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どうでもいい話 脱力エッセー  作者: カキヒト・シラズ


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チャンバラ天下一・剣豪10番勝負 その①

 どうでもいい話だが、剣豪について知っていることを書いてみようと思う。

 90年代末頃、隆慶一郎の時代小説にはまった時期があった。隆慶一郎の作品には柳生一族の剣豪小説がよく出てくるので、そこから剣豪に興味を持ち、剣豪を解説したノンフィクションを数冊読んだ。

 ところで最近、ユーチューブでも剣豪を解説した動画を見て昔の知識を少し補強した。

 だからなんだと言われれば元も子もないが、知っている知識をひけらかしたいと思う。

 果たして史上最強の剣豪はだれか。



1番勝負 あなたが宮本武蔵を知ってるのは吉川英治のおかげ


 あなたは剣豪というとだれを思い浮かべるだろうか。

 統計はとってないが、普通の日本人は宮本武蔵と佐々木小次郎の二人だけしか知らないのではないか。

 ただし時代小説をかじっている人なら柳生十兵衛も思いつくかもしれないが。


 巌流島の戦いで佐々木小次郎は宮本武蔵に破れている。小次郎もそんじょそこらの侍よりはチャンバラは強かったのだろうが、武蔵に負けた事実をもって、「永遠のNo.2」剣豪になってしまった。

 最強の剣豪はだれかを議論すると小次郎は武蔵のせいで最強に選ばれない。ただし知名度では武蔵と並んで”天下一”の剣豪かもしれない。


 ところで江戸時代の講談から宮本武蔵は柳生十兵衛と並んで剣豪の二大ヒーローだ。また現代でも剣豪小説では十兵衛がよく主人公になる。

 ただし宮本武蔵と佐々木小次郎の知名度が、”非剣豪小説ファン”の間で柳生十兵衛を凌駕したのは、ひとえに吉川英治の小説が原因だと思う。

 私自身、吉川英治の「宮本武蔵」を読んでいないので自信はないが、年配の人の話では朝日新聞で連載していたとき、同作品は国民的な大人気小説だったという。

 吉川英治自身も連載開始前の雑誌のインタヴューで、自分の小説をもって宮本武蔵の国民的認知度を上げるという意気込みを語っていたようだ。

 私は全く知らないが「バカボンド」という武蔵の漫画も大ヒットしたようだ。若い世代はこの漫画から武蔵を知った人もいるかもいれないが、吉川英治の小説があったからこの漫画が出来たのではないか。


  人気、知名度勝負では、十兵衛は武蔵に”破れたり”といったところか。



2番勝負 柳生家で十兵衛より強いのはだれか


 ところで柳生十兵衛であるが、柳生家で一番知名度と人気が高いものの一番強いかというと微妙。

 戦後?ぐらいから十兵衛以外に柳生家で時代小説やドラマ、映画で主役になるキャラクターは、十兵衛の父、柳生宗矩だろう。

 宗矩は徳川幕府の兵法指南役、大目付といた役職に就き、一万石の大名になったのだから柳生家の出世頭ではある。

 フィクションでは宗矩は十兵衛と同じくらい、またはそれ以上、チャンバラが強いという設定になっていることが多い。

 年功序列という風土がある昭和以前には、十兵衛の祖父、柳生石舟斎宗厳が柳生家で一番強かったという設定になっている時代小説も多い。宗厳は柳生新陰流の開祖でもある。

 柳生マニアの間では十兵衛の叔父、柳生兵庫助を最強とする説もある。

 隆慶一郎の柳生剣豪小説は五味康祐の「柳生武芸帳」の世界観で書かれている。この世界観とは

①柳生家の侍は武術だけでなく忍術も修得済み。

②柳生最強の剣客は兵庫助

といった感じである。

 真偽はともかく、アクションシーンで柳生十兵衛が剣術も忍術も使って戦った方がフィクションとしては面白い。だから①は採用したい。


 さて、逆に柳生家で最弱とされるのが十兵衛の弟、柳生宗冬である。

 なぜ最弱か。実は十兵衛の従弟にして尾張柳生の当主、柳生連也斎が御前試合を行い、宗冬を破ったというエピソードがある。

 ところが本文を執筆直前、ウィキペディアを確認すると、連也斎が宗冬と御前試合をした事実はなく、連也斎が吹聴した嘘かもしれないとのこと。

 実は連也斎は道場を経営しており、生徒募集のため、「自分は宗冬より強い」という虚偽の広告が必要だったのだ。

 JAROなどない江戸時代、道場主は自分こそ日本一の剣豪だと吹聴して生徒を集めるのが、全国各地の道場経営のデフォルトだったと思う。

 いずれにせよ、江戸柳生の家督を継いだ宗冬は今でいう超エリート公務員であり、兄の十兵衛にくらべ、チャンバラの腕前はともかく、いわゆる「婚活市場のハイスペック男子」だったのではないか。

 

 それにしろ、柳生家の子孫が現在も道場を経営しており、時代小説家が柳生の剣豪小説を書くと、しばしば彼らからクレームがくるという。「うちの御先祖様はおまえの小説で書かれているより強かった」といった感じだろうか。

 私はこの話を知って笑ってしまったが、これは十兵衛にも柳生新陰流にも不謹慎だろうか。

 


3番勝負 グランドスラムの上泉信綱は中上健次の剣客バージョン?


 スポーツ界にはグランドスラムという語がある。

 もともと野球の満塁ホームランを英語でグランドスラムと呼ぶようだが、転じてテニスやゴルフなどの複数のメジャー大会で同一選手が優勝することをグランドスラムと呼ぶ。

 上泉信綱は室町幕府(足利義輝将軍)主催の御前試合と朝廷(正親町天皇)主催の御前試合の両方で優勝した唯一のグランドスラム達成者である。

 よって多くの評論家が史上最高の剣豪と評価することが多いようだ。


 ところで作家には読者のための作家と評論家のための作家がいるという話がある。

 私は読んだことはないが現代英米文学ではヘンリージェームズが評論家のための作家とのことだ。つまり評論家は絶賛するが一般読者はだれも読んでいない作家だ。

 現代アメリカ文学つながりの話題だが、たとえば謎の作家、トマス・ピンチョンは評論家のための作家に対し、「ライ麦畑でつかまえて」のはサリンジャーは読者のための作家という感がある。しかしトマス・ピンチョンの正体はサリンジャーだという珍説もあり、これが本当ならわけがわからなくなる。

 現代日本文学では中上健次が評論家のための作家だ。

 かつて「ノルウェエーの森」がベストセラーだったころ、村上春樹は読者のための作家であまり評論家から評価されてなかったように思うが、雑誌のインタヴューで中上健次が大衆迎合的とのことで「ノルウェエーの森」を批判していたのを覚えている。

 だが一般読者は中上健次の小説など読んでないだろう。


 閑話休題、上泉信綱はいい意味でも悪い意味でも中上健次の剣客バージョンと考えれば理解しやすいか。



4段勝負 塚原卜伝は悪い意味でヒクソン・グレーシー


 さて、本文を執筆する直前、某ブログで史上最強の剣豪は塚原卜伝で上泉信綱は二番目だという記述を目にした。

 決闘では連戦連勝、無敗を誇る卜伝だが、無敗の秘訣は「自分より強い相手と戦わないこと」とのこと。これは70年代のスポコン漫画やスポコンアニメで少年時代を送って来た世代には好きになれない剣豪だろう。

 卜伝の有名なエピソードだが、一人の侍と決闘することになった。小舟に乗って離れ島で決闘することになり、相手の侍が岸に降りると、卜伝は降りずに小舟を漕いで侍を島に置き去りにして逃走した。なぜ逃走したのか。それは相手の侍の方が強そうだったからだ。


 このように卜伝を史上最強の剣豪とするには論理的に無理がある。彼が戦いを拒んだ相手の方が強いからだ。卜伝と戦わなかった侍の中に最強がいるという理屈になる。


 ともあれ、400戦無敗の格闘家ヒクソン・グレーシー選手もどこか塚原卜伝に似ている。

 ヒクソンは対戦のオファーを受けると、相手選手の過去の試合をビデオで確認し、勝てそうだったらオファーを受け、負けそうだったら断っていたとのこと。

 高田選手や舟木選手などを破ったヒクソンだが、藤田選手や前田選手のオファーは断っている。

 また舟木選手との試合では”肘打ち”なしのルールを条件に対戦オファーを受けた。私は対舟木戦を実況中継で観ていたが、”肘打ち”ありのルールなら舟木選手が勝っていたとの印象を受けた。

 いずれにせよ、勝てる相手としか戦わないのが無敗を維持する秘訣なのだろう。

 ところでヒクソンは長州力選手の対戦オファーは受けたが、これは長州の方がドタキャンしている。

 仮想ヒクソン戦を意識した小川選手とのプロレスのタッグマッチで、「パンチが見えなかった」と長州の弁。長州はその直後、ヒクソン戦をキャンセルした。ヒクソンには勝てないと判断したのだろう。

 こうした経緯を考えると、長州力もまたプロレス界の塚原卜伝なのかもしれない。


(つづく)


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