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古代に転生、後宮争いなんてお断り! ——女帝として天下に君臨する  作者: 予也木


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7/21

慎刑司

 杜尋雲が気持ちよく横たわっていると、ふと体の前がぽっかりと空き、微かな風が吹き込んできた。

「もう三時?」

「はい、主子。」若竹が忍び足で身支度を整える。

「うーん……なんて言えばいいんだっけ……」

「奴婢は心得ております。」

「ん……」杜尋雲はまだ頭がぼんやりしていた。午前三時といえば、太監や宮女たちが水仕事に追われる時間だ。五時頃には主子の着替えを整え、早朝の挨拶に間に合わせねばならないため、早く起きるに越したことはない。水桶を洗ったり水を捨てたりする際も、主子の眠りを妨げないよう、わざわざ遠くまで往復するのだ。

 もっと気楽な現代なら、誰もがギリギリに済ませればいいやと、あと一時間は寝ているだろう……杜尋雲は若竹の背中を見送りながら思った。若竹はこれから外へ出て聴蘭と素梅の様子を見回り、また戻って夜の当番を続けなければならない。二人は蕭貴人の仕事のほかに、貴妃娘娘(きひニャンニャン)の雑用も兼任しているため、若竹は二人が持ち場にいるか確認する必要があった。聞くところによると、本来なら貴人には四人の宮女がつくはずなのだが、ちょうど先頃、貴妃娘娘に何人か解雇され、人手不足に陥っているのだという。だが杜尋雲としては、減らされてかえって清々していた。あまり大勢に囲まれるのは息が詰まる。

「忙しいわね」杜尋雲が目を細めると、若竹が足早に、しかし音もなく戻ってきた。

「主子にお仕えできて、奴婢は嬉しゅうございます。」若竹は蕭雁綾の掛け布団を整え直した。

 なんて巧みな返答だろう。杜尋雲は唇をすぼめた。どこまでが本音でどこまでが建前か、元の世界での経験に照らせば九十九・九パーセントは嘘だろう。

 だが睡魔には勝てず、再び目を閉じて眠りに落ちた。

 ……

「主子、お起きになるお時間です。」

 杜尋雲がゆっくりと目を開けると、陽はすでに高く昇っていた。少なくとも七時にはなっているはずだ。この世界に来てから一番の熟睡だった。

 いっそ仮病を使って、朝の挨拶をサボってしまおうか……彼女は心の中で呟いた。

「本日は慎刑司へ向かわれますが、どちらをお召しになりますか。」

 聴蘭と素梅が盆を掲げて進み出た。そこには四着の異なる色鮮やかな衣装が並んでいる。杜尋雲は迷うことなく、最も濃い緑色を選んだ。

 行く先が清潔な場所でないことは分かっている。薄い色を着て汚れを目立たせたくはなかった。

「ふぅ……」

 太監たちが再び「猫砂用の桶」を抱えて現れた。

 これにすら慣れ始めてしまった。砂の敷かれた木桶を見つめ、感慨に耽りながら腰を下ろす。当初は少しばかり我慢していたものだが、若竹にすぐ見咎められ、頻繁に太監を呼んで替えさせるものだから、彼女も開き直って受け入れることにしたのだ。用を足したい時に呼べば、奴らもむしろその方が理にかなっていると満足するらしい。

 両腕を広げ、先ほど選んだ衣装に袖を通す。

 見事なまでの漢服だった。

 とんでもない。

 漢服の展示会にそのまま並んでいそうなほど典型的なものだ。

 そして選ばなかった衣装の中には、明らかに少数民族の様式が見受けられた。

 この目で確かめねばならないという思いが、いっそう強くなる。

 一人の小太監が扉の前でずっと跪いていたが、杜尋雲が着替え終え、宮女が扉の枠を軽く叩くと、ようやく戸越しに声を上げた。

「主子、段太医がお門の前でお待ちにございます。」

「分かった、行きましょう。」杜尋雲は大股で歩き出した。久しぶりの散歩になるかと思いきや、扉の外には華美な紅木の腰掛けが据えられていた。座面には蓮と瑞雲の刺繍が施され、両脇には太い担ぎ棒が通されている。彼女が敷居を跨ぐや否や、二人の太監が慌ただしく前後へ駆け寄り、腰を落として輿を持ち上げる体勢を取った。

 はぁ……彼女は胸中で溜め息をついた。だがここで断れば怪しまれるだけだ。過剰なほど背もたれの傾いた椅子に腰掛けると、まるでパソコンチェアに身を預けるかのように、半ば寝そべった体勢で担ぎ上げられた。

 段衡は終始頭を垂れて脇に控えていたが、挨拶の口を開きかけたところで遮られた。

「堅苦しい挨拶はいいわ。今日は残業させてごめんなさいね。」

「……」

「……」

 太監たちは何を言われているのかさっぱり分からぬといった顔で歩き出した。

 若竹が輿の斜め後ろに付き従う。歩みは速くも遅くもなく、道の曲がり角という曲がり角には、必ず護衛の兵が立っていた。

 そしてこの輿の傍らにも二名が付き添い、甲冑が擦れ合ってカチャカチャと金属音を響かせている。

「大げさすぎるでしょ……」杜尋雲は小さくぼやいた。タイムスリップしたあの日も、道中には護衛がついていたのかもしれない。それなのに自分が慌てて飛び出して間に入ったものだから、あの大阿哥(第一皇子)はあんなにも信じられないといった顔をしていたのだろう。

 慎刑司は深宮にはない。

 杜尋雲は高くそびえる正殿に背を向け、遠ざかっていった。ただ、道は実に行き届いて平らに舗装されており、彼女のいた時代のような、観光地と化した紫禁城の趣とは異なる。目に入るすべてが真新しく、「歴史の重み」といった風情はない。朱色もまた、目に痛いほど鮮やかだった。

 揺られること二十分余り、途中で眠気すら覚えた頃、幾度も角を曲がり、いくつもの円形アーチをくぐり抜けると、周囲の空気がかすかに変わり始めた。下人たちの密やかな囁き声が耳に届く。

 道の尽きる門の前で、謝鸞が腰の剣に手を添えて待っていた。

 ここが最後の宮壁であり、慎刑司の裏手は外の通りに直結している。

 輿が下ろされると、謝鸞はすかさず一礼した。

「蕭貴人にご挨拶申し上げます。」

 杜尋雲は地に足をつけ、背筋を伸ばした。「面を上げよ。」と言ってみたものの、これで合っているのか自信はない。

「感謝いたします、貴人様。」謝鸞は剣の柄に手を置いたまま言った。「太監どもに清掃させましたので、安心してお入りください。」

 彼女が扉を押し開き、脇へ退く。

 鼻を突く異様な酸臭が漂い出し、若竹ですら思わず口元を押さえた。

 だが杜尋雲のほうは、その強烈な臭いに脳髄を衝かれ、かえって意識が冴え渡った。

 よく知っている匂いだ。

 ――傷口が腐敗した臭気。

 血。

 感染。

「蕭貴人にお目にかかります、禄康楽(ろくこうらく)と申します。」赤い官帽を被った男が現れ、拱手した。

 杜尋雲は息を呑んだ。この男が身に纏っているのは濃紺の長袍で、胸元には四角い色鮮やかな補子(ほし)が縫い付けられ、赤や緑の中に一対の白い鳥が描かれている。

 ――清朝の満洲貴族が着る官服だ。

 杜尋雲は動揺を抑え、奥へと歩みを進めながら尋ねた。「ここには何人いるの。」

「蕭貴人に申し上げます、三十五名にございます。」

 道理で凄まじい臭いがするわけだ。杜尋雲は袖を持ち上げた。

「蕭貴人、こちらに匂い袋を用意いたしました。」

 杜尋雲は差し出された小さな布袋を受け取った。

「こちらへどうぞ。」男の一行を案内して狭く長い通路を進む。もはや日の光は届かず薄暗がりが広がり、壁の材質すら判然としない。踏みしめる地面はただ湿り気を帯びていた。男が一つの内扉を開け、数歩進んで、さらにもう一つの扉を開ける。

 若竹はずっと俯いたまま、顔を上げようとしなかった。

 杜尋雲は意に介さず言った。「大丈夫よ」

 あの若い侍衛は薄い白衣を一枚羽織らされただけで、寝台の板に縛り付けられ、中庭の中央に立てかけられていた。四角く区切られた空間を、槍を手にした獄卒たちが取り囲んでいる。

 入り口に近い場所には、立派な椅子が一脚置かれていた。背もたれの彫刻は、この場のどの木工品よりも精緻を極めている。

「貴人様のお越しに合わせ、誂えておきました。」禄康楽は一礼し、脇へ下がって控えた。

 杜尋雲は腰を下ろさず、小股で歩み寄った。

「私は、あなたを取り調べに来たんじゃないの。」

 若い侍衛が顔を上げた。杜尋雲の目に狂いはなく、近くで見ても十八歳そこそこにしか見えない。

「あなたは大阿哥から下賜された私の奴才よ。私の所有物なの。勝手に死なれては困るのよ、分かった?」

 彼はかすかに唇を震わせたが、声にはならなかった。

「段衡。」杜尋雲は太医を呼び寄せた。「診てあげて。」

 段衡は一瞬たじろいだ。覚悟はしていたものの、貴人たる者がこうも直接的だとは思いもよらなかったのだ。通常、宮女や太監を診察する医官は、彼よりずっと身分の低い者たちである。

 彼は歩み寄り、杜尋雲をちらりと見上げた。

 杜尋雲は振り返りもせず命じた。「若竹、後ろを向いていて。」

 若竹は命に従い、背を向けた。

 段衡は薬箱を下ろし、侍衛の白いズボンをそっと引き下ろした。

 杜尋雲は匂い袋を鼻先に押し当てた。

 ……やはり。

 全切除だ。

 無惨に広がった傷口は、何層もの肉が裂け爛れている。

 その真ん中の尿道には、短い柳の小枝が一本突き刺さっていた。

 杜尋雲は清代に技術が向上したものの、全切除を行うようになったせいで死亡率が跳ね上がったという話を聞いたことがある。どうやら、この世界の文化も現実と変わりないようだ。

「癒着しているわね。どう処置するか分かる?」杜尋雲は身を寄せて段衡に問うた。

 段衡は生唾を飲み込んだ。貴人のような身分の高い女人に、ここまで間近に迫られるとは思ってもいなかったのだ。

「蕭貴人に申し上げます。象牙、あるいは金属の棒を用いて剥離いたします。」

「煮沸消毒してから使うの?」

「はい。あるいは高粱酒(コオリャンしゅ)を用います。」

 段衡は箱から十五センチほどの陶器の小瓶を取り出した。蓋を開けるとアルコールの匂いが漂う。だが杜尋雲の感覚からすれば、度数がまるで足りなかった。

 予想通り、この時代の死因の大半は感染の悪化による多臓器不全だ。

「私が手本を見せるわ。」杜尋雲は匂い袋をしまい、手のひらを差し出して、段衡の持つ薬をすべて渡すよう求めた。

 段衡は驚きのあまり薬瓶を置くや否や、後ずさりして平伏した。

 全切除による生々しい傷口、平伏する太医。この光景を目の当たりにし、杜尋雲は確信した。この世界は表面上こそ文化が融合しているように見えても、底辺の民に対する支配は元の世界と寸分違わず徹底されている。反清復明を警戒し、官吏が漢服を着ることすら許されているような場所だからこそ、いざという時の残酷さは元の歴史よりも苛烈なはずだ。市井には常軌を逸した重税が課されているに違いない。

 彼女は度数の足りない酒を手に取り、段衡によく見ておくよう命じた。

 この時代には微生物という概念が存在しない。

 彼女の消毒範囲は、太医たちの常識を遥かに超えていた。侍衛は歯を食いしばって激痛に耐える。

 彼女は鉗子で柳の枝を取り外した。「これは清潔な金属製のものに替えなさい。」

「ははっ。」

「毎日ここへ来て、同じように処置すること。」

 地に伏した段衡の目には、異様な光を帯びた涙が浮かんでいた。杜尋雲は袖から一枚の紙を取り出した。

「これは家に伝わる蒸留の術よ。酒の度数を高めることができるわ。」

 段衡は頭を垂れ、両手で恭しく受け取った。「娘娘、ありがたき幸せ……」

「礼には及ばないわ。」

 彼が再び顔を上げる。

「これは、あなたの発見よ。」

 杜尋雲は、その場の全員が息を呑んだのを肌で感じた。

 誰もが身を硬直させている。

 空気の流れさえ止まったかのようだった。

「生肌薬は毎日薬房から新しいものを取り寄せ、一度塗布に使ったへらは絶対に容器に戻さないこと。残りは毎日処分し、毎日新しいものを使いなさい。」杜尋雲は無菌操作の原則をいちいち説明するのは億劫だったので、ただ段衡にそれだけを叩き込んだ。

 そして全員が見ている前で、薬箱の上に銀を一塊置いた。

「今回の処置は、日ごとに記録し、日ごとに報告し、すべての知見を一冊の手引きにまとめなさい。」

 段衡は顔に浮かんだ驚愕を隠しきれなかった。

 杜尋雲は部屋を見渡した。貴人にとって、これくらいの銀子など大した額ではない。

 周囲の者たちは、不用意な表情を作って咎められるのを恐れ、首筋を強張らせて直立不動のままだ。

 彼女は板に縛り付けられた男へ顎をしゃくった。「あなたが一番近くまで刺客を追いかけたのね。だから報告に来た。そうでしょう?」

「はい……」彼の声は消え入りそうだった。

「あの隊の中で、一番足が速かったの?」

「はい……」

 やはりそうか。組織において最も割を食うのは、いつだって中堅どころだ。働けば働くほど、落ち度も増える。どの世界へ行っても、この理不尽な構造は変わらない。

「名前は?」

「属下……いえ……奴才には……名などございません。」

 背後から謝鸞が一礼して口を挟んだ。「蕭貴人に申し上げます。この手の奴才は、将来の出世を祈念し、縁起の良い名を買い求める習わしにございます。」

 はぁ……杜尋雲は胸中でため息をついた。やはり目に見えないところで、徹底的に締め付けられているのだ。

「もともとは何て呼ばれていたの。」

「奴才の名は、明斯(めいし)と申しました。」

「なら、それでいいわ。明斯。」杜尋雲は太医を立たせた。「ここを出たら、あの子のために儀式を執り行ってやって。」

「御意。」

 杜尋雲は両手を広げてみせた。「これで縁起も良くなったでしょ。」

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