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6.効果の重ね掛け




 それから俺は、お守りとシロのネックレス作りにいそしんだ。首輪じゃない。ネックレスだ。もしくは斜め掛けお守り。これは気分の問題だ。シロは俺のペットじゃなくて、友達だからね。


 でもシロのネックレスは思ったよりも手間がかからなかった。ヒューイが組み紐をくれたからね。それを使わせてもらうことにした。

 組み紐とお守りを結ぶところだけ頑張れば完成。簡単なものだった。

 シロはそれでも喜んでくれたから、作ってよかった。


 で、肝心のお守りは、もっと簡単に作れないかと試行錯誤した。

 最初護符って言ってたし、紙だけでもいいんじゃない? って試したけど、これは駄目だった。逆にお守りのガワだけでも駄目。そもそも俺が願えばいいなら作る必要ないんじゃない、と思ってヒューイのブレスレットで試してもダメだった。



「神子様の中で、『加護を持ち運ぶ』という意味で、この形に意味があるのかもしれませんね」



 とはウーヴェの談。まぁ、うん。子供のころから馴染みがあるのは、確かにお守りかもしれない。

 形が揃ってればいいなら、ってダニエルにもお守りを作ってもらって試したさ。これは少しだけ効果があった。あくまでも少しだけ。効果はあるんだけど、シロに渡したお守りに比べると遊びみたいなものらしい。苦労したのにごめんね、ダニエル。

 っていっても、俺が自分で作ったやつも、シロのほど効果はでないっぽいけど。



「どれだけ強く願ったんだよ」



 ってマルクスに呆れられたけど、うるせぇ。シロの長寿を願って何が悪い。シロがもうお守りを持ってるのもあって、「どうせシロのじゃないしな」って心の奥底で思っちゃってるみたいで…………うん。シロが長生きするのは、悪いことじゃないはずだ。

 それに、あくまでもシロのお守りに及ばないだけで、ちゃんと使えるレベルのものではあるんだ。マルクスたちが争奪戦をしてるのも知ってるんだからな。それだけ切羽詰まってるんだろうけど、俺はどちらかというと不器用だから、量産はちょっと無理。争奪戦をしてるからと言って、誰も次を急かしたりしないのは助かった。


 で。今。なんでかマルクスたちが勢揃いで、俺の部屋にやってきた。



「へ? 帰省?」



 深刻な顔をしてるから何かと思えば。帰省って、実家に帰るだけだろ。何をそんな深刻な顔をする必要があるんだ。

 疑問は顔にも出たと思う。俺がわかってないことがわかって、補足してくれたのはダニエルだ。



「最近、魔獣の活性化が問題になっているとの報告が多いんだ。神子様のお守りがある者は、実態の把握に向かったほうがいいと思って」



「なるほど」



 それは帰省じゃなくて現地調査だろ。言葉は正しく使いなさい。

 たぶん、怪訝な顔をしちゃったんだと思う。ヒューイが慌てたように言葉を続けた。



「神子様の護衛は残った者がしますのでご安心を」



 いや、そこはどうでもいいでしょ。俺はここから出る気はない。危険なのはみんなの方だ。

 だって、何かあれば戦いになる、ってことでしょ。あの日見た、黒い異形のと。

 考えただけでぞっとした。俺はもう、できるだけアレは見たくない。



「誰が行くんだ?」



 聞けば、マルクスとヒューイ、ウーヴェも手を上げた。あとはクマのファルコと、ゾウのルディだっけ。まだあんまり関わったことのない二人だ。

 ……うん。今なら、もうちょっとできる気がする。



「今もお守り持ってる? 持ってたら貸してくれない?」



 俺の言葉に、5人は揃ってお守りを出した。首から下げてたり、ポケットに入れてたり、いろんなところから出てくるけど、みんなちゃんと肌身離さず持っててくれてるみたい。しかもこれ、全部俺がちゃんと作ったやつだ。試作品じゃないやつ。不覚にも、ちょっと嬉しくなってしまった。

 だからこそ、俺もできることは最大限にやらなくては。




「神子様?」



 不思議そうなヒューイの呼びかけには答えず、お守りを握りしめて目を閉じる。


 どうか5人が、呪われることなく帰ってきますように。

 できれば5人に同行する人たちも、みんな無事に帰ってきますように。

 そしてどうか、彼らが無事に帰るまで、この祈りが続きますように。


 あの時、シロに対して思ったみたいに祈れば、ほのかに手が暖かくなってきた。目を開けば、お守りがわずかに光ってる。よし、これならきっと大丈夫だ。



「ありがとう、返すね」



「「「ちょっと待った!!!!」」」



 へ? なに?

 一斉に叫ばれて、思わぬ迫力に後ずさりしてしまう。背中にはシロがいたから実際は下がれず、シロに体を預けるようになっただけだったけどね。


 俺が後ずさったから、みんな我に返ったみたい。はっ、としたように距離を取ってくれたけど、ウーヴェだけは距離を詰めてきた。



「俺の分、いいですか?」



「も、もちろん」



 ウーヴェのは青いやつだった気がする。手渡しで返せば、すぐに眼鏡をはずしてお守りを凝視しはじめた。



「……うわ」



 うわってなんだ、うわって。失礼な反応だな。



「ウーヴェ、どうなってる?」



 ルディに聞かれて、ウーヴェはまた眼鏡をかけ直した。あの眼鏡、なんなんだろう? 今度聞いてみよう。



「状態異常に対する効果はないが、呪い避けに関しては最初のお守りよりも強い。それもエリア効果が付いてるから、一定距離内の者全員に有効って出てる」



「おお、うまくいったんだ」



 なんだ、やればできるじゃん、俺。

 俺としては大満足の結果だったけど、なんでかみんなが一斉に俺を見た。



「効果を重ね掛けしたのか?」



「最初のお守りとやらも、規格外だと聞いていたが」



「神子様はどれほどの力をお持ちなんだ」



 何々、怖い! そんな一斉に喋られても!

 反射的にシロにすり寄ったら、シロがすぐに尻尾で俺を包んでくれる。そこでやっと、みんな我に返ったように、また距離を取ってくれた。シロがシャーって威嚇してくれたのもあると思う。ありがとう、シロ。本当に最高の味方だ。



「ごほん。と、とにかく、これがあれば無駄な心配は不要そうです。ありがとうございます、神子様」



「「「ありがとうございます」」」



 ヒューイに釣られるように、みんながお礼を言ってお守りを受け取っていく。俺はシロに包まれたままだから、シロ経由だけどね。

 俺はシロの尻尾からひょいと顔だけを出して、調査に行くという5人をじっと見た。



「…………ちゃんと全員無事に帰ってきてよ」



 そう願うくらいの情は、ちゃんと持ってるんだから。

 俺の言葉に、5人は少しだけ驚いたような顔をする。だけどすぐに、真剣な顔で頷いてくれた。



 翌日。5人はナワバリへと旅立っていった。









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