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「君と過ごす、365回の放課後」  作者: 優貴(Yukky)


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第4話 「文化祭、二人だけの時間」


「いらっしゃいませー!」

教室に響く元気な声。

「テンション高すぎだろ……」

エプロン姿の陽菜が、満面の笑みで接客している。

「悠斗!ボーッとしない!」

「してねえよ!」

「ほら注文取って!」

「はいはい……」

文化祭当日。

クラスのカフェは思った以上に大盛況だった。

「すみませーん!パンケーキ2つ!」

「はーい!」

「ドリンクも追加で!」

「了解!」

陽菜、動き速すぎる。

「お前、なんでそんな慣れてんだよ」

「バイトしたことあるから!」

「マジかよ」

「ほら悠斗も頑張って!」

「命令すんな」

「店長だから!」

「いつからだよ!」

忙しい時間が過ぎていく。

「はぁ……やっと一段落」

「疲れた……」

椅子に座る。

「はい、これ」

陽菜がドリンクを差し出す。

「……サンキュ」

「どういたしまして」

隣に座る。

距離、近い。

「楽しいね」

「……まあな」

正直、ちょっと楽しい。

「でしょ?」

嬉しそうに笑う。

「悠斗、最初やる気なかったのに」

「うるせえ」

「でもちゃんとやってくれてる」

「……やるって言ったし」

「うん」

優しく笑う。

その顔、ちょっと反則だろ。

「ねえ」

「ん?」

「このあと、ちょっと抜け出さない?」

「は?」

「屋台とか見たい!」

「サボりかよ」

「休憩ですー!」

「言い方変えただけだろ」

「いいじゃんちょっとくらい!」

「……まあ、いいけど」

「やった!」

ほんと、嬉しそうに笑う。

校内を歩く。

賑やかな声、音楽、笑い声。

「うわー!すごい!」

「はしゃぎすぎだろ」

「だって文化祭だよ!?」

「知ってるわ」

「ねえ見て!あのクレープ!」

「食うのかよ」

「食べる!」

「即決か」

クレープを買う。

「はい、あーん」

「は?」

「食べてみて!」

「自分で食え」

「いいから!」

差し出される。

周りの視線、ちょっと気になる。

「……はぁ」

一口食べる。

「どう?」

「……うまい」

「でしょ!」

満足そう。

「次は悠斗の番!」

「なんでだよ」

「はい、あーん!」

「やらねえよ!」

「えー!」

騒ぐな。

でも――

「……ほら」

仕方なく差し出す。

「やった!」

ぱくっと食べる。

「おいしい〜!」

めちゃくちゃ嬉しそう。

「……子どもかよ」

「違いますー!」

そのあとも、いろんな屋台を回る。

笑って、食べて、騒いで。

気づけば――

「……もうこんな時間か」

夕焼けが広がっていた。

「ねえ」

陽菜がぽつりと呟く。

「ちょっとこっち来て」

手を引かれる。

「おい」

連れていかれたのは――

屋上。

「……開いてたのか」

「さっき見つけた!」

得意げ。

「危ないだろ」

「大丈夫大丈夫!」

フェンス越しに景色が広がる。

夕焼け。

街がオレンジに染まる。

「……きれい」

陽菜が小さく言う。

「……だな」

隣に立つ。

風が吹く。

髪が揺れる。

「ねえ悠斗」

「ん?」

「今日、楽しかった?」

「……楽しかった」

素直に言う。

「そっか」

嬉しそうに笑う。

「よかった」

少し沈黙。

でも、その沈黙が心地いい。

「ねえ」

「なんだよ」

「私とさ」

少しだけ声が震える。

「これからも、こういう時間過ごしてくれる?」

「……」

なんでそんな顔するんだよ。

そんな不安そうな。

「当たり前だろ」

自然に出た言葉。

「……ほんと?」

「約束だろ」

「……うん」

少しだけ、目が潤んでる気がした。

その時。

ドンッ。

突然、風が強く吹く。

「きゃっ」

バランスを崩す陽菜。

「おい!」

咄嗟に腕を掴む。

引き寄せる。

気づけば――

抱き寄せる形になっていた。

「……っ」

近い。

近すぎる。

「……大丈夫か」

「……うん」

でも、離れない。

「……」

「……」

目が合う。

逸らせない。

心臓、うるさい。

「ねえ悠斗」

小さな声。

「なに」

「今さ」

「……うん」

「ドキドキしてる?」

「……してる」

否定できなかった。

「私も」

静かに言う。

距離が、少しずつ近づく。

あと少しで――

触れそうで。

その瞬間。

「……っ」

陽菜が、ほんの少しだけ後ろに下がった。

「ごめん」

「え?」

「なんでもない」

笑う。

でもその笑顔は――

少しだけ無理してるみたいで。

「そろそろ戻ろっか!」

明るい声に戻る。

「……ああ」

帰り道。

隣を歩く。

でもさっきより、少しだけ距離がある。

「……なあ」

「なに?」

「さっきの」

「なんでもないよ!」

即答。

「気にしないで!」

笑う。

でも――

その笑顔の奥にあるものに、気づいてしまう。

この日、確かに思った。

もう戻れないって。

ただの“楽しい放課後”には。

そして同時に――

もっと深く、踏み込んでしまった。

でもまだ知らない。

この恋が、

こんなにも苦しくて、

こんなにも大切なものになるなんて。

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