さーちゃん、高速バスで神戸にくる
お互いに思っていることを話し、少しずつではあるが気持ちを伝え合うことができた凰太。
次にサエと会えるのはいつになるのか?
◯登場人物
凰太
39歳
ゲーマー。兵庫県神戸市に住む。
さーちゃん、サエ
42歳
香川県に住む。元は神戸市に住んでいたらしい。
バツイチで、中三の娘がひとりいる。
香川から神戸に帰り、さーちゃんと電話で話した翌日からは、お互いに仕事の日が少し続いた。
彼女は訪問介護の仕事だから、まぁまぁ色々なところを車で移動しながら利用者さんの自宅で介護をする。それは以前も通話で聞いたりしていたんだけど、短い時間の一時間未満の介護もあれば、二時間超えの長時間もある。
あとは、介護って聞くと、イメージはお年寄りのオムツ替えたり、お風呂手伝ったり、肉体労働ばかりなのかなと思っていたんだが、実のところ訪問の場合はそうでないことも多いみたいだ。
外に買い物に行けない利用者さんのために買い物にいったり、家でご飯を作ってあげたり、家政婦さんというか、そういう仕事もあるみたい。彼女が日々そうやって介護をすることで、物理的に助けられることもあるし、精神的というか、心も救われている利用者さんもきっと多いはずだ。
俺はそういう彼女の話を聞くのが好きだった。ただお金をもらうために淡々と仕事をしているのではなくて、信念を持って働いている、自分を必要としている人達のために働いてるんだなと感じるからだ。
例のパンケーキ&高松デートから数日が経ったが、少しずつさーちゃんとも元通りやり取りをするようになり、彼女も前よりもちょっぴり、素直に話してくれるようになったような気がした。
『ねぇねぇ、おーくん。私、今度神戸にいく』
「えっ! さーちゃんいきなりどうしたん? なんか用事あるん?」
これは前からなんだが、彼女はまぁまぁ唐突に話を始めることがある。どういう経緯でとか、詳しい説明をすっ飛ばしてしまうことが多いのだ。でも、それもまた良いところでもあるのかなぁと思うことにしている。
『え、おーくんに会いにいくんだよ。ダメ?』
「え、え。ダメなワケないやんか。休みの時合わせて来れそうなら、来てくれたら嬉しいで。あ、でも娘ちゃんは大丈夫なん?」
彼女には中学三年生になる娘がいる。
『あ、大丈夫やで。朝に行って、その日の夕方に帰るようにするから。あまり家空けすぎたらよくないもんね』
あ、まぁそうだよな。
「それならいいんかな。でも車で来るん? 往復を日帰りやとまぁまぁ大変じゃないん?」
『今回は高速バスで行くよー。いつがいいかな?私週の真ん中くらいなら休み取れる』
高速バスでなら安心だ。行き帰りも寝ることができるからね。
「ちょうど俺も水木あたりなら自由に休めるで。日にちぼちぼち決めていこっか」
というわけで、休みを合わせて、今回はさーちゃんが神戸まで来てくれることになった。
今住んでいる香川も、元旦那の実家だったりが近くにあるとかで、今は直接の交流はないものの、微妙だったりはする。
ただ、元々住んでいた神戸が良いかと言うと、前にも彼女から聞いたけど、神戸の繁華街のクラブで働いていた経験があるという。
たまにそういう話も出てきたりするのだが、俺とはあまりにも世界が違う話なのもあり、単純にヤキモチを妬いてしまう。
年齢差はあるにせよ、複数の男からチヤホヤされたり、プレゼントをされたり、色々な援助を受けていたという話を聞くと、それが過去のこととは言え、やはりモヤモヤしてしまうのだ。
だから、神戸に来てくれるというのは嬉しかったけども、もし彼女が、昔住んでいた街を懐かしむために、という目的もあるなら、少し悲しかったりはする。
なんて、色々考えたりはするんだけど、単純に会えるのは嬉しい。あと、彼女自身も前よりもすごく愛情を伝えてくれる気がしている。
『おーくん、早くあいたい。会ってくっつきたい』
嫌でも想像してしまう。そんなメールを仕事中にくれると、俺は赤面してしまう。
◇ ◇ ◇
そして、さーちゃんが神戸に来てくれる、当日の朝。さーちゃんは例の志度の高速バス乗り場からバスに乗って、三宮のバスターミナルまで来る。七時過ぎにバスに乗り、九時頃に着く予定だ。
『今からバス乗るよー』
「バスの中で寝れそうなら寝とくんやで。到着前くらいになったら、通話を鳴らして起こしてあげるからな」
『わかったー』
俺も、彼女の到着に合わせて三宮に電車で行き、八時半くらいにはバスターミナル付近で待機できるようにしておくことにした。バスが発車してから三十分後。
『ワクワクして寝れないんやけど』
子供かい! まぁそれだけ楽しみにしてくれてる、ってことならいいのかな。
「ワクワクはいいんやけど、少しは寝とくんやで」
『わかったー』
それから三十分後。
『おーくん、着いたらモーニング食べにいこっか』
まだ寝てないんかい! まぁ色々楽しみを考えて寝れないよな。
「うんうん、そうしような。あと一時間くらいはあるから、少しは寝ときや」
『わかったー』
三宮到着の三十分前。
『もう少しで着くかな〜。さっき明石大橋渡ったよ〜』
結局寝ないんかい! 俺は心の中でツッコんでおいた。
今回はサエが凰太の住む神戸に来てくれることになった。
凰太の心境は少し複雑ではあったが、やはり会えるのは嬉しい。
さて、神戸デートはどうなるかな?




