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龍と廃嫡皇女のシェアハウス  作者: 三連九
第3章 白嶺の再始動
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17/26

第17話 泡のように浮かぶもの

 犬が吠えた。


 白嶺の朝は、湯気の白さから始まる。共同浴場の屋根から細い煙のように湯気がのぼり、温室の硝子には霜が薄く張っていた。村人たちは桶を抱え、薪を運び、まだ眠そうな声で互いに挨拶を交わしている。


 アリアはレクス・ノアを抱えて、温室へ向かっていた。


 小さな龍は、腕の中でじっとしている。昨日の丘で何度も雪へ突っ込んだせいか、今朝は少しおとなしい。


「眠いのですか」


「眠くはない」


「ねむいー」


 同じ口から、すぐ別の声が出た。


 アリアは歩きながら、少しだけ笑う。


「では、今日はゆっくり歩きましょう」


「必要ない」


「ゆっくりがいい」


 村の女が、湯桶を抱えたまま足を止めた。


「おはようございます、アリア様。今日も龍さまと散歩ですかい」


「おはようございます。温室へ行くところです」


「転ばないようにな。道の端、まだ凍ってますから」


「はい」


 アリアは凍った場所を避けて歩く。靴の先で雪を踏むと、薄い皮が割れるような音がした。


 別の家の前では、男が薪を割っていた。斧の音が朝の空気に短く響く。アリアを見ると、男は斧を下ろして頭を下げた。


「昨日の板、助かりました。風よけ、ちゃんと直りました」


「よかったです」


「ルークス様にも伝えておきます」


 礼を言われるたび、アリアはまだ少し背中がむずむずした。けれど、逃げ出すほどではない。白嶺の道は、もう全部知らない道ではなくなっている。


 温室の前では、マルタが土を見ていた。


 膝をつき、指先で表面を崩し、色を確かめる。土を握って開き、指についた湿りを眺めてから、鼻を鳴らした。


「昨日より締まってるね」


「水が多かったのですか」


「多いってほどじゃない。けど、ここは日が当たる前に湯気が来る。端と真ん中で違う」


 マルタはそれだけ言って、木べらを土へ差し込んだ。


 アリアは板を取り出しかけたが、腕の中でレクス・ノアが少し動いたため、いったん戻した。


「あとで書きます」


「忘れないなら、それでいいよ」


「忘れません」


「昨日、桶を忘れて帰った子が言うねえ」


 アリアは目を瞬かせた。


 レクスが低く言う。


「忘れていた」


「桶は歩かないからね」


 ノアの声が明るく混じった。


「桶、まってた」


 マルタの肩が少し揺れた。


 そのとき、村の入口の方で犬がまた吠えた。今度は一匹ではない。細い声と太い声が重なり、坂道の向こうへ向かっている。


 アリアは顔を上げた。


 雪の残った道の先に、馬車が見えた。


* * *


 馬車は、白嶺の入口で止まった。


 御者が降り、後ろの扉を開ける。中からまず出てきたのは、革鞄だった。次に、紙束。さらに細長い筒、木箱、布で包んだ硝子器具、紐で束ねた観測帳。


 最後に、その荷物の間から男が降りた。


 身なりは整っている。濃い外套も、手袋も、靴も、帝都のものに見える。けれど、襟は少し曲がり、髪には紙の切れ端が一つついていた。


 男は地面に降りると、まず空を見た。


 次に、共同浴場の屋根を見る。


 温室の硝子、道端の霜、馬の鼻先からこぼれる白い息、足元の土、遠くの鉱山の斜面。


 視線が忙しく動く。


「湯気が、風と逆に残っている」


 男は小さく呟いた。


「雪の縁が早い。馬の呼吸は落ち着いている。地面の湿りは、路面温度だけでは……いや、まだ早い」


 彼は鞄から観測帳を出そうとして、別の箱に引っかけた。箱が傾き、中の小瓶が鳴る。


 ルークスが、ちょうど坂道を上がってきたところだった。


 いつもの軽い笑みはある。けれど、目だけは笑っていなかった。


「お客様、ようこそ白嶺へ。まず、お名前をうかがっても?」


 男は観測帳から顔を上げた。


「アルヴィン・クラウゼ・ヴァイスフェルドです」


「ご所属は」


「帝都学術院の自然学研究員です」


「目的は」


「記録です」


 ルークスの笑みが、少し薄くなった。


「もう少し、こちらに伝わる言葉でお願いします」


「土地、水、鉱物、植物、住民の体調、家畜、雪解け、湯気、気温、井戸水、それらの関係を記録します」


「増えましたね」


「減らすと不正確になります」


 アルヴィンはまじめに答えた。


 ルークスは一度だけ息を吐く。


「誰の許可で白嶺へ来ましたか」


「……許可」


「はい」


「北方で、力を必要としている方がいると」


「誰に言われました」


「身なりの良い老人です」


「お名前は」


「聞いていません」


 ルークスの手が、腰の短剣に近づいた。


 周りにいた村人たちも、少しずつ距離を取る。アリアはレクス・ノアを抱えたまま、その空気の変わり方を見ていた。


 アルヴィンは、そこでようやく自分の説明が足りないことに気づいたらしい。荷物の間を探り、外套の内側を探し、鞄を開け、紙束を崩しかけた。


「封書がありました」


「封書」


「帝都を出る前に渡されました。道中で読めと」


「今はお持ちですか」


「あります。たぶん」


 ルークスの眉が上がる。


 アルヴィンは真剣な顔で鞄の底を探った。観測帳が一冊落ち、硝子の管が布の中で鳴り、ようやく白い封書が出てくる。


 ルークスは受け取った。


 封蝋は割られている。中の紙は短い。ルークスは目を通し、すぐに眉を寄せた。


 彼には、その署名にも印にも確信が持てないのだろう。


「アリア様」


 呼ばれて、アリアは一歩前へ出た。


 ルークスは封書を開いたまま、膝を少し折って、アリアの高さへ紙を差し出した。


「ご確認いただけますか」


 アリアはレクス・ノアを片腕で抱き直し、もう片方の手で紙を受け取る。


 文字は短かった。


 アリア様のこと、よろしくお願いいたします。


 エーヴァルト・レインベルク。


 署名の横に、帝室書簡印がある。


 アリアの指が、紙の端を握った。


 帝城の廊下の匂いが、ふと近くなる。磨かれた床、古い扉、朝の紅茶。出立の日、馬車の外に残った老執事の白い手袋。


 紙の上の文字は静かだった。


 けれど、遠くから届いた声のように見えた。


「アリア」


 レクスの声が、腕の中で低く響く。


 アリアは瞬きをした。


 涙は落ちなかった。


 ただ、目の奥が熱い。アリアは紙を丁寧に畳み、胸に抱いた。


「エーヴァルトです」


 声は少し小さくなった。


「私の、帝城の執事長です」


 ルークスはその反応を見て、短剣から手を離した。


 けれど、警戒そのものは消さない。


「分かりました。ヴァイスフェルド殿、父に確認を取ります。それまでは、単独行動を控えてください」


「単独行動」


「畑、湯、鉱山、村人への聞き取り。どれも、俺かアリア様が同席します」


「記録は」


「同席のうえで」


「水は」


「同席のうえで」


「土は」


「同席のうえで」


 アルヴィンは少し考えた。


「妥当です」


 ルークスが意外そうに目を細める。


「反論しないのですか」


「私は白嶺を知りません。知らない土地で、知っている人の許可を得るのは当然です」


 アルヴィンは、そこでアリアを見た。


 名前と、書簡印と、目の前の少女の面差しが、ようやく同じ場所へ並んだらしい。


「……アリア・セレフィア殿下」


 言ってから、アルヴィンは少しだけ瞬きをした。


「失礼。今は、アリア様とお呼びした方がよろしいですね」


「はい」


「白嶺のことを、教えてください」


 アリアは、胸に抱いた手紙を少しだけ強く押さえた。


「私も、まだ教わっているところです」


「では、一緒に記録できます」


 アルヴィンは真顔で言った。


 ノアの声が、小さく笑う。


「へんなひと」


「同意する」


 レクスが短く続けた。


 アルヴィンは少しだけ首を傾げる。


「今の声は、どちらが」


「そこも、同席のうえでお願いします」


 ルークスが即座に遮った。


 アルヴィンは観測帳を開きかけた手を止めた。


「承知しました」


* * *


 白嶺を歩くアルヴィンは、まっすぐ進まなかった。


 共同浴場へ向かう道の途中でしゃがみ、雪の縁を見る。温室の前では硝子についた水滴を眺め、馬小屋の前では馬の鼻先に手を近づけようとして、ルークスに止められた。


「馬に先に聞いてください」


「馬に?」


「近づいていいか、という意味です」


「なるほど」


 アルヴィンは馬に向かって、まじめに頭を下げた。


 馬は返事をしなかった。


 ノアが、アリアの腕の中で小さく息を弾ませる。


「馬、こまってる」


「観察対象に礼をする姿勢は評価できる」


「評価するんですか」


 アリアが思わず聞くと、レクスは当然のように答えた。


「無礼よりはよい」


 ルークスは口元を押さえていた。


 アルヴィンは気づいていない。道端の土を見て、共同浴場の屋根からのぼる湯気を見て、遠くの鉱山へ顔を向ける。


「単独ではありませんね」


 彼は観測帳へ書きながら言った。


「何がですか」


「土、湯、山です。別々に見えるのに、変化の向きが似ています」


 アリアには、まだよく分からない。


 けれど、レクス・ノアの体が少しだけ硬くなった。


 レクスの目が、共同浴場の湯気から温室の土へ移る。次に、鉱山の方へ。


「流路」


 低い声が落ちた。


「レクス?」


「沈む。残る。結ぶ」


 レクスはそこで黙った。


 小さな尾の先が、アリアの腕に触れる。考えている時の動きだった。


「今の言葉は」


 アルヴィンが一歩近づいた。


 ルークスも一歩前へ出る。


「ヴァイスフェルド殿」


「はい」


「近いです」


「失礼しました」


 アルヴィンはすぐ下がった。


 その素直さに、アリアは少しだけ目を丸くする。近づきすぎたことには気づかないのに、止められるとすぐ引く。


 不思議な人だ。


 ノアが、アリアの袖に鼻先を寄せた。


「おゆと、つち、にてる」


「似ているのですか」


「においじゃない。でも、においみたい」


 アルヴィンの手が、観測帳へ伸びる。


 ルークスの視線が刺さる。


 手は、途中で止まった。


「記録しても?」


「アリア様」


 ルークスが判断をこちらへ預ける。


 アリアはレクス・ノアを抱え直した。


「名前は、書かないでください」


「では、声の主を伏せます」


「はい」


 アルヴィンは小さく頷き、観測帳に短く書いた。


 声の主、湯と土の類似を感覚で指摘。


 文字は細かく、速かった。


* * *


 白嶺の集会所の広間には、椅子が六つ並べられた。


 共同浴場から少し離れた木造の建物で、寄り合いや物資の確認に使われる場所だ。壁際には折りたたまれた長机と、薪を運ぶための古い籠が寄せてある。


 大勢を集めると仕事が止まる。ルークスがそう言って、最初の聞き取りは少人数に絞った。


 マルタ。


 温室を手伝う農家の女。


 共同浴場の湯番をしている老人。


 坑道を知る男。


 ルークス。


 そして、アリア。


 アルヴィンは机の前に座り、観測帳を開いた。紙束が横に積まれ、小瓶が机の端に並ぶ。集まった住民たちは、その小瓶を少し警戒して見ていた。


「薬ではありません」


 アルヴィンが言う。


「水を入れる瓶です」


「水なら桶でいいだろ」


 坑道を知る男が言った。


「桶では、混ざります」


「何が」


「分かりません」


 広間が少し静かになった。


 アルヴィンは顔を上げる。


「分からないものを混ぜないために、分けます」


 マルタが腕を組んだ。


「分からないって、ずいぶんはっきり言うね」


「分かったふりをすると、記録が濁ります」


 その返事で、マルタの目つきが少しだけ変わった。


 聞き取りは、短い質問で進んだ。


「温室の土は、いつから変わりましたか」


「湯を引いてから、体の重さが変わった人はいますか」


「坑道で光る石を見たことは」


「畑の収穫が安定した時期は」


「雪解けが早い場所は、毎年同じですか」


「家畜の息や足取りに、冬の違いはありますか」


 アルヴィンは、答えを遮らない。


 ただ、聞く。


 時々、言葉を言い換える。


「重い、とは、眠いのではなく、手足が動かしにくい?」


「光る、とは、昼間にも見える光ですか。暗い場所だけですか」


「湯に入った日は眠れる。翌朝はどうです」


 アリアは横で聞きながら、自分の板にも短く書いていく。全部は書けない。けれど、アルヴィンの質問は、白嶺の人たちが前から知っていたことを、別の形に並べているようだった。


 土の変化。


 湯の変化。


 山から来る変化。


 アルヴィンは最後に、その三つを紙の上へ分けて書いた。


「原因は、分かりません」


 彼は言った。


「ただ、同じ時期に、似た向きの変化が出ています。偶然かもしれません。別々の原因かもしれません。記録が足りません」


「つまり、まだ何も分かってないってことかい」


 マルタが言う。


「はい」


 アルヴィンは迷わず頷いた。


「けれど、分からない場所は少し減りました」


 マルタは鼻を鳴らした。


「変な言い方をするね」


「よく言われます」


「でしょうね」


 広間の空気が、少しだけ緩んだ。


* * *


「土を、少量調べたいのです」


 アルヴィンが言ったのは、温室へ戻ってからだった。


 マルタの顔が、すぐに険しくなる。


「持っていくつもりかい」


「できれば」


「だめだね」


 返事は短かった。


 アルヴィンは観測帳から顔を上げる。


「理由を聞いても?」


「これは白嶺の食べ物を育てる土だ。外から来た人が、勝手に持っていくものじゃない」


「勝手にはしません」


「言うのが遅い」


 マルタの声は強い。


 温室の中にいた人たちが、手を止める。ルークスはすぐに口を挟まず、アリアを見た。


 判断を振られたのだと、アリアにも分かった。


 胸の中で、手紙の紙がわずかに鳴る。エーヴァルトの文字は、懐にある。


 アリアは温室の土を見た。


 ここで育った葉物を食べた。湯気の中で苗を見た。マルタが毎朝、指先で土を確かめていることも知っている。


 土は、ただのものではない。


 アリアは、レクス・ノアを足元へそっと下ろした。小さな龍はアリアの横に座る。


「土は、食べものと一緒です」


 声は大きくない。


 けれど、温室の中で消えなかった。


 アルヴィンが、まっすぐアリアを見る。


「持っていくなら、マルタさんが許した分だけです」


 アリアは一つずつ言葉を置いた。


「調べたことは、白嶺に返してください」


 アルヴィンはしばらく黙った。


 子供を見る目ではなかった。皇女を見る目でもない。


 約束を求める相手を見る目だった。


「記録は白嶺に残します。使う試料は許可されたものだけにします。結果を外へ出す時は、事前に確認します」


 彼はそう言って、頭を下げた。


「約束します」


 マルタはまだ不機嫌そうだった。


 けれど、拒み続ける顔ではなくなっている。


「隅の土を、ほんの少しだよ」


「はい」


「いいかい。ほんの少しだ」


「はい」


「瓶いっぱいとか言ったら、叩くよ」


「小瓶の底に触れる程度で足ります」


「最初からそう言いな」


 マルタは木べらで、温室の隅の土をほんの少しだけすくった。小さな皿に落とすと、黒っぽい粒と薄い砂、細かな根の切れ端が混じる。


 アルヴィンは両手で皿を受け取った。


 その手つきだけは、とても丁寧だった。


* * *


 広間の机に、皿が置かれた。


 アルヴィンは土を薄く広げ、灯りの位置を変えながら覗き込む。硝子の小さな板をかざし、針の先で粒を寄せる。


 マルタは腕を組んだまま、少し離れて見ていた。


 ルークスは机の反対側に立ち、アルヴィンの手元だけでなく、顔も見ている。アリアはレクス・ノアの隣にしゃがみ、皿を覗いた。


 普通の土に見える。


 黒い粒。


 茶色い粒。


 白っぽい砂。


 細い根。


 アルヴィンが灯りを少し動かした。


 そのとき、針の先ほどの粒が、一瞬だけ淡く光った。


 アリアは瞬きをする。


「今の」


「見えましたか」


 アルヴィンの声が低くなった。


 興奮しているのに、抑えている声だった。


「少しだけ」


「角度で反射しただけかもしれません。もう一度」


 彼は灯りを戻し、また動かす。


 粒は、すぐには光らなかった。


 マルタが眉を寄せる。


「ただの砂に見えるけどね」


「その可能性があります」


 アルヴィンは答えた。


「けれど、ただの砂なら、ここで見落としても問題ありません。そうでないなら、見落とすわけにはいきません」


 レクス・ノアが、皿の前へ一歩出た。


 小さな鼻先が、土に近づく。


「近づきすぎないでください」


 アリアが言うと、レクス・ノアは止まった。


 目だけが、粒を見ている。


「結び目」


 レクスの声が落ちた。


「結び目?」


「細い流れが、ここで丸まっている」


 アリアには、皿の上の土しか見えない。


 けれど、レクスの目は別のものを見ているようだった。


 ノアが首をかしげる。


「おふろのにおい」


「においがするのですか」


「においじゃない。でも、おふろ」


 アルヴィンの指が止まった。


 温室の土。


 共同浴場の湯。


 鉱山の方角。


 彼の目が、皿から窓の外へ動く。窓の向こうには、白い山の斜面が見えていた。


「土と湯が」


 アルヴィンは言いかけて、口を閉じた。


 それから、観測帳を開く。


「未確認。要再検証」


 小さく、そう書いた。


 ルークスが静かに息を吐く。


「結論は?」


「出しません」


「今の顔は、出したそうでした」


「はい」


 アルヴィンは素直に認めた。


「ですが、早すぎます」


 マルタは、まだ不機嫌そうに皿を見ている。


「土を取られて、早すぎると言われて、こっちは損した気分だよ」


「記録は返します」


「紙じゃ腹はふくれない」


「なら、記録が食べ物を増やす形になるまで続けます」


 マルタが黙った。


 アリアは懐の手紙に、そっと手を当てた。紙の角が布越しに触れる。


 エーヴァルトは遠い。


 けれど、白嶺には今、知らないものを見る人が来た。


 アルヴィンは皿の上の粒を見つめている。ルークスは鉱山の方へ目をやった。レクス・ノアの小さな体は、考え込むように動きを止めてから、アリアの足へそっと寄る。


 灯りが、もう一度だけ角度を変えた。


 皿の上の小さな粒が、淡く光る。


 窓の外で、白嶺の湯気が朝の雪へ細くほどけていった。


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