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魔法使いとペンダント ~それは一体誰のもの?~  作者: 碧衣 奈美


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14.あいまいな場所

 ここに至るまで、具体的な場所を聞いていなかったことに改めて気付き、シェフレラは愕然とする。これまで、ひたすら森へ来ることだけを考えていたから。

 森の名前は二度言っていたような気がするが、クロスカスは森のどの辺りとは言わなかったように思う。

 人質を取られたのだから、相手が言う取り引き場所はちゃんと覚えているつもりだ。それを忘れたら、どうしようもなくなってしまうから。

「雑な奴だな。来いと言っておいて、具体的な場所は言わないのか。そいつはペンダントが欲しいんだろ? 少なくとも、シェフレラにはちゃんとたどり着いてもらわないと、困るんじゃないのか」

「そうよね。目的はペンダントなんだから。言わなくてもたどり着ける、とでも思ってるのかしらね」

 だが、クロスカスはシェフレラの実力を、あの場で見ているはずだ。ターミスの前に出した防御の魔法だけだが、それでもある程度は知れる。

 あちらは手練れのようだったし、シェフレラの力量を見極めるくらいはできるだろう。

 昨夜も「一人で捜せなかったらどうしよう」と思っていたが、なぜ居場所をちゃんと言わないのか、という点までは考えていなかった。

「助っ人を連れて来る、と見越してるのか。シェフレラを疲れさせて、何かあっても簡単に反撃できないようにしてるってことも考えられるな」

「やり方が陰険ねぇ。だけど、元気なあたしが反撃したって、あっちは簡単に防御できると思うけど」

 悔しいが、実力差をないことにはできない。

「ペンダントを手に入れる過程で、シェフレラがどんな魔法道具を入手するかわからない。もしかすると、その辺りを危惧したのかもな。それに、人間ってのは実力がなくても、時々とんでもない力を発揮したりする。もちろん、そう全てがうまくいくってことはないけど」

 実力がない、というのは、シェフレラのことだろうか。うがちすぎ、と思いたいが……。

 そこはちょっとばかり引っかかるものの、リオントの言葉は納得できるような気もする。

 少なくとも見た目は抜け目のない、冷酷そうな男だった。単に言い忘れた、というのなら間抜けすぎるし、クロスカスに限ってそんなことはなさそうだ。

 対峙していたのは短い時間だったが、あの雰囲気はうっかりミスをするような人間のものではない。

 シェフレラに攻撃する気を失せるように仕向けるため、リオントが推測したようにあえて居場所を詳しく言わなかった、という可能性はある。

 ターミスという人質を取られたシェフレラが、血が上って何かすることを想定した上で、ということは十分に考えられることだ。

 同伴者がいても、それはそれで来るまでにある程度の体力を削れる。

「クロスカスの意図がどうであれ、実際に居場所がわからないのよね。ここからどうやって捜せば……」

 今までは、リオントが盗賊や母親の持ち物の気配をたどったから行けた。今度はたどるべきものがない。

 シェフレラにターミスやクロスカスの気配はたどれないし、リオントもさすがに知らない人間の気配はたどれないだろう。

 彼らの持ち物があれば何とかなりそうだが、それも手元にはない。

「とりあえず、歩くぞ」

 魔獣から降ろされ、シェフレラは先を歩き出すリオントについて行く。

 ノーダイルの森と同じように、歩いていると魔物が現れては襲い掛かって来た。村人が来るようなエリアはそんなに危険ではないが、やはり奥へ向かうにつれて魔物が出るのだ。

 シェフレラもがんばるが、やはり対処しているのはリオント。彼に同行を求めて大正解だった。

 リオントがいなければ、森に少し入った時点でシェフレラは戦闘不能。ノーダイルの森と比べて現れる魔物が少ないと言っても、そんなことは問題ではない。

 あの盗賊達から一つでも魔除けを取り上げておけばよかった、と今更に後悔する。

「リオント、何か方法でもあるの? まさか、適当に歩いてるって訳じゃないわよね」

 迷いなく歩くリオントの背中に、シェフレラは尋ねてみる。自分には何の策もないが、彼は何を目印にして歩いているのだろう。

「そんなことをしていたら、森の中で野垂れ死にしかねないぞ」

 シェフレラ一人なら、十分にその状態はありそうだ。

「魔除けの気配がする。恐らく、その魔法使いの術だろう。魔物は使わない魔法だからな」

「え、魔除けの気配……? 結界とかじゃなく?」

「厳密には少し違うが、似たようなものだ。多少の魔力があれば、魔法道具と併用してそういうことができる」

「んー、まだまだ知らない術がたくさんあるのね。それで、リオントはその気配がわかるってことなの?」

「まぁな。範囲がこの森の中だから、ある程度絞り込める」

 今向かっているのは、その魔除けの結界が出す独特の気配が感じられる方向。シェフレラにはさっぱりなので、ひたすらリオントについて行くだけだ。

「その魔除けみたいな結界って、使い魔に影響はないの? 使い魔だって、魔物でしょ。妖精を使う人もいるって聞くけど。魔除けがあったら、主人の元にいられないじゃない」

「使い魔に影響がないようにすることは可能だ。魔法使いの力量にもよるが、使い魔が顔パスで入れるような状態にしておける」

「ふわぁ、そんなことができるの?」

 シェフレラがそういう術を使えるようになるのは、果たしていつのことやら。まずはどういった術なのか、というところから勉強する必要がある。

「その魔法使いは、どうしてそのペンダントを欲しがっているんだ?」

「よくわからないけど、力があるみたい。どんな価値があるかも知らないくせに売りやがって、みたいなことを言ってたわ」

「使い魔に運ばせていたって、話してたな。ペンダントはそいつのものなのか?」

 考えたこともない質問に、シェフレラは首をかしげる。

「え? それは……知らないけど。クロスカスの言い方だと、俺のものを勝手に売りやがって、みたいな感じだったわ。だから、返せって言ってるんだとばっかり思ってた。大切なものなら、もっとしっかりした使い魔に運ばせろって言ってやりたいわ」

 確かに、拾ったものを勝手に売ったターミスもよくない。

 だが、ターミスに限らず、そういうことをする人はいくらでもいる。生活に困っていようがいまいが、お金がほしい人は世間にあふれているのだ。

 そもそも、道に落とす方にも問題があるのではないか。ターミスも同じようなことを思っていたらしいし、その気持ちはわかる。

「何のために、使い魔に運ばせていたんだろうな」

「何のって……」

 リオントの言わんとすることがわからず、シェフレラはまた首をかしげる。

「自分のものをどこからどこまで、何のために運ばせていたか、だ。そいつ、引っ越しでもしていたのか?」

「そう言われると……どうしてかしらね」

 例えば屋内で、別の部屋から自分のいる場所へ「持って来い」と使い魔に命令すれば、道端にペンダントが落ちる状況にはなりえない。

 リオントが言うように引っ越しの最中だったのか、どこかへ行き来する道中と考えるのが自然。

 どういう移動にしろ、なぜ大切なペンダントを使い魔に運ばせていたのか。

 道に落とす方が悪い、くらいにしかシェフレラは考えていなかったが、なぜそういう経緯に至ったのか、という点は考えようともしなかった。

 ……本当に何も考えずに行動していたんだな、とまた反省。

「リオントの言葉を聞いてると、疑問が増えて来るんだけど。何か心当たりでもあるの?」

「シェフレラが持っているペンダントが、本当にそいつの欲しがっているものだとして。それに大した価値なんて、一つもないぞ」

「えええっ! もしかして、間違えて別のを持って来ちゃった?」

 とんでもない発言だが、今更そんなことを言われても困る。交渉相手はもうすぐそこ、のはずなのに。

 わかっていたのなら、もっと早く教えてほしかった。

「いや、赤い石のペンダントは他に見当たらなかったから、そいつの目的の物はそれでいいはずだ。でも、それに魔力なんてないし、宝石としての価値は……俺は鑑定できないから何とも言えないけど、そんなに高価なものじゃないと思うぞ」

「そんなぁ……」

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