手を繋いで渡った。
エンジェルロードは海沿いなので、景色も凄く綺麗だった。それに加えて夕焼けの淡いグラデーションが、更にその景色を彩っていた。
日が沈むと歩きにくくなりそうだったので、早めにエンジェルロードを退散し、別荘までの道のりの途中にあったスーパーで軽く食材を買い、別荘に向かった。
別荘のオーナーさんとは事前に連絡を取っていたが、先に支払いを済ませ、バーベキューをしたいという希望も伝えていたこともあったが、すでに庭にバーベキューコンロなどの用意もしてくれていた。至れり尽くせりだった。こういう気遣いをしてくれるのは凄く嬉しいし、いいなと思う。
滞在中の注意事項などだけ教えてもらい、鍵を受け取って、別荘の中に入る。
別荘と言ってもぽつんと一軒家みたいなとこではないのだが、中はとても清潔にされていて、部屋だけでなく、トイレやお風呂も掃除が行き届いていて、凄くよかった。
「めちゃくちゃ綺麗やんね! 私こんなお家に住みたいな〜!」
俺もそう思った。
バーベキューは少しだけしたのだが、夜がやっぱり寒くなってきていて、後半は家の中で、普通にガスコンロを使って調理をし、家の中で食事をした。普通の一戸建てと同じく、キッチンや調理器具も揃っていたので、料理も出来たし、ご飯も炊けた。
今更なんだけど、さーちゃんはめちゃくちゃ料理が上手い。お洒落な料理、というわけではなく、気取らない普通の家庭料理が得意だった。俺は煮物とか、ハンバーグとか、和食が中心に好きだったので、凄く嬉しかった。ハンバーグは……洋食かな、まぁいいじゃないか。
今回も手早くさーちゃんが料理を作ってくれて、その間、俺はバーベキューの食材を焼いたり切ったりした。
「お腹いっぱいだね〜。お腹いっぱいやと眠くなっちゃう……」
俺も眠くなってきたこともあるし、さーちゃんと早くベッドインしたいこともあったが、その前にひとつしなければいけないことがあった。
「もう少ししたら寝るけども、これをさーちゃんに渡しておくわ」
「渡すってなに?」
「はい、誕生日プレゼントやで」
俺は巧妙にさーちゃんにバレないように持ってきていた、小さな紙袋をカバンから取り出し、さーちゃんに渡した。
「わぁっ、プレゼント!? 全然わからんかった」
さーちゃんはびっくりしながらそれを受け取り、紙袋に入った、二つの箱を取り出し、開けてもらった。
「わっ、ネックレスと……ピアス? めちゃくちゃ綺麗やし、可愛い! おーくん、ありがとう!」
「一応なんやけど、ネックレスの方には誕生石が入ったやつにしてもらったで。ピアスはなんかホタルビーズっていう暗いとこで少し光るやつらしい」
「凄い、そんなのがあるんやね! ありがと〜」
さーちゃんは嬉しそうに笑っている。よかった、喜んでくれて。
「ずっと仲良しでいような。誕生日おめでとう」
「おーくんありがとう、大好きっ!」
さーちゃんは俺に抱きついてきた。
「あ、ちょっとさーちゃん。そろそろ寝室いこっか……」
二人の誕生日旅行はまだまだ始まったばかりである。
小豆島に辿り着き、
エンジェルロードを二人で歩き、
夜はバーベキューも楽しんだ。
明日はどんな楽しいことが待ってるかな?




