第23話 効かない畑
「白嶺の外でも、同じように育つのでしょうか」
アリアの問いに、誰もすぐには答えなかった。
男爵領へ向かう荷馬車の前には、温室で使ってきた白い粉が、小さな蓋つきの壺に分けて置かれている。
第1坑で見つけた微細な結晶粒ではない。あちらは今も、ディートたちの見張る石蔵で、結晶保管一号の箱に収まっている。
今回持ち出すのは、共同浴場の湯口に残る沈殿物を乾かし、マルタが温室でほんの少しずつ使ってきた方だった。
「分からないから、行くんだろう」
マルタはそう言って、荷馬車の端へ腰を下ろした。
「よその畑まで面倒を見る歳じゃないよ。けどね、素人に勝手に撒かせるくらいなら、見張りに行く」
「誰も勝手には撒きませんよ」
ルークスが苦笑する。
「そう言う奴ほど、目を離すと多く撒くんだ。効くものなら、たくさん使えばもっと効くと思ってね」
その横で、アルヴィンが細長い木箱を荷台へ持ち上げようとしていた。
中から硝子の触れ合う音がする。
「先生、それは何ですか」
「土の湿り方を比べる器具と、乾燥後の重量を量る秤と、観測器具の予備と、採取土を分ける容器です」
「置いていきな」
マルタの返事は速かった。
「しかし、条件を正確に記録するには――」
「畑を測る前に、馬を潰す気かい」
レクス・ノアが、山のような木箱を見上げた。
「あるびん、荷物いっぱい」
「測定器具だ」
レクスが訂正する。
「いっぱいの測定器具」
「そこは正しい」
結局、マルタは木箱を開け、半分以上の器具を降ろした。
アルヴィンは一つ下ろされるたびに何か言いかけたが、最後には小さな箱を抱えて黙り込む。
アリアはその姿に笑いそうになりながら、白い粉の壺へ目を戻した。
温室では、葉の色が濃くなった。弱っていた苗が持ち直したこともある。
けれど、それは白嶺の土と水のそばで起きたことだ。
「育つとは、言わないようにします」
アリアは壺の蓋を確かめた。
「育つかどうかを、調べに行く、そうですよね」
* * *
男爵領の試験地には、四つの顔を持つ畑が並んでいた。
灰色がかった硬い畑。踏むと靴底へ湿った土がまとわりつく畑。風が通るたびに表面が乾く畑。そして、黒く柔らかな土の畑。
白嶺より空気は暖かい。それでも、どの畑も豊かというわけではなかった。
「こんな小さな子が決めるのか」
集まった農民の中から、低い声が漏れた。
誰が言ったのかは分からない。
アリアはつま先へ力を入れた。農民たちの顔が、いつもより高いところに並んで見える。
隣に立つルークスは口を挟まなかった。マルタも腕を組んだままだ。
アリアは両手で記録帳を持ち直した。
「育つとは、言えません」
ざわめきが止まる。
「白嶺では、良くなった野菜がありました。でも、こちらでも同じかは分かりません。育つかどうかを、調べに来ました」
期待した答えではなかったのだろう。農民たちは顔を見合わせた。
やがて、土のついた前掛けをした若い女が一歩出る。
「では、育たないこともあるんですか」
「はい」
アリアは頷いた。
「それでも、畑を貸していただけますか」
女は自分の畑を振り返った。硬く痩せた土に、まだ小さな葉野菜の芽が並んでいる。
「リーザです。うちは、あそこしかありません」
声には、断りたい気持ちと、断れない気持ちの両方が混じっていた。
「全部は使いません」
マルタが初めて口を開いた。
「試すのは細く分けた場所だけだ。何も撒かない場所も残す。駄目なら、すぐ止める」
「それなら」
リーザは畑をもう一度見てから、頷いた。
「わしのところも使え」
今度は、白い髭の老人が前へ出た。
「ヘルムだ。こっちは長く土を作ってきた。あの痩せ畑と同じ結果になるか、比べりゃいい」
マルタが老人の差し出した手を握る。
「話が早くて助かるよ」
ヘルムはアリアへ目を向けた。
「効かん時は、効かんと言えるんだな」
「はい」
今度の返事は、少しも揺れなかった。
* * *
細い縄で畑を分け、木札を立てる。
何も使わない場所。ごく少し使う場所。マルタが白嶺で使ってきた量。そこから少し増やした場所。そして、害が出る量を確かめるための場所。
「最後のは、やらなくてもいいんじゃないか」
若い農夫が、白い粉の壺を見ながら言った。
「畑を傷めるかもしれません」
「だから、小さく試すんだよ」
マルタは、畑の隅に切った区画を指した。
「誰かが家へ持ち帰って、たくさん撒いてから枯らすよりはましだ。ここで見て、皆で覚える」
若い農夫は渋い顔をしながらも、過剰区画の木札を深く差し込んだ。
アルヴィンはその横で、記録帳へ項目を書き足している。
「畑の位置、土の色、硬さ、水はけ、作物の種類、使用量、散布日、発芽日、葉色、葉数、茎の長さ、根の長さ、根の重量、枯死株数、それから朝夕の気温と――」
「待ちな」
マルタが帳面を取り上げた。
「こんなもの、誰が毎日書くんだい」
「正確な比較には必要です」
「先生が帰った後は?」
アルヴィンの口が止まる。
リーザが申し訳なさそうに手を上げた。
「字は、少しなら読めます。でも、畑の仕事が終わってから、これを全部は……」
アリアは帳面を覗き込んだ。
細かな文字が一面に詰まり、見ているだけで息が苦しくなりそうだった。
「先生の記録と、畑の記録を分けませんか」
「分ける?」
「先生は詳しく書きます。畑の方には、毎日続けられることだけを書いていただきます」
アリアは余った紙へ、大きな丸を描いた。
「良ければ、丸」
隣に三角を書く。
「変わらなければ、三角。弱ったら斜めの線。枯れたら、黒く塗ります」
「これなら書ける」
リーザが紙の上の印を指で追った。
「水をやった日と、粉を使った量も残そう」
ヘルムが言う。
「量は匙じゃ駄目だ。家ごとに匙の大きさが違う」
マルタは荷物から、同じ大きさの小さな木の計量器を三つ出した。
「だから持ってきた。一杯を一つとして、半分なら印を半分まで塗る」
アルヴィンは自分の帳面と、農民用の紙を見比べた。
「観測を続ける人がいなくなっても、記録は残る」
「はい」
マルタの手元を感心したように見ていたアリアは頷く。
「調べる人がいなくなっても、続けられる形にします」
アルヴィンは眼鏡を押し上げ、農民用の台帳にも日付と区画番号だけを大きく書き入れた。
「では、私の方は詳しく。こちらは、毎日続けられるように」
「やっと畑で使える帳面になったね」
マルタが返すと、農民たちの間から小さな笑いが起きた。
* * *
最初の三日間、畑には何も起きなかった。
五日目も、大きな差はない。
七日目の冷えた朝、リーザが宿へ駆け込んできた。
「葉が、違います」
靴についた泥を落とす間も惜しむ声だった。
アリアたちはすぐに畑へ向かった。
息を切らして畝の前へ着くと、細い縄の向こうで、葉野菜が朝露を抱えている。
何も使っていない区画では、いくつかの葉が冷えに負けて地面へ伏していた。
ごく少量と基準量の区画は、芽の高さが揃っている。葉の緑も、隣よりわずかに濃い。
「元気」
レクス・ノアが畝の間から覗き込んだ。
「比較対象より成長が早い」
「葉っぱ、勝ってる」
「畑は競走じゃないよ」
マルタは膝をつき、葉を一枚ずつ裏返した。土を指でよけ、根元まで確かめる。
「まだ早い。葉だけ元気で、根が弱いこともある」
アルヴィンはすでに帳面を開いていた。
「発芽の揃い方、葉色、朝の萎れ方に差。基準量の区画で最も明確。根は――一本だけ抜いて比較しても?」
リーザが頷く。
マルタはそれぞれの区画から、同じくらいの位置にある苗を一本ずつ選んだ。
土を崩さないように抜くと、基準量の苗は、何も使っていない苗より根がわずかに太かった。
ほんの少しの違いだった。
それでも、リーザは口元を両手で覆った。
「冬までに採れる分が増えたら、子供に残せます」
喜びより先に、その目へ不安が浮かぶ。
「でも、うちだけ、こんなに良くなっていいんでしょうか」
アリアは答えられず、隣の畑へ目を向けた。
同じ粉を使ったからといって、同じように育つとは限らない。
それを確かめるために来たのだ。
「ヘルムさんの畑も見ましょう」
* * *
ヘルムの畑では、木札がなければ区画を見分けられなかった。
何も使っていない場所も、基準量を使った場所も、葉の色はほとんど同じだ。
乾きやすい畑では、さらに差が薄い。表面の土を指で崩すと、粉の白ささえほとんど残っていなかった。
「うちには効かんらしいな」
ヘルムはしゃがみ、黒い土を一握り取った。
「悔しくないのですか」
アリアが尋ねると、老人は鼻を鳴らす。
「土は毎年、同じ顔をせん。効かんものへ意地を張っても、腹は膨れんよ」
手の中の土を戻し、リーザの畑を顎で示した。
「必要なところに効いたなら、それでいい」
リーザは何か言おうとして、深く頭を下げた。
レクス・ノアが二つの畑を見比べる。小さな首が右へ、左へとゆっくり動いた。
「灰、ひいきした?」
「違う」
レクスが答える。
「土が受け取れる量が異なる」
「こっちは、おなかいっぱい?」
「概ね近い」
「では、リーザさんの畑は、おなかがすいていたのですか」
アリアが尋ねると、アルヴィンはすぐには答えなかった。
「説明としては近いかもしれません。ただ、土の成分だけとは限りません。水の残り方、乾き方、作物の種類も違います」
観測器具を畑の端へ置く。
硝子管の液面は、白嶺で測った時ほど大きく動かなかった。
レクス・ノアは地面へ鼻先を近づけ、短く息を吸う。
「白嶺より、しずか」
「反応が薄い」
レクスの声が続いた。
「白嶺から離れたからですか」
「可能性はある」
小さな前足が乾いた土を踏む。
「粉だけでは、流れを作れない」
「距離も記録します」
アルヴィンは帳面へ新しい行を作った。
「ですが、今は候補の一つです。距離だけが原因なら、リーザさんの畑にも効かないはずですから」
効く畑と、効かない畑。
どちらも、同じ紙へ並べて書かれていく。
* * *
十日目、多めに使った区画の葉は、誰の目にも分かるほど伸びていた。
最初に見た若い農夫は、昨日まで得意そうにしていた。
けれど、その朝は畝の前で青い顔をしている。
葉先が茶色く縮れていた。
根元へ触れると、茎が頼りなく揺れる。一本抜いた苗の根は浅く、横へ広がらないまま途切れていた。
過剰区画では、芽を出さない種もある。湿りやすい土の表面には、溶けきらなかった白いものが薄く残っていた。
「俺が枯らしたんですか」
若い農夫が絞り出すように言った。
「少ないより、多い方が効くと思って……。俺が、この区画を担当したから」
周囲の視線が、青年と白く残った土の間を行き来する。
アリアは畝の中へ入り、弱った苗のそばにしゃがんだ。
触れた葉先は乾き、指の腹でかすかに崩れた。
アリアは手を引き、膝の上で一度だけ握った。
若い農夫の顔を見上げた。
「違います」
アリアは立ち上がった。
「この量を決めたのは、皆です。ここは、多く使ったらどうなるかを調べるために作りました」
「でも、枯れた」
「はい」
アリアは唇を結び、目をそらさずに頷いた。
「これは、失敗した畑ではありません」
台帳を手に取って開き、いったん閉じようとした指を止めた。黒い印の頁を、そのまま皆へ向ける。
「失敗すると分かった畑です」
若い農夫は、すぐには顔を上げなかった。
マルタが隣へしゃがみ、湿った土を手の中で押す。
「水が逃げにくいところほど残ってる。根が傷んだのも、そのせいかもしれないね」
「一定量を超えると葉の伸びだけが先行し、その後、根が弱る。少なくとも、この土と作物では」
アルヴィンは一度言葉を切り、書いた行を読み返した。
「理由は、まだ分かりません」
ノアが弱った苗へ鼻先を近づける。
「こっちは、食べすぎ?」
「正確には、根に対する――」
「最初はそれでいいんだよ」
マルタがアルヴィンを止めた。
若い農夫はようやく顔を上げた。
「食べすぎると、こうなるって皆に言えばいいんですね」
「はい」
アリアは台帳を閉じず、黒い印の脇を指先で押さえた。
「良い畑と一緒に、こちらも見せます」
* * *
男爵家の農務担当者は、まずリーザの畑を見て目を輝かせた。
「これほど差が出るなら、すぐに領内へ配れます。痩せた村から始めれば――」
「こちらへ来てください」
アリアは返事をせず、次の畑へ歩いた。
「アリア様?」
「売るお話は、こちらを見てからにしてください」
案内した先には、葉先の焼けた苗が並んでいる。
農務担当者の足が止まった。
「同じ粉です」
アリアはヘルムの畑も示した。
「効いた畑があります。ほとんど変わらなかった畑もあります。使いすぎて、弱った畑もあります」
「ですが、量を守れば」
「その量が、どの畑でも同じかは、まだ分かりません」
マルタが横で頷く。
アルヴィンは細かな記録帳を開き、ルークスは農民用の台帳を担当者へ渡した。
丸、三角、斜線、黒印。
良い結果だけではない頁が、一度に目へ入る。
「次の季節までは、試す畑を増やしすぎない方がよいと思います」
ルークスが言った。
「男爵家が配布量を記録し、白嶺と同じ台帳を持つ。勝手な転売も禁じます。説明する時は、効いた例と害が出た例を一緒に」
「使うなら、まず痩せた土だね」
マルタが指を折る。
「葉野菜か飼料草。量は少なく。何も使わない場所を残して、毎日とは言わなくても決めた日に記録する。最初はあたしか、やり方を覚えた者が見る」
「穀物は?」
「収穫まで見てないよ」
「肥えた畑は?」
ヘルムが肩をすくめた。
「わしの畑を見ればよかろう。今のところ、撒く手間の方が高い」
農務担当者は黙り込み、台帳を最初からめくり直した。
アリアは急かさず待った。
「良かったところだけを見せたら」
やがて、アリアは農務担当者の目を見ながら言った。
「あとで、誰かの畑が困ります」
担当者は、黒印の並ぶ区画をもう一度見た。
「分かりました。試験事業としてガイゼル様へ報告します。配る場所も、量も、こちらで記録します」
「白嶺にも写しを送ってください」
「はい。次の季節までは、大きく売る話も止めます」
その言葉に、アリアの肩から少し力が抜けた。
「この子の方が、畑を売り物じゃなく、畑として見とるな」
ヘルムが言う。
農務担当者は苦い顔をしたが、言い返さなかった。
* * *
白嶺へ戻る朝、リーザは小さな籠を持ってきた。
中には、試験区画から間引いた葉野菜が入っている。まだ売り物になる大きさではない。
「これは、丸の畑の分です」
リーザは笑い、それから少し迷うようにヘルムを見た。
老人は自分の台帳をアリアへ差し出した。三角が多く、丸は少ない。
「効かねえと分かっただけでも、来年、無駄に撒かずに済む」
「次は、効く方法があるか調べます」
アリアは台帳を受け取った。
「でも、ないかもしれません」
アリアの言葉尻に少し申し訳なさがあった。
ヘルムは目尻を深くして笑った。
「ないなら、ないって言ってくれりゃいい」
農務担当者から感謝を告げられた時より、その言葉は胸の深いところへ残った。
アリアは二冊の台帳を重ね、丁寧に頭を下げた。
「また、教えてください」
「今度は収穫まで見ていけ」
馬車が動き出すと、リーザとヘルム、それに若い農夫が、畑の入口から手を振った。
レクス・ノアは荷台の端へ前足をかけ、小さな首を伸ばして見送る。
「灰、みんなにあげない?」
ノアが尋ねた。
「はい。今は、みんなにはあげません」
「必要な人に、必要な分だけだ」
レクスが言う。
「おなかすいた土に?」
アリアは膝の上の籠を見た。
朝露の残る葉が、馬車の揺れに合わせてかすかに震えている。
「はい。まずは、おなかのすいた土に」
「説明としての精度は低い」
「農民に伝われば、最初は十分さ」
マルタが言うと、アルヴィンは反論しかけて、閉じた帳面を膝へ置いた。
「記録には、正確に書きます」
「それでいいよ」
* * *
白嶺へ戻った夜、アリアとレクス・ノアは共同温室脇の家へ入った。
マルタが種子袋を分けて置く乾いた棚の近くで、アルヴィンが当分のあいだ暮らしながら研究を続ける場所だった。表の部屋は仮の研究室になっている。作業机に本と観測器具が並び、奥の小部屋には寝床が一つあった。
机の端へ、アリアは試験区画台帳の写しを開いた。レクス・ノアは机の上に乗り、その台帳をのぞき込んでいた。
窓の外では、共同温室の戸が閉まり、残った湯気が夜気へほどけていた。第1坑の作業報告も、机の脇に置かれている。アリアたちが男爵領へ出ている間に、入口の傷んだ支柱が一本替えられ、排水溝の手前から雪解け泥がさらわれたと、ディートの読み上げを見回り当番が写したものだった。
掘るためではない。春の水で、確かめた場所まで崩させないための仕事だった。
アリアは報告の紙を脇へ置き、自分の台帳へ目を落とした。
丸。三角。斜線。黒印。
リーザの畑では丸が並び、ヘルムの畑では三角が続く。過剰区画には、斜線と黒印が残っていた。
アリアは一番下へ、ゆっくり文字を書く。
温室の白い粉は、どの畑にも同じようには効かない。
だから、使う場所と量を決める。
ペンを置くと、向かい側でアルヴィンが紙を並べ替えていた。
「何か分かりましたか」
「傾向だけです」
白嶺からの道のり。土の湿り方。観測器具に出た白筋反応。葉と根の変化。
数字を線で結ぶと、白嶺から離れた場所ほど、反応は薄く見えた。
「ですが、土と水の違いを除けていません。次は、同じ土を白嶺と男爵領へ分ける比較が必要です」
アリアは、丸と黒印が同じ頁に並ぶ台帳へ目を戻した。
同じ白い粉を運んでも、白嶺の畑と同じ実りになるとは限らない。
粉と一緒に、土や水の何を確かめればよいのか。アリアは、その問いを次の欄へ残した。
レクス・ノアが台帳から顔を上げ、アリアを見上げた。
「ちょっと、こわい?」
ノアの声だった。
「こわい、というより、不安だろう」
レクスの声が続いた。アリアは目を見開き、指先を台帳の上で止めた。
「分かるんですね」
「確かな答えが出るまでは、不安で当然ですよ」
アルヴィンは、教え子の答えを待つ教師のような目で、アリアとレクス・ノアを見ていた。
窓の外で、雪解け水が夜の町を細く流れていた。




