シリーズ陰謀論を軽蔑している方のための陰謀論入門④ 私家版日本ネット陰謀論史
初出:令和8年9月5日
さて、シリーズも四回目になる。今回は「私家版日本ネット陰謀論史」がサブタイトルだ。
私家版としたのはこれから語るのは小生オリジナルの意見であり、偉い評論家先生が認めた通説ではないという意味だ。
つまり他の書物やサイトから入手できない情報という点では今あなたが読んでいる文章は価値があるとも考えられるが、一方で権威者からお墨付きをもらった見解ではない。つまり、「それってあなたの意見でしょう」とひろゆき氏あたりから論破されるかもしれない内容なのだ。
とは言え、陰謀論を軽蔑している?あなたからすれば、そもそも陰謀論自体がアカデミズムが認めた内容でもなければ政府公式見解と一致しているわけでもない。
こうした前提を理解した上で以下、おつき合いいただきたい。
1.そもそも陰謀論の発祥は
そもそも陰謀論ジャーナリズムは1972年、米国ウォータゲート事件をめぐる報道から生まれたconspiracyの訳語とされる。
民主党のビルにニクソン大統領が盗聴器を仕掛けたとされ、同大統領は辞任したが、これはディープステートが大統領を失脚させるための陰謀だという風説もあった。
ここから時事問題について大手マスコミの見解と違う解釈のジャーナリズムをガセネタの意味を含めて「conspiracy=陰謀論」と総称することになったようだ。
以上が陰謀論の歴史の教科書的解説である。
しかしながら政府の偽旗作戦、自作自演テロの類はそれ以前の歴史にもあった。陰謀自体の歴史は古今東西枚挙にいとまがなく、おそらく人類の有史発祥からあったと思う。
日本人になじみが深いところでは、1931年の柳条湖事件がある。関東軍が南満州鉄道を爆破した自作自演テロだが、中国軍の仕業にして満州事変を起こした。
ところが国際連盟はリットン調査団を派遣し、日本の偽旗作戦であることを暴き出した。
なぜ日本はこんなことをしたのか。
小生の個人的解釈だが欧米列強も同じような偽旗作戦をやっており、日本はそれを真似ただけだと思う。明治以降、富国強兵で欧米の科学技術や文化を貪欲に吸収してきた日本。自作自演テロもまた欧米の先進文化だと日本の指導者たちは思っていたのではないか。
2.20世紀の陰謀論界
80年代末、日本航空123便墜落事故の前後で大韓航空機二機の墜落事故が相次いだ。
小生は当時、本屋で書籍を買い、これら三つの事件が一連の米国CIAが関係した陰謀だったという記述を見つけた。当時、大手マスコミは米国は”善玉”、ソ連、北朝鮮は”悪玉”といった論調だったので、これは衝撃を受けた。
要するに陰謀論ジャーナリズム自体はかなり以前からあった。だがこの時代は、
①陰謀論ジャーナリズムは有料。無料では入手できない。
②陰謀論ジャーナリズムはガセネタも多く混じっている。ユーザーはそれを承知で金を払う。
週刊誌や日刊ゲンダイなどで、五大紙や地上波テレビで放送しない、いわゆるオフレコ情報を見つけることができる。
だが一方で週刊誌は「あることないこと」が書いてある媒体で、五大紙にくらべるとガセネタも散見する。だから良識ある健全な大人は五大紙を読もう、というのが昭和に常識だった。
あえて金を払ってでも陰謀論ジャーナリズムを読もうという人は、特殊なマニアを除けば、マスコミ業界関係者だけでなないかと推測する。
たとえば五大紙の政治部の記者は記事を書くための情報を収集しているが、陰謀論ジャーナリズムに関しても一般人より詳しいのではないか。五大紙記者にしてみれば、どこまでが書いてよくてどこからが書いていけないのか、その境界を知った上で記事を書く必要があり、そのためのも陰謀論ジャーナリズムにもそこそこ精通していたりする。
3.陰謀論の歴史的分岐点
さて、現代の陰謀論ジャーナリズム史を語る上で一番有名なトピックは、2001年の911同時多発テロ(もしくは911自作自演テロ)だろう。陰謀論を軽蔑している?あなたもこれはご存じかと思う。
ビン・ラディン率いるアルカイダが世界貿易センターのツインビルに航空機を衝突させ、ビルが倒壊した。これが大手マスコミが報道したニュースだが、米国政府自身がビルに純粋水爆を仕掛けて爆破させたという陰謀論が有名だ。
911事件の前後が歴史の変わり目と説く人もいるようだ。人民が政府の陰謀に目覚めるとともに、大手マスコミのプロパガンダに意識するようになった境界の年、といった感じだ。
一方、日本ではその10年後、2011年に311東日本大震災が起きた。
大手マスコミは自然災害と報じたが、米軍が起こした人工地震、人工津波による人災というのが、陰謀論ジャーナリズムの解釈だ。
こうしてみると世界的には2001年、日本的には2011年が陰謀論ジャーナリズム史の分岐点のように見える。
だが小生は個人的に2008年と2020年に二つの分岐点があったと考える。
前者は無料ネット陰謀論元年であり、後者はコロナ騒動によるネット陰謀論規制が盛んになった年だ。
4.ソフトウェア無料化と陰謀論
これまで前述したように陰謀論ジャーナリズムは①「有料」であり、かつ②「ガセネタも多い」ことから、これまで敬遠する人が多かった。
ところが2008年ごろはソフトウェアが無料の時代だった。音楽や映画、アニメ配信など法整備が進んでなかったので違法アップロードも盛んだった。
陰謀論ジャーナリズムというソフトウェアもまた無料化の波が来ていた。
当時、新進気鋭の陰謀論ジャーナリスト、リチャード・コシミズ氏は、たとえばこの分野の大御所である副島隆彦氏にくらべ、後発のハンディーがあるためか、自身の講演会動画を無料で公表した。
同氏の動画やブログのコンテンツはガセネタも少なく、クオリティー的に有料レベルの陰謀論だった。
一方、ムーパルチャンネルの「国家非常事態委員会」というネット配信番組は健康食品業界がスポンサーで番組途中でCMを流すというもので、この中で既存の陰謀論ジャーナリストであるベンジャミン・フルフォード氏が311人工地震を解説した。
同番組は地上波民放同様、視聴者は無料で見ることができ、フルフォード氏のギャラもスポンサーが支払うというシステムだった。
このような無料ネット陰謀論の登場で、陰謀論ジャーナリズムは一気に普及した。
当時、リーマンショックやアベノミクスで倒産する中小零細企業が多く、その経営者たちがこうした陰謀論ジャーナリストのファン層になったと推測する。
会社が倒産したのは経営者自身の能力不足が原因ではあるが、そうは言ってもリーマンショックやアベノミクスなど政治のせい、経済のせいといった他責志向に陥ってしまうのが人情だ。
彼らは反体制的な考えを持ち、陰謀論ジャーナリズムを信奉した。
ところが2020年ぐらいからネットの規制が厳しくなった。
多くの陰謀論ジャーナリストがユーチューブでアカバンされた。またリチャード・コシミズ氏やベンジャミン・フルフォード氏は少しずつ、ネット動画の有料コンテンツに移行するようになった。
金がないから無料なら見るが有料なら敬遠するといった貧乏人が陰謀論ジャーナリズムの推し活をしていたため、かつてよりその勢いは小さくなったように思う。
以上が私家版のネット陰謀論史だ。
(つづく)




