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テディベアは夜笑う  作者: 鞠目
第五章
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29/30

最高のクリスマスイブの幕開け

「あー寒かった。ただいまー」

「隼人、おかえ……いらっしゃい!」

 無駄に笑顔のテリー。なんだこいつ。帰宅早々つまらないボケが飛んできた。

 本日、十二月二十四日。クリスマスイブ。予定はなし。

 おれとテリーの悲しき男二人組は、朝からだらだらと漫画を読んだり映画を見たりしながら家で過ごしていた。

 クリスマスイブだし、せっかくだから夕飯ぐらいいつもよりいいものが食べたい。どうせならケーキも。でも、家にはカップ麺しかないし、甘味もない。

「テリー、どう思う?」

「せやなあ……カップ麺だけのクリスマスイブはおれ史上一番寂しいな」

「やっぱり?」

 仕方がないので買い出しに行くことになった。

 買い物に行くことは決まった。しかし、家から出たくないおれたち。相談の結果、じゃんけんで負けた方が買い物に行くことになり、おれはあっさりと負けた。

 にやにやと笑うテリーに見送られ、スーパーに向かう。例年よりもきつい寒波のせいで外はめちゃくちゃ寒い。

 クリスマスイブということもあり、当然ながら街はクリスマスムード一色。幸せそうなカップルや家族連れが目立つ。

 イベントでもあるんだろう。サンタクロースや雪だるまのコスプレを集団とすれ違った。服装的に見た目は少し寒そうだがみんな笑顔で楽しそうだ。

 集団とすれ違った時、一人遅れて歩く女の人がいた。血のように真っ赤なワンピース。集団から外れているのもあるけれど、ワンピースのデザインにコスプレ感がないのと、どこかで見たような雰囲気が気になり目に留まった。

 やっぱり既視感があるんだよな……。むずむずしたものが残り、すれ違ってすぐ振り向いた。しかし、遠ざかっていくコスプレ集団の中にそれらしい人の姿は見当たらなかった。

「あれ……見間違いか?」

 狐につままれたような気分だ。でも、どうせ見間違えだろうから気にしないことにした。

 駅前のスーパーに到着。スーパーの中もクリスマスツリーやリースがあっていつもより煌びやかだ。

 溢れかえるクリスマス感を見て、彼女ができる気配のないおれは心まで冷え込んでくる。こんなことならせめて夕方になる前に買い物に行っとけばよかった。

 手早く夕飯用の惣菜とケーキを買っておれはスーパーを後にした。

 心と体共にダメージを受けながらも無事に帰宅。早く夕飯にしたいなーと思っていたらこれだ。

 面白くないボケをかましやがって。なにをふざけてんだこいつは。

「は? なにそれ」

「いやいや、それはこっちの台詞やて。そういうことはもっとはよ言えよ。ねえ、ほんと……すんません、うちの隼人が」

「だからなにが?」

 なにかのネタか? でもこんなコントや漫才は見た記憶がない。1ミリも面白くないボケを重ねられてさらに腹が立つ。

「なにがやあらへんわ。そらクリスマスイブやし一緒に過ごしたいんはわかるで? でもな、わかるけど前もって言ってくれたかてええんちゃうか?」

「だから! テリー、なんの話しとん?」

「ちょ、お前いつまでとぼけんねん! ええ加減にせえよ!」

「とぼけてないわ! まじで意味わからんのや!」

「あーもう、いきなり連れてこられたらおれかて困るやろが! もしかしてあれか? 空気読んで今すぐおれに出て行けいうんか!」

「は? 連れてくるって誰をやねん」

「誰ってお前、失礼すぎるやろ! そんなもん…………え?」

「……え?」

 テリーの顔がすっと青くなる。テリーはおれの後ろを見ている。そこでおれも違和感に気づいた。

 後ろに誰かいる。

 一気に背中に鳥肌が立った。

 慌てて振り向いたけどそこには誰もいなかった。

 一瞬だったけど、間違いなくおれは後ろに気配感じた。あの気配が気のせいとは思えない。

 テリーを見る。ダメ元で目で『冗談やんな?』『気のせいやんな?』と問いかけたら、テリーは残念そうな顔で首を横に振った。

 やっぱり違うのか……おれは頭がくらくらしてため息をつこうとした。

 でも、それはすぐに引っ込んだ。


『次は天気予報です』


 爆音がおれたちは体を大きく震わせた。

 二人同時に廊下の向こうに視線を送る。大音量で女性の天気予報士がつらつらと話す声が聞こえる。

 リビングに向かうとテレビがついていた。急いでリモコンで音量を下げる。いつも半分以下の音量がマックスになっていた。

「おれ、テレビつけてなかったで……」

 テリーはそう言って顔を引き攣らせた。


 ガチャッ……


 次は玄関から。

 鍵を閉める音がした。

 そうだ、テレビの音が気になって、鍵を閉めずにリビングまで来ちゃったんだ。そして、今何者かによってご丁寧に鍵が閉められた。

 ちなみに、おれが家に入ってからドアが開く音はしなかった。あと、鍵を抜き差しする音も。となると考えられることはただ一つ。この家に侵入者がいる。


「なんでクリスマスにこんな目にあわなきゃあかんねん」

 我慢できず声が出た。「ほんまやな」と言いつつも、そんなおれの嘆きに対して「今日はまだイブやぞ」とテリーが細かな指摘をしてきた。

「同じようなもんやんけ……」

 おれはやけくそになってくそみたいなつっこみしかできなかった。


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