仮想恋人→現実恋人→そして……?
お盆の高松祭りを終えて、残暑もあったりで暑い日は続くが、夏は少しずつ過ぎていく。
凰太と沙絵の関係は少しずつ深まっていくが、
それと同時に変わっていくこともあった。
◯登場人物
凰太
39歳
ゲーマー。兵庫県神戸市に住む。
沙絵、さーちゃん
42歳
香川県に住む。元は神戸市に住んでいたらしい。
バツイチで、中三の娘がひとりいる。
千沙
15歳
沙絵の娘。
お盆の時のチサちゃんの件があってから、少しだけだが、俺と、さーちゃんとの関わり方が変わっていくような気がした。
はじめはオンラインゲームでの交流。そして、ネット恋愛。
何ヶ月かして、現実でのデートを重ねることで現実での恋人。
そして少しずつではあるが、もちろん俺の実の子供ではないんだが、チサちゃんも含めて親子として関わるような感じになってきた。
それは普段のやり取りや、会話自体も変わってくることになる。
『チサが部活の試合で遠征に行くことになったんよ』
「あ、そうなんやね。凄いやんか、活躍できたらいいなぁ〜!」
『それはええんやけど、私ひとりやから寂しいな……』
という具合。もちろん子供を大事に思う気持ちはわかるし、ずっと一緒にいる子供が数日であったとしても、家におらず離れてるのは寂しいかもしれない。
ただ、その寂しさを俺にぶつけるというか、子供が居ない寂しさを埋めるために俺に来て欲しい、というのはなんかムシが良すぎじゃあないか?
「あ〜、そのあたりは休み取れへんから行くのは厳しいと思うわ〜」
もしかしたら、無理をすれば休めるかもしれない。でも、なんかそういう時だけ会いたい会いたいと言われるのは、なんか腑に落ちない。それはみんなそうじゃないかな。
子供をないがしろにしろとか、そういう意味ではない。むしろ子供を大切にするさーちゃんのことは、とても尊敬している。
なかなか言葉にするのは難しいんだけど、普段子供がいる時でも、いない時でも、どっちもちゃんと必要と思ってほしいのだ。そうでないとなんか、ただの都合のいい男みたいになってしまうような、そんな気がしてしまう。
「さーちゃんはな。自分が仕事忙しい時とか、子供のことで忙しい時とかは一切連絡もなくて、俺のことなんか気にもしてないのに、自分が暇な時とか、子供が居なくて手持ち無沙汰の時とか、俺の行動とかめちゃくちゃ気にしたり、聞いてくるやんね?」
『え? そう……かな? 私そんなつもりはないんやけど……もしそうなってたらごめん……』
やはり、自分では気づいていなかった。
「こういうのって、強制するものとか、制限するものじゃあないとは思うんやけどな。自分の状況しか考えてなくて、相手のことを思いやれないのって、あまり良くないと思うで」
『うん……』
こういう俺の説教というか、小言が始まると、さーちゃんはだいたい口数が少なくなる。普段食べ物の話とか、自分の好きなこととかの話はもの凄く饒舌になるのに。
俺はゲーム内でギルドマスターだった頃の経験があるから、尚更かもだが、自分勝手で周りのことを全然かえりみない人間が好きではなかった。どうしてもそういう存在は揉め事を起こすし、長くは続かないからだ。
「俺は、さーちゃんの事を好きやし、そうやから、さーちゃんが大事にしているチサちゃんのことも同じように大事にしたいと思ってる。もう少し、俺の事を頼ってくれてもいいと思うで」
『わかったよ。ごめんね、もしかしたら自分の勝手で連絡したり、全然しなかったりしてたかもしれない。自分がされたら嫌なことを、したらあかんやんね』
さーちゃんは反省して、言葉を伝えてくれた。
◇ ◇ ◇
そして、十月のはじめ。
知り合って始めの頃に俺が話していた、十一月の合同誕生日パーティーの企画をする時が近づいていた。ちょうど一ヶ月くらい前になっていたからだ。
「もしなんやけど、二〜三日くらい休み取れそうなら、どこかに旅行にいこっか?」
『旅行いいね〜! あっ、私、小豆島に行きたいかも。なんか利用者さんがね、前に小豆島行って楽しかった、って話してくれたんよ』
名前は聞いたことあったが、もちろん俺は行ったことない場所であった。
「小豆島って高松からフェリーとかに乗って行く島やんね。フェリーって小さい頃に乗ったくらいで大人になってからはないかも。合同誕生日は小豆島旅行に決まりやな!」
『わーい! またどんな観光スポットあるか調べてみるね』
俺は例のごとく、オタクゲーマーなので旅行どころか、普段外出もほとんどしなかった。なのでアウトドアのような事はもちろん苦手だ。
でもその代わりに、ゲームのイベントだったり、そういう企画を考えるという、企画力はもしかしたらあったのかもしれない。現実とゲームはもちろん全然違うが、こういうことをしたら楽しいかなとかは、できる気がする。
ただ……この合同誕生日旅行企画が、破綻するような出来事が起きてしまう。
当初に予定していた、合同誕生日企画がついにスタートした。
ゲームのイベントではないが、凰太はそういう企画をすることは意外と好きだ。
だが……その企画に水を差す出来事が起こってしまうのだった。




