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「君と過ごす、365回の放課後」  作者: 優貴(Yukky)


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第7話「文化祭までのカウントダウン」

翌日。

教室の窓から朝日が差し込む。

いつも通りの朝。 いつも通りのざわめき。

なのに――

悠斗の世界だけ、完全に変わってしまっていた。

「……」

机に突っ伏したまま、ぼーっと窓を見る。

昨日の言葉が、頭から離れない。

『治らないんだって』

『あと、少しなの』

「……っ」

胸が苦しい。

考えたくない。 でも、勝手に考えてしまう。

「おーい悠斗ー」

桐谷が近づいてくる。

「朝から死んだ顔してんぞ」

「……うるせぇ」

「寝不足?」

「まあ」

嘘だった。

寝てない。

昨日、家に帰ってからもずっと考えていた。

陽菜のこと。 残された時間のこと。

そして――

何も知らず笑っていた自分のこと。

「で?」

桐谷がニヤッとする。

「結局、橘とはどうなんだよ」

「……」

「お?」

「……知らねえよ」

「いや絶対なんかあっただろ」

「うるせぇって」

その時――

ガラッ。

教室の扉が開く。

「おはよう」

陽菜だった。

「……!」

一瞬で視線が向く。

今日も笑っている。 いつも通りみたいに。

でも。

昨日知ってしまった今、その笑顔が痛かった。

「おはよー陽菜ちゃん!」

「おはよう〜」

女子たちが集まる。

陽菜はその中心で笑っている。

……普通に。

普通の高校生みたいに。

「……」

悠斗は目を逸らした。

すると。

「悠斗」

「……っ」

いつの間にか、陽菜が目の前に立っていた。

「おはよ」

「……おう」

「その顔、寝てないでしょ」

「……誰のせいだよ」

「ふふ」

少し笑う。

その笑顔を見て、胸が締め付けられる。

「……無理すんなよ」

思わず言う。

すると陽菜は少しだけ驚いた顔をした。

「大丈夫だよ」

「大丈夫じゃねえだろ」

「……」

「昨日も、かなり辛そうだったし」

「……見てたんだ」

「当たり前だろ」

陽菜は少し黙ってから、小さく笑った。

「……ありがと」

その“ありがとう”が、妙に弱々しくて。

悠斗は何も言えなくなった。

◇◇◇

昼休み。

文化祭実行委員の集まり。

教室にはクラスメイトたちが集まっていた。

「で、うちのクラスの出し物だけど!」

委員長が前に立つ。

「最終候補はこの三つ!」

黒板に書かれる。

・メイド喫茶 ・お化け屋敷 ・演劇

「おおー!」

教室が盛り上がる。

「絶対メイド喫茶だろ!」

「いやお化け屋敷!」

「演劇楽しそう!」

騒がしい。

でも。

悠斗はぼんやり陽菜を見ていた。

陽菜は笑っていた。

楽しそうに。

……だけど。

時々、小さく息を整えている。

苦しそうに。

それに気づいているのは、多分自分だけだった。

「……」

悔しい。

なんで誰も知らないんだ。

なんで自分だけ知ってるんだ。

なんで――

何もできないんだ。

「悠斗ー?」

「……あ?」

「何ボーっとしてんの?」

陽菜が覗き込む。

距離が近い。

ふわっとシャンプーの匂い。

「……近い」

「ふふ、顔赤い」

「うるせぇ」

「で? なにがいい?」

「……なんでも」

「適当すぎ」

陽菜が笑う。

その笑顔を見て、悠斗は決めた。

(……絶対)

文化祭まで。

最後まで。

こいつを笑わせる。

絶対に。

「……演劇」

「え?」

「演劇がいい」

陽菜が目を丸くする。

「悠斗が?」

「悪いかよ」

「いや、意外すぎて」

「……」

「でも」

陽菜が柔らかく笑う。

「楽しそう」

その一言だけで。

悠斗の胸は、少し救われた。

◇◇◇

放課後。

いつもの教室。

夕焼け。

オレンジ色の光。

「……はぁ」

陽菜が椅子に座り込む。

「おい」

悠斗が近づく。

「平気か?」

「……ちょっと疲れたかも」

顔色が悪い。

昨日よりも。

「帰るぞ」

「まだ平気」

「平気じゃねえ」

「……」

陽菜は苦笑した。

「最近、すぐ怒るね」

「誰のせいだと思ってんだ」

「……ごめん」

「謝んな」

バッグを持つ。

「送る」

「え、いいよ」

「よくねえ」

「でも――」

「俺が一緒にいたいだけ」

「……っ」

陽菜が少し目を見開く。

沈黙。

そして。

「……ずるい」

小さく笑った。

夕焼けの廊下。

二人で歩く。

ゆっくり。

本当にゆっくり。

まるで、時間を惜しむみたいに。

「ねえ悠斗」

「ん?」

「文化祭さ」

「……おう」

「成功させようね」

横顔で笑う。

その笑顔が綺麗すぎて。

悠斗は胸が苦しくなった。

「……当たり前だろ」

絶対に。

忘れられない文化祭にする。

残された時間全部。

後悔しないように。

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