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テディベアは夜笑う  作者: 鞠目
第五章
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35/36

カオスな合コン

「声をかけた時に反応してもらえたことが嬉しかったんやって」

 テリーが教えてくれた。

 ボソボソと話す幽霊の言葉が理解できなかったおれたち。でも、えっちゃんは解読できたようで、幽霊から聞いた内容をえっちゃんが翻訳。それをテリーに伝えて、テリーがおれに話すという謎なリレーが行われることとなった。

 えっちゃんはテリーにしか話す気がないらしい。おれがアメリカ人なら両手を上げてやれやれとジェスチャーしたことだろう。

 というわけで結果的にこたつを四人で囲むことになったのだが、想像以上にカオスな空気だった。

 照れる幽霊。通訳の戦闘民族。戦闘民族の媒介となるイケメン。なにこれ。おれの頭の処理が追いつかないうちにも話しは進む。

 幽霊の話を要約すると、交通事故で亡くなった女の人は気がつけばうちの近所の道路から動けない呪縛霊となった。

 なにもやることがなく寂しいので手当たり次第声をかけ続けていたところ、初めて反応したのがおれ。

 どれだけの期間声をかけ続けたのかはわからない。でも、もう何年も誰とも会話ができず、寂しさのあまり頭がおかしくなりそうだった。

 そんな中、初めて反応してもらえたのが嬉しくて嬉しくてもっと話したいと思っていたら、今日何故か動けなかったはずのエリアから出ることができるようになっていた。それで「これは行くっきゃない!」と思いストーキングを決行。

 家についたものの今までストーキングなんてしたことなかったし、家着いちゃったし、バレちゃったし、家にもイケメンいるしで大興奮。とりあえず最初に反応してくれたやつだけでも幽霊にしようってことでおれに襲いかかったそうだ。

「要するに恋やな」

 雑にまとめるテリー。もじもじと照れる幽霊。頷くえっちゃん。

「どこに恋愛要素があったよ!?」

「いやいや、考えてみ? デレしかないやん。なあ、えっちゃん」

 頷くえっちゃん。ダメだ話にならない。

「そんなデレは闇が深すぎるわ」

「モテてるんやから贅沢言うなよ」

「なにも嬉しくないわ!」

 おれは思わずため息をついた。とりあえずこの状況、どうしたらいいんだ? おれは頭を抱えた。しかし、そんなおれを置いてくようにテリーが話を進める。

「まあ、事情はわかったけど、とりあえず出てってもらおか」

「あ、もうそんな感じ?」

 急展開におれはびっくりした。

「そらそやろ。侵入者やし、初対面やし。親しくなるにしてもまずはもっとお互いを知らんと」

「ごめん、それゴールはどこになってる?」

 今の言い方は嫌な予感しかしない。でも、テリーにおれの声は届かなかったようだ。えっちゃんに引き取れるかどうかの確認をしている。えっちゃんまじで何者だよ。

 しかし、そんなおれたちを他所に幽霊が笑顔で立ち上がると、白く光出した。

 戸惑っていると、幽霊はえっちゃんの耳元で囁く。そしてそれを聞いたえっちゃんは驚いたように幽霊を一瞥してから素早くテリーに伝える。

「この人、成仏するらしいわ」

「なんで!? どこにそんな要素あったん?」

「また大勢でこたつ囲める日が来るなんて思ってなかったからって。今まで寂しくて突っ立ってたけど、なんか満足したから行けそうなんやって」

「未練ってそんな感じで解消できんの!?」

 幽霊事情って本当に人間の常識が当てはまらないらしい。驚いているのはどうやらおれだけだった。

 えっちゃんは顔は相変わらず見えないけれど穏やかな雰囲気で見守っているし、テリーは「よかったなー」とか呑気にぬかしている。なにこのスピード展開。おれだけ仲間はずれになった気分だ。

 疎外感満載のおれに向かって幽霊が笑いかけてきた。悪意のない美しい笑顔。その笑顔を見たら馬鹿なおれは心の中の疎外感が霧散していった。

 だって好みの美人がおれに向かって微笑みかけてるんだ。それが幽霊でも胸がときめいてしまうのは仕方がないと思う。

「本当に綺麗だ」

 素直に心から言った。


『ありがとう』


 幽霊の声だと思う。

 頭の中に女の人の声が響く。

 それと同時に幽霊は強く白く光り、そして余韻を残すことなく消えた。息つく間のない一瞬の出来事だった。

「無事に行けたんちゃう?」

 テリーが言うと、えっちゃんが頷いた。どうやら成仏したらしい。

「かわいい声だったな」

 本気でそう思った。

 色々と迷惑を受けたのに、こんな去り方をされたら文句の一つも言えやしない。二度とこんなクリスマスイブは嫌だけど、このクリスマスイブは一生忘れないだろうなと思った。


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