26話
教師陣と生徒会長だと思われるヴァージル殿下が壇上に上がると学園長の話が始まる。
「新入生諸君、入学おめでとう。長話は退屈だろうから手短に話をしよう。まず、この学園のルールについてだ。すでに知っているだろうが、この学園は使用人の同行が認められていない。よって自分のことは自分でする必要がある。見る限りそれができている者は少ないようだ」
身だしなみの整っていない新入生を見ながら学園長は言った。
「では他のルールも説明していく。一つ、学園に関する全ての事柄の口外を禁ずる。これは入学時に契約書に署名してもらったと思う。二つ、寮の部屋割りは身分やクラスを問わずくじ引きで決められる。これはSクラス以外の者が対象であり、Sクラスはクラスメイトが同室となる。三つ、生徒の待遇は成績によって決定される。四つ、権力を行使することを禁ずる。五つ、学園内での出来事は外に出すことを禁ずる。もし、学園内で問題が起きたとしてもそれは学園内で解決することであり、親に解決してもらおうとするのは禁止という意味だ。六つ、帰省は長期休暇のみ。しかし許可があれば外出は可能だ。七つ、階級章と学年章は見えるところに付けなければならない。これは義務である。重要なルールはこれくらいである。残りの細々としたものは小冊子にして配布するので確認しておくように。以上だ」
その後、生徒会長であるヴァージル殿下の話と新入生代表の挨拶があり入学式は終わった。ちなみに、最初は私に新入生代表の挨拶の話が来たが、拒否した為に別の者に話が行ったらしい。
──新入生代表挨拶なんて面倒だし、目立つから嫌。
入学式が終わりそれぞれのクラスへと向かう。Sクラスは成績の上位二十名が選ばれるクラスで、私とフェリ、お兄様、エミリアン殿下、それとエミリアン殿下の側近の侯爵令息が居る。教室に入るとすでに席に着いていたエミリアン殿下がお兄様に気づき手招きをする。
「イシュメル、こっちにおいでよ。ティア嬢とフェリ嬢も」
席は自由なので私とフェリは殿下と侯爵令息の前に座る。お兄様は殿下の隣。好きな所に座れる。机は三人ほど並んで座れるタイプだった。
「久しぶりだな、ティア嬢。五年ぶりくらいか?」
「そうでしたか……あら、最後にお会いしたのはいつだったかしら?」
「ティア、お父様をボコボコにした……」
侯爵令息といつ会ったか思い出せずにいると、フェリが小声でフォローしてくれた。
「ああ。そう言えば、あの時兄様と一緒に伸びてらっしゃいましたね」
「記憶にすら残ってなかったとか……ちょっとショックだな。まあ、あれから俺も鍛えたけど」
「それはそれは……もうあの様な無様な姿は晒さずに済みますね」
「言葉の暴力……」
何やらブツブツと言っているがよく聞こえない。殿下やお兄様は苦笑いを浮かべるだけで、どうしたものかと思っていると教師がやって来た。
「全員居るな。このクラスの担任になったエメレンスだ。担当は魔法実技。このクラスには飛び級入学者が二人居るが年齢に関係なくクラスメイトとして接するように。それじゃあ、自己紹介でもしてもらおうか……」
先生が指名した人物から順に自己紹介をしていく。
「ユーグ・スクイレルです。ピュール王国から来ました。よろしくお願いします」
「フロレンシオです。オロス王国から来ました。よろしくお願いします」
「オズウェルです。クレーネ公国から来ました。よろしくお願いします」
「マデリーン・リーリャです。リトス帝国から参りました。よろしくお願いいたします」
「ティベリア・ティグレ。ラメール帝国から来ました。よろしくお願いします」
「ジェイデン・ディック・オルキデア。ピュール王国から来た。よろしく」
「ミクラーシュ・ジラルディだ。ピュール王国から来た。ジェイデン様の護衛だ。よろしく」
その後も自己紹介が進む。やはり、このクラスでも平民以外で制服を着ているのは私とフェリ、お兄様の三人だけだ。
そして自己紹介も残すは私たち五人になった。
「フェリーチェ・ディアナ・サンドロップですわ。よろしくお願いいたします」
「レイティアラ・セレアス・クレセンティアです。このクラスには兄も居りますので、どうぞレイティアラとお呼びください。よろしくお願いします」
「イシュメル・ジーン・クレセンティアです。妹と同じように僕のこともイシュメルと呼んでください。よろしくお願いします」
「エミリアン・イレール・ウーラノス。よろしくね」
「カーティス・ローデンヴァルト。エミリアン様の側近兼護衛だ。よろしく」
全員の自己紹介が終わり初日はこれで終わりだ。それぞれが教室から出て行く。
「それにしてもクレーネ公国はわかったけれど、他が何処の大陸の国か、家格は何なのかうろ覚えだわ」
「ピュール王国は南大陸にある国だよ。最初のスクイレルは子爵家、オルキデアはミドルネームがあることから公爵家、ジラルディは侯爵家。オロス王国は西大陸にある国で、家名を名乗っていなかったから平民。クレーネ公国は知っての通り北大陸にある温泉が有名な国だね。こっちも家名を名乗ってなかったから平民。リーリャは西大陸のリトス帝国にある伯爵家。ラメール帝国は南大陸で、ティグレ家は騎士家系の男爵家」
「よく覚えてんな」
「流石ティアね」
商売柄他国のことはちゃんと覚えている。他大陸のことなら余計に。




