無理
「……。杏菜のこと好きなんだよ。でも、明と暮らしたいし、妾とか、そんな、変なこと気にしたくない。そもそも、もう、時代は変わったんだから、男の子が生まれなくてもいいじゃないか!それより、赤ちゃんと杏菜と、楽しい家庭を築きたい… 」
「そんな…男の子を産むのが私の…。家系図、見たでしょ。あそこに書かれた先祖全員が望んできたことなの。それを投げ出したら、罰が当たるよ…こんな裕福な暮らしできてるのも、先祖のおかげだもん。」
杏菜が涙ぐみつつ強情に言うのを見て、僕は、杏菜を追い詰めてしまった罪悪感と、先程までベットの上での緊張による疲労感で、一気に憂鬱な気持ちになった。それと同時に、明と家族3人で暮らしたい、という思いは、やはり間違ったものではないだろう…という感覚も、より心を押しつぶしてきた。
「杏菜…もう僕…」
僕は、言いかけた。杏菜と暮らせないかもしれない…と。
「別れるの?私と明を捨てるの?」
杏菜は、僕に言わせないばかりか、僕の顔を真っ直ぐ見て言った。
「え…?」
「ねえ…」
「杏菜が…不倫しようとするから…他の男を家に…しかも子供、子供って…」
杏菜は、可愛らしい眉を寄せて、本当に悲しそうな顔をした。
「……。健太くん…一緒にいたいの…」
「…。」
「好きなの…子供が欲しいってだけじゃないよ。」
「僕と家を出ないか?」
「え…?」
「明を連れて…。3人で…」
「無理だよ…」
「何で?」
「お母さんと離れたくないし…明の面倒だって私、分からない。」




