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異世界防衛戦線  作者: 暇人
終章・向き合う為の現実
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14/16

最終三部作・Ⅱ 激突する理想と現実

「…ここは」

暴走した如月は、目を開けると城の中に戻されていた。

すると目の前には、ドラゴンスレイ騎士団の隊長が扉の目の前に佇んでいた。

「我々は退却した、戦闘機すらない我々ではツジゲンには不利だ。」

「あの状況だったら!俺がこの手でジョンをぶっ殺せた!!」

そう言われると、扉の目の前にいた隊長が如月の胸倉を掴む。

「あの時確かに私は手を出すなと言ったはずだ!!手を出して余計なことをしでかしてくれたのはお前の方だ!」

「お前はわからないのか!?あの剣には、魔力を断ち切る力がこもっているんだ!もしお前がジョンとの剣戟に負けたらお前の魔力はなくなるんだぞ!?」

「そ…そんな」

如月は狼狽する。俺の描いたシナリオにはそんなものあるはずがない、と。未だに彼はこの世界が自分のシナリオ通りに進んでいると勘違いしているようだ。

だが、隊長は如月の表情を見て、掴んだ胸倉を離す。

呆然とした表情に、自身も冷めたのだろうか。

隊長はそんな剣幕で如月の部屋から出て行く、だがその去り際に、一言如月に残す。

「俺は国王に死ぬまで従うと誓った、俺はそのために全ての兵士を率いている。如月の好きにするといい…自己中心的で、この世の全てがお前自身のものと勘違いしているお前がな!!」

ものすごい表情で如月のことを睨む、同時に如月もその顔を見て青ざめる。

「…俺からは以上だ。」

ドンっ、と。観音開きの扉が閉まる音が一人しか残らない部屋の中に響き渡る。

「…隊長。いや、アスタ・ラングス。奴まで俺の行く手を阻もうと言うのか…まあいい、奴は国王から離れることはできない。死ぬまで俺に付き従って見せろ」

如月は、邪悪な微笑みを見せ、再び訓練場へと赴く。

そんな如月をよそに、ツジゲンとブロンダの共同軍は着々と準備を進めていた。

その中に、スペク・アルケミスの姿もあった。

「アルマ・ゲオートの配備はどうなっている」

「ええ、この調子なら30匹は行けるかと」

「30か…そこを50にするのはどうか」

「え!?50匹!そんなに出せば、我々の兵力が少し危ういのでは」

「このくらい少ない方だ、なにせ我々はこの世界に挑むのだからな」

「まあ、確かにそうとは言えますが…」

アルリ・ツジゲンは作戦を立てていた。ゴルダラはかつて、アルリ自身も攻め入ったことがある。あの城は城下町の作りは平常だが、その周りを囲む塀がかなりの硬さを誇る。その硬さはあのソルファイゲンを10発食らってもビクともしないくらいだ。

「やれやれ、あの塀を破る方法はないだろうか、ジョン君」

「ツジゲン帝国のソルガリオスを使えば破れそうだと思うのですが…」

「確かにあのドラゴンのブレスは強力だ。ソルファイゲン程度の威力があってもおかしくはないな、だが、あれでもまだあの壁を破るのには足りない。スカス君は何か案はあるかね?」

「僕とスペクさんでソルファイゲンを一点集中させて壁をこじ開けます、そこからドラゴンが攻め込むって言うのはどうでしょう。」

「なるほど…威力を一点に集中させ、壁をこじ開ける、それが一番合理的だな。よし!スペクにそう伝えて置く、その後の算段は我々がつける。ジョン君とスカス君は休んでいたまえ」

そう言うと、ドラゴンを管理している場所へとアルリが向かって行く。

久しぶりに二人きりで話す時間ができた。まず口を割ったのは当然、ジョンだ。

「隊長はなぜ、真っ先に俺を殺しにかかったんだ…俺にはどうしてもそこが気になって仕方がない。スカス…お前ならなんかわかるか?」

「僕もよくわからないけどさ、多分あの人は、この戦いを心待ちにしていたんだと思うよ」

「同士討ちをか!?」

「多分…アスタ隊長も如月の下に戦っているのが不満なんだろう。そして、強くなったお前と昔の決着をつけたかった。だからジョンに本気の勝負を挑んだんだと思うよ」

「じゃあ…俺はその想いに、応えなくちゃダメだな!」

「おいスカス!俺と剣の訓練と行こうか!」

「ああ!いくらでも構わないさ!」

そして、それぞれの思いを引き連れ、長い3日間が終わった。

そして今、夜が明ける。

時刻は朝の7時ごろだった。ソルファイゲンの豪雷の如き爆音が城壁に響き渡ったのは。

スカス、スペク、ジョンの三人を先頭に突破口を開いて行く。それについて行くが如く、アルマ・ゲオートやソルガリオスの隊列と、戦争で大幅に削られてしまった魔法使いの軍勢とブロンダの兵が続く。

それに応じるかの如く、500機近くいるなかの半数の戦闘機が機関銃を放ち、応戦する。

だが、アルマ・ゲオートの前ではそんなものはなすすべもなかった。次々と撃墜して行く。

「あいも変わらず、ツジゲンのドラゴンは半端ねぇな。」

「次が来る、僕たちも減らず口を叩いてる場合じゃなくなってきそうだ。」

すると、スカスたちの元へ中枢部からギラついた目をした剣士たちが十人ほど迫って来る。

「「ブレイザー!!」」

十人の兵士たちが魔法を放つ。だが、その攻撃もジョンは弾き返す。

「ハッ!この程度の魔法で俺の足止めになると思ってんのか!?」

すると、スペクがジョンの目の前に立つ。

「ここは私に任せて先に行け。こんなところで足止めを食らっている場合ではないだろう」

「ああ!任せたぜスペクさんよ!」

「…気をつけてくださいね」

「スカス…お前に心配されるまでもない」

スペクが兵士を挑発するポーズをとるのを確認すると、ジョンとスカスは城の内部へ乗り込んで行く。

城を駆け上がる。意外なことに、十人の魔法剣士隊をすり抜けるとその先に兵は一人も存在しなかった。

「おかしいな…まさかこんなに城の内部が手薄だとは」

「そんな見込みだから甘いのだよ、ジョン!!」

「その声は!!」

すると、玉座の後ろから2メートル近くの身長のあるあの男。アスタ・ラングスが佇んでいた

「…スカス、多分ここまで来たら次に来るのは如月だ。ここは俺に任せて、先に行ってこい」

「ジョン…死ぬなよ!!」

「俺もそのつもりさ」

そして、スカスはジョンを置いて二階へと続く階段へと進んで行く。

「無駄話は済んだか、ジョン。」

「お前の墓標にふさわしい場所だろう、どうだ、自分の仕えていた組織の玉座の前で生死をかけた死闘をする気分は」

「…最悪だ。最悪だけど、俺に負けの選択肢はねぇ!隊長…いや、アスタ・ラングス!!お前を一個人として俺がぶっ倒してやる!!!」

「その威勢だ!俺はそれを待っていたんだ!さあ、かかってこい!!!」

「うおおおおおお!!!!」

スカスは、長く続く螺旋階段を駆け上がって行く。

「やはり、変だ。」

二階、そして、三階へと駆け上がるって行くものの、一向に如月の姿は見えない。

どういうつもりなのだろうか、あの男が怖気付いて逃げ出すとも思えない。

だが、本当に魔法陣などの仕掛けもなくて、すんなりと駆け上がってしまう。

その途中で、昔いた工房の姿が見える。

「ここが…僕の全ての始まり。」

アメジさんと共に、色々な剣を直したり、作ったりしてたっけ。僕も、最後まで半人前だったけど、僕は強くなれたのかな?まだアメジさんにも追いついてないような気さえして来る。

《テメェ!またここに来やがったら、承知しねぇからな!?》

その言葉がここに来るとジーン…と響いてくる。僕は振り返らない。そう心に誓ったのに、僕はまた、ここで感涙がこみ上げつつもある。僕は勝てるのだろうか。この世界の中心に。

懐かしい窯を覗いてみると、最初期に作った剣がまだ残っていた。これを打ったら僕はアメジさんに叱られたんだっけ…そう思って僕は、その剣を振るってみると、思っていたより体に馴染んで行く。なんていうか、強い弱いじゃなくて、しっくりくる。そんな感覚が出てきた。

そう思った僕は、その剣を今まで持っていたものと持ち替えて、さらに上へと向かって行く。

気がつくと、もう既に最上階へとたどり着いていた。

そこには、如月烈火が只一人、この国全てを見下ろすように見渡していた。

「これが、俺の思い描いていた世界…それがこれの有様さ」

…?、いきなり何を言っているんだ如月は。

「とある中年が、憐れみの行き着く先で、現実の憂さ晴らしのためだけに作り上げた、俺自身が世界を最強の力で無双して行く世界。」

そうか、これは如月としての言葉じゃなくて、田中浩52歳無職ひきこもりとしての言葉なのか。

確かにそうだ。あいつの作った小説は、如月烈火という人物が色んな女とイチャイチャして、なあなあでツジゲン帝国を占領する話だったっけ。自分の力が思ったよりも高くなくて、この世界に絶望しているのだろうか。

「なぁスカス…この世界を見てみろ、何処がチートだ!何処がハーレムだ!」

「俺は大魔術師、巨大鋼龍、ジョン、スカス、そいつらに追い込まれていって、しまいには周りにいた女には全て逃げられてさ…」

「俺は哀れで見てられないだろ?こんな主人公があってたまるかよ!!」

「如月…君に思っていたこと全て言ってあげるよ」

「なんで君いつも他力本願なんだよ。自分自身で努力しようともしないで、いつも適当な神かなんかから与えられた力だけを頼りにしてさ。だから姫さまからも逃げられたんだろ、強くなろうとすれば、お前は絶対に俺たちなんかじゃ敵わない強さを手にすることができたはずだ!」

「うっ…どいつもこいつも努力努力とうるさいんだよ!!そんなもの、積み上げたところでなんの意味がある!!!結局は血統だ!!お前自身だってそうだスカス!ブロンダに生まれていなかったら!最初のドラゴン狩りのように、お前だってこんなに強くなれなかったはずだ!!」

「それは違う。アスタ・ラングスを見てみろ、彼はゴルダラ出身でありながら、」

「黙れ」

「ブロンダの者を圧倒する力を持ち合わせている。」

「…黙れ」

「つまり結局のところ自分自身をどう磨き上げるかが重要なんじゃないのか!?」

「黙れっていってるだろこのクソ野郎がぁーーーーっ!!!!」

すると、如月は怒りに任せた剣をスカスに振るう。

だが、当然のごとくスカスはその一太刀を受け止め

る。

「努力がなんだ!!磨き上げるがなんだ!!だったらせめて、お前が俺のために死んでくれよ!!!」

「そんなことはできない。俺はアメジさんと約束したからな!!」

その頃、ジョンとアスタの闘いは熾烈を極めていた。

「ふん、お前の太刀に迷いが無くなった事は褒めてやろう」

「あんたとの文字通りの真剣勝負、受けてやらない手はない!!」

「さらに少し鍛えて技術も向上したと伺える。だが!その付け焼刃で何が出来よう!!」

すると、本当に本当に一周の隙を突かれ、ジョンは致命的な傷を受けてしまう。

「ぐああああっ!!!」

骨が何本逝っただろうか。足に全くもって力が入らない。まさか、余裕を持って戦えると思っていれば、不意を突かれてこうも簡単に敗れてしまうとは。俺は死を覚悟した。

「もう終わりか。あっけない最期だったな、ブロンダの兵よ」

すると、ジョンの身体には龍の鱗のようなものが傷の部分から広がり、身体がみるみるうちに回復して行く。

「!?、これはまさか…ということはジョン・ブレイダはひょっとして…!」

その頃、共同軍本拠地では。

「何故ジョンはあの剣を選んだんだろうな、長老様。その訳をそろそろ話していただいても…」

「ええ、それは私も知りたかったの」

「ジョンはな…実は知能を持った龍と人間の間に生まれた子供なんじゃよ。」

「まさか…あの18年前のヒトガタと人間のハーフ」

「ヒトガタ…噂で聞いたことはありますけど」

「そういうことじゃ。あの事件のときにいたヒトガタ側についた女がジョンの実の母だったわけなんじゃよ」

ヒトガタ事件ーーーそれは、ブロンダ地方を揺るがす大きな事件だった。ブロンダには昔よりドラゴンが大量に住まう国であった、だがドラゴン全ては知能のないものと一方的に決めつけられていた。そんなところで、突然変異により、知能の持った二足歩行で2メートル台の翼を携えた《ヒトガタ》と呼ばれるドラゴンが知能のないドラゴンを操り、ブロンダの街を襲っていたのだった。

結局のところ、最後に来たアスタ・ラングスがヒトガタにとどめを刺して事件は収束を迎えたのだったが、その事件の間にヒトガタに恋をした女性がいた。

それが、ジョン・ブレイダの母親であるマリア・ブレイダである。

マリアは聖母という名に相応しくない、素行の悪い少女だった。だが、そんなところに町々を襲い尽くすヒトガタを見て、憧れを抱き、行動を共にした。

その間に、マリアはヒトガタの子種を得ていたのだろう。

ある日、ヒトガタは少しブロンダの者たちに追い込まれ、行き場をなくしていた。

その時、ヒトガタはマリアを人質にし、脅しをかけるものの、マリアを仲間と認めていないブロンダの兵がマリアを容赦なく殺してしまったのだ…

そんなヒトガタ事件から1ヶ月後、元々ヒトガタのアジトだった場所に、死にかけていた赤子が寝込んでいた。それが後のジョン・ブレイダだったのだ。

「それに、マジク・ソーディアはツジゲン帝国に対抗する武器として作られたものだったから、ドラゴンの因子に反応しなければ、引き抜けない作りになっているんじゃよ。これで十分わかっただろう」

「…実に哀しい運命を辿って来たのだな…ジョンは。」

「…ええ、本当に」

そして、それら全てを知っているアスタは驚愕を隠せない。

「まさか、お前があの時のヒトガタの息子だったとはな……!!」

だが、アスタはその後微笑みをこぼす。

「フッ…やるがいい…俺を殺していいのはお前だけだ。お前の父親の命を奪ったのは俺であることは間違いない」

「それに、俺があの剣に選ばれなかったのもこれで全て納得がいく…」

「…俺が、ドラゴンと人間のハーフ…信じられねぇけど、こうなったら信じるしかねぇ。だけど!あんたとは最後の最後まで真剣勝負でやり合いたい!!」

「成る程、やはりお前もそれを望むか!」

そして、男達は再び火花を散らす。

アスタは全身全霊を尽くし、ジョンは回復した力でアスタを圧倒してみせる。

グサッ…アスタの腹部に、マジク・ソーディアが突き刺さる。アスタはジョンに敗北したのだ

「フッ…ジョン・ブレイダ!最後に問おう!」

「はい!!」

「…貴官は!この国を背負う覚悟はあるか!」

「当然です!!なんとしてでもこの国を守り抜いてみせます!!!」

「ならば…もう聞くまい、ジョン・ブレイダに栄光…あ…れ……」

ガクッ、とアスタは倒れこむ。

「隊長、あとは我々に任せてください。」

と、涙ながらに倒れた隊長に独白する。

アスタ・ラングスは真っ暗闇の世界に飛ばされた。俺は死んだのだろう。と、即座にその光景を受け入れることができた。

そこに、アメジがアスタは話しかける。

「よう、あんたがまさかこっちに来るとはな。」

「だけど、その表情は未練なんて一つもなさそうだな」

「ああ、俺は、俺以上にこの国を託せる男に出会えた…俺はもうそれだけで満足だ。」

「ほう…そいつはどんな男だ?」

「…ジョン・ブレイダ。」

「成る程…あいつに全てを託すとは、あんた、やっぱ相変わらず見る目があるよ」

「お前もな」

ガッハッハと言わんばかりに、あの世には笑いが込み上げていた。

ジョンの雌雄は決した。あとは、スカスの戦いが残されている。

「「ブレイザー!!」」

二人は同時に同じ魔法を繰り出し相殺する。攻撃はやはりどちらも拮抗している。

「はぁ…はぁ…」

「くっ…」

だが戦いは続いて行く。スカスと如月は同じような攻撃を鏡合わせで反射しているかの如くに、そんな中、スカスは奇策に打って出る。

「剣にソルファイゲンを込める!」

すると、剣が大きな真空波となって如月の方向へと向かって行く!

如月に大きなダメージが伝わる。

「ぐっ…」

「これで終わりだ如月」

スカスは倒れ込む如月に一歩、また一歩と近づいて行く。

「ええい!俺はこんな力では終わらない!!喰らえ!!《リライター》!!!」

「!?、そんな魔法、聞いてないぞ!?」

すると、時空が大きく歪み、この世界に流れている時間が大きく巻き戻っていく。

スカスが修行する前、ゴルダラとツジゲンが戦争を始める前、スカスが職を探す前へと…

如月の苦肉の策で最後の最後に繰り出されたこの技は、時を巻き戻す力があるようだ。

全ては空白に戻る。如月…いや、田中浩の能力によって。

戻った時間を取り戻すことは、果たしてスカス達にはできるのだろうかーーーー

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