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古代に転生、後宮争いなんてお断り! ——女帝として天下に君臨する  作者: 予也木


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17/21

女の命

 杜尋雲は承華宮・正殿の大広間の中央にある椅子に腰を下ろしていた。

 椅子は、今日になってようやく運び込まれたものだった。内務府が届けた品で、紫檀の骨組みに秋香色の椅子掛けがかけられている。背もたれには五福捧寿の彫り物があり、肘掛けには彫刻を施した銅板が貼られ、座面には厚手の錦緞の座布団が敷かれていた。座り心地自体は悪くない。ただ、背もたれが高すぎるのだ。体を預けても頭が中途半端に宙に浮いて、腰を伸ばしてきちんと座っているほかない。まるで椅子に骨格ごとはめ込まれたみたいで、だらりと崩れることを許さない。

 この椅子がここに置かれているということは、規矩の象徴だ。


 朝の問安を終えてここへ戻れば、貴人や答応たちは位階の高低に従って順番に入って礼を取る。彼女がここに座っていれば、そこは一宮の主である。

 杜尋雲はわずかに息を吐いた。昼食の格は確かに上がった。冷菜四品、熱菜八品、汁物二種、それから材料が分からない羹が一椀。宦官が料理名を唱え上げたとき、二十字以上の名前を口にしたが、杜尋雲が覚えたのは最初の二品だけだった。毎日これを食べていれば、背が伸びるどころか、顔が丸くなりそうだ。

 彼女は目を閉じ、少しでも静かにしたいと思った。

 雷公藤の件が頭の中をぐるぐる回っていた。蕭雁綾はなぜあんなものを隠していたのか。現代式に調製された雷公藤には確かに生殖毒性がある。だが、ここは古代だ。精製技術が乏しい以上、粗い製法のものなら、可能性としてはむしろ肝臓や腎臓を直撃する。

 ――ただ一つだけ、例外がある。もともと使用者自身が免疫性の強い炎症、例えば蛋白尿を伴うような腎疾患を抱えている場合、臨床でようやく用いる余地が出てくる。

 だが、後宮の一人の女に蛋白尿などあるだろうか。この時代はそもそも、蛋白そのものを知らないのだから。

 杜尋雲は目を開け、高々と持ち上がった梁を見上げた。彫りの施された梁と桁が幾重にも重なり、斗栱はすき間なく噛み合い、一番上には彩色された蓮の文様が描かれていた。色はすでに少しくすんでいる。


「若竹」

 若竹は脇の小部屋から音もなく出てきた。

「明日、以前蕭雁綾のために薬を買ってくれた太医を呼び出してくれ」

 若竹はわずかに手元を止めた。

「娘娘のおっしゃるのは、蕭府が普段使っているお方ですか」

「ええ。蕭雁綾にどんな処方を出していたか、知りたいの」

「はい」

 若竹は何も訊かず、ただ応えた。

 杜尋雲は少し考えて、もう一言付け加えた。

「来客用の椅子を用意しておいて。そろそろ謝鸞が来ると思う」

「はい」


 若竹は退がって、人に椅子を運ばせるよう命じた。杜尋雲は高すぎる紫檀の椅子に一人で座り、指が扶手上を何気なく二回叩いた。

 やがて一時間も経たないうちに、殿の外から宦官の通報が響いた。

「謝大人がお見えです――!」

 謝鸞は盆を掲げた宦官を一人連れ、面会を求めてきた。

 杜尋雲と目が合った。いつもとは違う神色を、彼女は感じ取った。

 その口元の弧は、以前宮中の礼儀作法を教えに来たときのような軽さではなかった。


 ……


 烏龍茶は半発酵茶で、緑茶と紅茶の中間に位置する。花香、果香、蜜香、炭火香が幾層にも重なり、茶湯は黄金色から琥珀色に澄み、口当たりは醇かで甘い余韻が長く、喉奥に深く沁みる。蕭雁綾は武夷岩茶と鉄観音を好み、特に焙煎の後に残る温かみを愛していた。

 黒茶は、渥堆が肝心だ。長時間発酵させ、色は黒褐、湯色は赤く濃く、味わいは醇和で厚みがあり、独特の陳香を帯びる。だが蕭雁綾は、どうしてもあの香りが駄目で、「湿った地下貯蔵庫をひと口飲んだみたい」と言った。

 黒茶は長く保存が利く。だが新茶を浅く淹れれば色はかなり淡くなり、濃い烏龍茶とは真偽の見分けがつかない。


 謝鸞は人を皆退かせ、内務府の片隅で静かに福建から届いた貢茶を開け、中身を捨て、雲南産の茶葉を詰め替えた。

 蕭雁綾の好みを謝鸞がよく覚えているのは、内務府がかつて茶を間違えて贈った際、蕭雁綾が香りをかいだだけで全部差し戻したからだった。

 主人たちの気むずかしさは、宦官たちによって記録されていた。

 彼らは同じ間違いをすれば、いつか月給を罰せられるのではないかと怯えていた。

 謝鸞は慎重に封をし直し、端の継ぎ目をぴったり合わせた。銀紙に赤文字。

 新しい烏龍『岩茶』が誕生した。謝鸞は蕭雁綾にすぐ見破られることは、さほど恐れていなかった。かえって、以前と同じように怒り出す蕭大人なのかどうか、見てみたかったのだ。

 たとえ咎められても、責任は包装の問題にできる。

 責任者を特定しにくい。


 ……


 杜尋雲は、どういうわけか茶を味わう必要があるらしいと思った。だが差し出された以上、これも儀礼の一環なのだろう。

 宦官たちが湯を淹れるのに忙しく、謝鸞は横の客席に座って微笑んでいた。

 若竹は杜尋雲の傍らに立ち、わざとらしく喉を清めた。

 杜尋雲は何かおかしいと感じた。若竹は控えめで礼をわきまえている女だ。咳をしたくても我慢し、あるいはそっと横を向く。

 宮に入ったばかりの小さな宦官が、謝鸞の付きの宦官に代わる仕事を取り仕切ろうと先を争い、小さな杯にそっと茶を注いだ。

「小人が大人方のために毒見をいたします」

 謝鸞は手をひらりと広げ、『どうぞ』と言わんばかりの仕草をした。

 ――どうやら私は、毒見が必要な身分にまで上り詰めたらしい。

 杜尋雲は頷いた。

 小宦官は一口飲み、数分間、傍らに立って待つ。

 別の宦官が「贈り物」を持って片方へ退いた。


「謝大人、今日はどのような御興があって、こんな場所で茶を味わうのですか」

 杜尋雲は頭の中で、謝鸞の普段の行動を整理した。謝鸞は宮中の掟に従って事を運ぶ女だ。ここでは貢茶を献上して礼を取るだけで済むはずだ。

「蕭娘娘、今日は嬪に昇ったのですから。これから宮内の事務はすべてあなたが処理されるでしょう。このように会って話す機会も、もう難しくなるかもしれません」

 謝鸞が話している間、若竹は指を強く握りしめているのに杜尋雲は気づいた。

 何かまずいのか。

 自分の宮で仕える小宦官が茶碗を捧げ持ってきた。茶湯は赤く澄み、香りは濃厚だった。

 杜尋雲はこれがプーアール茶のように思えた。だが、どういうわけか謝鸞は含みのある笑みを浮かべていた。

「そこに置け」

 杜尋雲は手元の小さな机を指した。

 若竹の握りしめていた指が、いくらかほぐれた。


 ――飲んではいけないのか?

 杜尋雲には飲んではいけない理由が思い浮かばなかった。まさか好き嫌いの問題ではあるまい。もう子供ではないのだから。


 彼女は茶をひと目見て、改めて視線を謝鸞へ戻した。

「謝大人は普段、宮の外へ出るのですか」

 謝鸞はどこからともなく飛んできた質問に、当てられたように答えた。

「年に十日、休暇を取って外へ出られます」

 確か自分のいた世界では、明清朝時代、女官は宮女と同じく宮を出ることが許されず、官職があっても侍寝を強いられ、宮の中で老いていった。記憶が正しければ、だ。

 この世界は文化面で少し開放的なようだ。

「謝大人」

 杜尋雲は手を茶盏へ伸ばし、様子だけ見せて持ち上げ、指先で杯の縁をそっと撫でた。

「ひとつ分からないことがあり、教えていただけますか」


 謝鸞の微笑みは以前のままだった。落ち着き払っていて、磨き上げられた銅鏡のように、奥の筋目を映さない。


「どうぞ、娘娘」


「わが朝の宮中の掟では、宦官は三年務め上げれば、いつでも外へ出るを申し出られる」杜尋雲の落ち着いた視線は謝鸞の顔に据えられたままだった。「宮女は二十五歳まで勤め上げ、初めて去就を自ら選べる。女官は――一旦任じられれば、一生仕えるのです。謝大人、これは合理だと思いますか」


 謝鸞の睫毛がかすかに揺れた。


「祖法の定めには、当然の理があります」

 彼女はゆるやかに答えた。


「宦官が出宮できるのは、家族を持たない身だからです。故郷へ帰れば自ら生業を立てられます。宮女は違います。宮中で礼法を学び、主人に仕えるのです。二十五歳はちょうど婿を迎える年齢です。外へ戻されれば、家庭を持てます。女官は……」

 彼女は一瞬言葉を切った。

「女官は朝廷の命を受けた官です。君の禄を食む者は、君のために尽くします。任じられた以上、宮を家とするのは当然です。それは朝廷の配慮であり、規矩でもあります」

「配慮、ですか」

 杜尋雲は二文字を舌の上で転がした。まるで飲まなかった茶を味わうように。

「宦官は三年で出られるくせに、宮女は二十五まで耐え、女官は一生宮に閉じ込められる。謝大人、あなたは宦官には家族の累がないと言いましたね。でも、二十五歳で出された宮女に、必ず帰る家があるとでも? 父母が亡く、兄弟がもう家を別にしていれば、十几年も宮で過ごした女は、外へ出て誰に嫁ぎ、何を頼りに生きればよいのです」

 謝鸞の笑みが薄れた。

「女官については」

 杜尋雲の声は大きくなかった。だが言葉のひとつひとつが、ずしりと重みを持って迫った。

「朝廷の百官と比べて、あなたに及ばぬところなどありません。なのになぜ、終日後宮に留まらなければならないのです」

「娘娘の言うのは人情です。ですが朝廷が案じるのは、安定です」

 謝鸞は座席の上で拱手の礼を取った。


「前朝の先例から見ても、女が政に口を出せば、天下は乱れます」

 杜尋雲は目の前の美しい女が、最も聞きたくない言葉を一文字ずつ吐き出すのを見た。茶盏を元の場所へ戻し、指先を杯の縁から離すと、手を扶手へ戻した。

「謝大人、古今を見ても、女には家庭を重んじるよう躾け込み、政治の教育から遠ざけ――いや、あらゆる教育から遠ざけてきました。読書の機会を男児にだけ与え、女にはあらゆる場で歌い踊り、杯を交わすことしかさせない……」


「トントントン……」

 木が金属を噛むような音が、断続的に響いた。


 杜尋雲が声のした方へ目をやると、謝鸞が連れてきた宦官が捧げている呈物盆が震えていた。袖口がまともに整えられず、盆と、その上に茶葉を載せる架が、喧嘩でもするかのようにぶつかっていた。

 謝鸞は音に耳を貸さず、ただ蕭雁綾を見上げていた。その目には初めて、何か鋭いものが現れた。鞘に収まった刃が、半寸だけ引き抜かれたような鋭さだった。


 杜尋雲は自分の性分をよく知っていた。こんな美人と長く居れば、心が傾くのは必然だ。

 ただ、ここまで気が合わないとは思わなかった。

「謝大人、この茶は本宮の口に合いません」

 杜尋雲は目を閉じた。

「次からは持ってこなくてよい」

 女官に近づき、変化を探るにしても、もっと適した相手を見つけなければならない。

 謝鸞の社交辞令を聞く気も起きず、杜尋雲は冷たい顔のまま彼女が去るのを待った。


 謝鸞の気配が宮殿の隅々から消え去ると、宦官たちが動き回り始めた。その時、若竹はどさりと膝をついた。

「どうした」

「娘娘……敵を作ってはいけません、娘娘……」

「この程度で、敵になるのか」

 杜尋雲は病院で上層部とも大小さまざまな論争を何度も繰り広げてきた。これくらい激しいものではない。


「娘娘」

 若竹はどういうわけか涙を浮かべていた。

「この世界では……この時代では、女の命は安いのです、娘娘……決して目立ってはいけません、娘娘……」

 彼女の手は震えながら、蕭雁綾の手を握った。

 宮女としての礼儀ではなかった。

 だが杜尋雲には、その手の熱さだけがひどく伝わってきた。

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