イギリス料理はなぜまずいと言われるのか
初出:令和8年9月6日
どうでもいい話だが、イギリス料理がまずいというユーチューブ動画を立て続けに数本観た。
だから何だと言われたら身も蓋もなければ元も子もないが、一言でしゃばりたくなった。と言うか、何年か前にネットでイギリスの”メシまず”の解説を見つけ、自分に中ではこの問題は解決済みだ。ところがまだよく知らない人がいるようなので、余計なお世話だがでしゃばることにした。
イギリスの料理がまずいという話はよく聞く。一方でフランスは料理がうまいという話もよく聞く。
昔、大宮でイタリア料理店に入ったところ、女性シェフがフランス料理の悪口を言い出し、「だからうちのイタ飯の方がうまい」というオチなのだが、イタ飯とフラ飯のどちらに軍配を上げるべきかはともかく、どちらもグルメ大国、グルメ先進国といってよい。
そこへ行くとイギリスはグルメ後進国、グルメ発展途上国の汚名をよく着せられる。
ヨーロッパ団体旅行の際、ジャルパックの添乗員に「イギリス料理はまずいと聞いてますが」と聞いてみると、「イギリスはカレーがおいしいので是非」と言って、同社のイギリス観光ツアーをちゃっかり案内された。
実はイギリスの”メシまず”は、歴史的にイギリス人の長所であるとの解説もこの添乗員から聞いた。
現在でもイギリス人の傭兵は一番ギャラが高いと聞いたことがあるが、古来、西洋ではアングロサクソンは傭兵に適した人種とされているようだ。アングロサクソンは第一に体が大きく、第二にまずいメシでも文句を言わない。
戦場の陣中料理にグルメを求めるのは無理だろう。兵士が餓死せず、戦闘能力を維持できれば飯の味などどうでもいい。ところがフランス兵あたりだと”メシまず”に文句を言いだすのではないか。軍の指揮官からすれば”メシまず”に文句を言わずに黙々と戦ってくれる兵の方が使える。
英国の作家、ジェフリー・アーチャーの小説を読んだところ、イギリスのメシまずでなくフランスの”グルメ過ぎ”を揶揄する文章があった。
フランスでは刑務所の受刑者の飯もコックがきちんと味付けするという。刑務所の飯をおいしくし過ぎるとかえって犯罪者が増えるのではないか。
イギリスがメシまず過ぎて悪いのか、フランスがメシうま過ぎて悪いのか。どちらとも言えないが、喧嘩両成敗といったところか、
1.私個人のイギリス料理体験
私は学生時代、1度だけ団体ツアーでロンドンに行ったことがある。ロンドン滞在は1泊2日。この体験をもってイギリス料理がまずいかどうかを論じる資格はないだろうが、思い起こせばまんざらでもない。
ホテルのレストランでメニューを見たところ、日本と違い、料理の写真がない。しかも英文なのでどんな料理が検討もつかない。ただ値段だけはわかるので、一番安い料理をウエイトレスに指さして注文した。
するとタコライスのような料理が出てきた。食べてみたら確かにまずかった。
翌朝、ホテルでルームサービスの朝食が出た。
トーストとハムエッグあたりではなかったかと記憶している。料理にはあまり印象はない。
ただ紅茶に驚いた。紅茶は英語でblack teaだが、日本で紅茶の色は黒といより赤い。ところがイギリスの紅茶はコーヒーかと思わせるほど黒いのだ。たしかにblack teaだ。飲んでみるとおいしい。これが本場の紅茶の味かと思わせた。
それから数年後の話だが六本木のバーで「カティーサーク キングダム」というウイスキーを飲んだ。
実はカティーサークは近所の酒屋で2000円ぐらいで買って飲んだことがあったが、まずかった。ところがキングダムの方は滅茶苦茶うまかった。
バーテンの話によると、イギリス人が普段飲んでいるのはこっちのカティーサークとのこと。日本に輸出するときはアウトレット品を高い値段で売りつける。日本人が日本でキングダムを飲むには6000円ぐらいするが、イギリス人はもっと安値で飲んでいるらしい。
私個人の体験で言えば、イギリスの食べ物はまずかったが飲み物はうまかったといったところか。
2.フランス料理はなぜうまいのか
ところでフランス料理はなぜうまいのか。その歴史的理由は二つほど知っている。
ルイ14世がベルサイユ宮殿を建設すると宮廷料理人として、国中から一流のコックたちを雇った。
ところがルイ16世の代にフランス革命が起きるとベルサイユ宮殿のコックたちは失業し、仕方なくパリで飲食店を開いた。
彼らは元宮廷料理人だけに腕はよく、パリの飲食店のグルメレベルを向上させた。
またパリの高級ホテル、リッツだが、客を呼ぶためにはホテルのレストランの料理がおいしくなくてはならない。そう考えたリッツの経営者は一流のシェフを高給で雇った。
これもまたパリの飲食店のグルメレベルを向上させるのに一役買った。
一方、イギリスもピューリタン革命や名誉革命といった市民革命を経験するが、バッキンガム宮殿に詰めていた宮廷料理人は職を失うことなく、革命後の新たな主人に料理を提供してきた。
つまりイギリスでは宮廷料理は門外不出で庶民の口には入らなかった。
以上、フランス料理がなぜうまく、イギリス料理がなぜまずいかを説明した。
と言うか、これはもともとある喫茶店チェーンの宣伝パンフレットの中身なのだ。
「あなたはイギリス料理がまずいと思っていませんか」で始まり、「確かにイギリス料理はまずいが、当店は門外不出だったイギリス宮廷料理なので例外的においしいのです」といった内容だ。
実はイギリスの宮廷料理人を退職した人が喫茶店チェーンを開業した。
社長が元宮廷料理人のせいかスイーツなど料理がおいしいとの評判で、イギリスのみならず、ヨーロッパにもチェーン展開をしているようだ。
今ネットで探したところ、この喫茶店チェーンが見つからないが、ご存じの方がいらしたらコメントなどで教えていただけると幸いだ。
(つづく)




