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テディベアは夜笑う  作者: 鞠目
第四章
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当然の報い

「さてと、改めまして、久しぶりやな紗織」

 人形を投げ捨てた後、えっちゃんと呼ばれる女は姿を消した。

 テリーと二人だけの部屋。本当なら嬉しい状況なのに、色々ありすぎたせいで気持ちの整理が追いつかない。

「えらいけったいなのに目をつけられたんやな。でも、えっちゃんが数キロ先にぶん投げたからもう大丈夫や思うで」

「そう……ありがとう。そうだ、テリー、こないだ会ったよね? こないだのあなたは人間の姿だったけど」

「せやな、あんなところで会うなんてな。てか、ようおれやって気がついたな。びっくりしたわ」

「私ね、あなたと過ごした記憶をこないだまですっかり忘れてたの。詩織と同じであなたも私になにかしたの?」

「そやなあ……それは秘密や。そんなことより、紗織なんかまたやらかしたやろ」

「やらかした?」

「心当たりあらへん? ストレス発散に色々やらかしたやろ?」

「それは……

「やっぱり。なんかすごい形相で睨みつけられてたで自分」

「睨みつけられてる? 私が?」

「あの人形、一応あんたに危害を加えようとする奴には睨みを効かせてたみたいやわ」

「どういう意味それ? 詩織が私を守ってくれてたってこと?」

「ええように言えばな。自分が遊ぶの邪魔されたくなかったんやろうな」

「じゃあ、詩織がいなくなっちゃったってことは……」

「ファイト!」

「え、待って。テリー助けて」

「無理無理、自業自得やわ」

 テーブルの上のテリーに駆け寄ろうとした。でも、足が動かなかった。見ると歪な形のボーリング玉のようなものが私の足元を囲むようにたくさん転がっていた。

「なにこれ……」

 私が声を出した瞬間、歪な球体に顔が浮かび上がりこちらを睨みつけた。

 性別はわからない。

 土色の球体に目鼻口だけがある。

 どの顔も目は見開いていて、私を鋭い目で見てくる。

 私は悲鳴をあげた。

 でも、その声は響く前にかき消された。

 慟哭だった。

 なにを叫んでいるのかはわからない。

 十を超える頭が空気が震えるのがわかるぐらい大きく野太い叫びをあげた。

 私は耳を抑えしゃがみ込もうとする。

 でも、しゃがみ込むと足の周りに転がる頭との距離が近くなる。

 誰か助けて。

 パニックになりながらも辺りを見回す。でも、助けてくれそうな存在はいるはずもなく、机の上にいたはずのテリーの姿もない。


「ほんまやめとき。いつか後悔すんで」


 テリーの声が蘇る。

 やめとけと言われたけど、私はテリーがいなくなってから衝動を抑えられなくなっていた。その時のどれかの行動がいけなかったのだろうか。

 お供えしてある花束を踏みつけた。祠のようなものにいたずらをした。壁に描かれた鳥居のようなマークにわざと水をかけた……心当たりは色々ある。

 自業自得だ。

 途方に暮れた私は天井を見た。そして目を見開いた。


 顔があった。


 天井にもたくさんの顔があり私を見ている。

 私はそれを見て気を失った。

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