母親が娘を心配する気持ち
高松祭りに行くチサと別行動で凰太とサエはカラオケに行くことにした。
チサと友達はお祭りを楽しんでいるだろうか。
◯登場人物
凰太
39歳
ゲーマー。兵庫県神戸市に住む。
沙絵、さーちゃん
42歳
香川県に住む。元は神戸市に住んでいたらしい。
バツイチで、中三の娘がひとりいる。
千沙
15歳
沙絵の娘。
そのあと、チサちゃんは友達と高松祭りに行くということで、高松の待ち合わせ場所で降ろし、俺とさーちゃんは別行動することにした。
俺とさーちゃんはカラオケに行って時間を潰すことにした。俺は祭りを見に行ってもよかったんだが、この高松祭りはもの凄く混むらしい。人が多過ぎるとさーちゃんは疲れてしまうタイプなので、できれば行きたくないということだった。俺も同じようなところはあるので、それに同意した。
異変が起きたのは、その高松祭りが終わろうとしている時だった。
◇ ◇ ◇
俺とさーちゃんは、お祭りが終わる時間くらいまでカラオケに行き、そのあとチサちゃんとその友達を瓦町の駅まで迎えに行くことになっていた。
「チサ、祭り楽しんでるんかな〜。さっきからメールしてるけど、全然返事ないや……」
俺がここ数ヶ月で気づいたことは、さーちゃんはめちゃくちゃ子供想いだということだ。もちろん俺のことも大事に想ってくれているが、子供のこと、チサちゃんのことも凄く大事にしている。
デートしている時でも子供のことは常に気にしているし、仕事の時でもそうだからだ。俺はそれをとてもいいなと思うし、それが元旦那さんとの子供であることに、ちょっぴりモヤモヤすることはあるけども。それよりも、しっかりと子供のことを大事にするさーちゃんを、尊敬している。
「んー、友達と夢中で遊んでると思うから、返事はすぐはないんちゃうの?もう少ししたらもっかい連絡してみたらいいと思うで」
「うん……そやね」
カラオケを交互に歌っているが、それも心ここにあらずという感じで、さっきからスマホを触ったり、メールに既読が付くかを確認したりしている。
「よしっ、そろそろ駅に迎えにいこっか。祭りやから道も混んでるかもやしな」
「うんうん、そうしよっか。あ、一応チサの友達にも連絡いれてみよかな」
チサちゃんに連絡が取れない場合のために、チサちゃんの友達の連絡先も聞いているみたいだ。
「うーん……チサの友達も通話に出ないや。とりあえず駅まで行こっか」
琴電の瓦町駅周辺は祭り中は道路規制がかかっていて駅前には駐車ができなくなっていた。なので、駅から少し離れたところに駐車して待つことにした。
「おかしいな……もうお祭り終わる頃だから、迎えちゃんと来ててよ、って普段なら連絡ありそうなんやけどな……」
さーちゃんがそわそわしだしている。そりゃ……ずっと連絡つかなかったら心配だよな……
「あれ……さっきは呼び出し音が鳴ってたんだけど、鳴らなくなったよ……どうしよう、電池切れかな……?」
まさか……チサちゃんになんかあった??
「さーちゃん、念のために俺、駅の方の改札に様子見に行ってみるから。さーちゃん車で待っといてくれる? 通話は繋いだままにしといてな? 行ってくる!」
「うん、うん……ごめんね、おーくん」
さーちゃんに車で待っててもらい、俺は瓦町駅の改札の方に来てみた。もし携帯の電池が切れてたとして、そのまま友達と列車で帰るために駅に向かってるかもしれないと予想したからだ。
「さーちゃん、今、瓦町の駅の改札に着いたで。祭り帰りの人達がぞろぞろと駅のホームに向かってるわ。チサちゃんと友達ぽい子達を見かけたら言うわ。もし、車を路駐でなく、コインパーキングに停めれそうなら、停めてもらって、駅の逆側も見に行ってもらってもいい?」
『うん、うん。わかった! すぐコインパーキング探す!』
チサちゃんは今までの祭りに遊びに行った時の場合、最後まではあまり行かず、疲れて早めに帰ることが多かったようだ。
だから、尚更今日は帰りが遅い分、心配になってるんだろう。
チサちゃん……見つかってくれ……
「さーちゃん、大丈夫やで。心配やろうけどもチサちゃんを信じるんやで。俺、今から改札の方から、祭り側の駅入り口の方に移動するから。ゆっくり移動するからね」
『うん、わかった……あ、一旦チサの友達の親にもかけてみるよ』
「わかった。じゃあひとまず通話を切るで」
通話を切り、瓦町駅の西側、祭り会場のある公園の方角に出た。
いた!
チサちゃんは友達と二人で疲れた様子で歩いていた。
「チサちゃん!! こっちやで〜!」
よかった……見つかって。
「あれ、おーたさん。ママは?」
「チサちゃん携帯電池切れてたんちゃう? 今、コインパーキングに停めて、探しに向かおうとしてたとこやわ。とりあえずママに連絡するからこのまま待っていてな」
「はい、わかりました」
すぐさーちゃんの携帯を呼び出す。
「さーちゃん。チサちゃん見つかったで! 駅に友達と向かってくれてたわ。うん、うん。とりあえず駅前に来てくれる?」
通話を切った。
「おーたさん、のど渇いた……」
「えーと……あんな、チサちゃん。飲み物は後で買ってあげるから。ママな、めちゃくちゃ心配してたし、連絡も全然つかへんから、泣きそうになってたし。無事ってわかったからよかったけども、もしママが怒ったとしても、素直に謝るんやで!」
俺は少し怒ってしまった。悪いなとは思ったが、これは言わないとダメだと思ったのだ。さーちゃんが走ってやってきた。
「チサ!! あんた何やってたんよ!」
「たのむで、チサちゃん……」
俺は小さな声でチサちゃんに伝えた。
「ママ、ごめんなさい……連絡きづかんかった」
「友達の親にかけても全然出んし! 携帯使いすぎて電池切れたんちゃうの!? もういい加減にしてや!」
さーちゃんが怒るのを初めて見たかもしれない。
「ごめんなさい……気をつける」
「まぁ……友達も送らないとあかんし、とりあえず帰ろや」
でも、ほんとによかった……もしチサちゃんに何かあったらと思うと……
◇ ◇ ◇
自宅に帰る前に、チサちゃんの友達の家に友達を送っていく。家の前で親が立って待っていたようだ。家に入る前に、その友達を叱っている。
「迎えにもこんくせに、よう怒れるもんやな」
俺は子供がいないから、心配をする気持ちはちゃんとはわからないかもしれない。でも、あの友達の親のように、ただ家の前で待つだけの親にはなりたくない。それだけは思った。
「のど渇いた〜!」
「あっ、ごめんチサちゃん! 飲み物買うの忘れてた〜!!」
チサと、その友達も無事に見つかり、共に帰る。
凰太は、サエが自分の子供のことを心配し、大切に思う気持ちを、とても良いことだと思い、
自分自身もそれに共感するようになっていく。




