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22.ただいま





 ヒューイに散々駄々をこねられながらも帰ってきた俺を待っていたのは、シロの盛大な歓迎だった。



「神子さまあああああ!!」



「シロ!!」



 大きな体で抱き着いてきたシロを、俺も両手を広げて抱き留める。シロは力加減が上手だから、俺を押し倒したとしても全体重を乗せてきたりはしない。あくまでもじゃれ合いの範疇で、ぐりぐりと頭を押し付けてきた。



「お帰りなさい!」



「ただいま!」



 うん、元気そうでよかった。俺も久しぶりのシロを思う存分撫で回させてもらう。

 わしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃ……

 シロを撫でる手が止まらないし、シロもシロでゴロゴロと喉を鳴らしながら俺にじゃれついてくれる。本当に可愛くていつまででも撫でていられたんだけど。



「そこまでだ」



 機嫌悪そうなマルクスに無理やり引き離されて、喜びは中断してしまった。



「よぉ、ケイ。遅かったな?」



「あはは……ただいま」



 目の前にいるマルクスは、にこりとも笑わない。いや、普段からそんなに笑うほうじゃないけど。でも今は、こう、前の怖い雰囲気のまま俺を睨みつけてくる。首根っこを掴まれてる俺は、逃げることも出来ない。

 何なんだよ!? 本当に怖いんだけど!!



「俺に言うことは?」



「……ただいま?」



「違う」



 え、何。他になにかあったっけ?

 怖いから、なにもリアクションできない。何も言わない俺に、マルクスはチッと舌打ちをして、



「誰にも触らず、触らせるな。そう言ったはずだが、なんでお前からワシの匂いがするんだ?」



「…………」



 思わず自分の匂いを嗅いでみたけど、もちろん俺には何もわからなかった。

 いや、だって香水とかしてるわけじゃないしね。ヒューイは綺麗好きらしく、毎日ちゃんとお風呂に入ってたから石鹸の匂いとか? いや、それならルディも同じはずだ。ルディの家のものを使ってたんだから。

 マジでわからない。獣人こっわ。


 そう思ってたら、マルクスの腕を払いのけて、ヒューイが背中から覆いかぶさるように抱き着いてきた。



「一緒に寝るくらい、俺たちが深い仲になったからに決まってるだろ」



「な!?」



「ばっ!?」



 マルクスが大きく目を見開いたけど、俺だってびっくりだ。何言い始めてるんだ、こいつ!!



「ちょっと、ヒューイ!!」



「事実でしょう? ルディの家にいる間、ずっと同じベッドで眠っていたんですから」



「そ!」



 それはそうだけど!! マルクスにバレたらやばいやつだろ、これ!! 事実だからこそやばいやつ!!


 マルクスだけじゃなくて、シロも驚いてる。見れば壁のほうにはエルストたちもいて、何故かライナーは口笛を吹いていた。なんか、誤解をされてる気がするぞ!?

 だけど下手なことを言ったら拗れるのがわかってる。わかってるから何ていえばいいかわからずにいたら、天の助けが聞こえてきた。



「ほぉう。神子様の護衛をする、と言っていたのは、私の記憶違いかな?」



「! ルディ!!」



 ナイスタイミングでいいこと言ってくれた!! ってか、それ、俺も初耳ですね!!

 ヒューイもルディには大きく出れないらしい。びくりと体を揺らした時に力が緩んだので、俺は急いで抜け出してルディの元まで逃げ込んだ。

 大きな背中の後ろに回り、ルディを盾にしながら精一杯の抵抗をする。



「寝ただけで、それ以上は何もないから! 今日からはシロと寝るし!!」



「えっ!?」



 なんでヒューイまで驚くんだ。当たり前だろ!?

 俺の言葉を聞いて、マルクスの空気が一瞬だけ和らいで、また張り詰める。そんな二人から庇うように、ルディが俺を抱き上げた。



「部屋に行きましょう。お疲れでしょうし、今日はゆっくり休んでください。護衛は私がします」



「それは悪いよ」



 ルディだって、移動で疲れてるはずだ。だからルディも部屋でゆっくり休んでほしいと思ったんだけど。



「孫を守るのは、祖父の務めです」



「「「孫!?!?」」」



 トラのみんなの大合唱が聞こえるけど、俺にとってはただの優しい言葉だ。甘えるように抱き着けば、にっこりとほほ笑んでくれた上、



「お疲れの神子様に無茶無謀無体を働くような野蛮人は、この場にはいないと思いますけどね」



 なんて釘まで刺してくれるんだから、本当にすごいと思う。頼りになる!!


 この日、ルディは俺の中の頼りになるランキング堂々2位に浮上した。今まではヒューイがいたんだけどね……ちょっと……ウン。ルディの方が絶対に頼りになる!

 歩き出したルディのすぐ傍に、シロが急いで駆け寄ってくる。ぶんぶんと揺れる尻尾が本当に可愛い。手を伸ばせば、ぐりぐりと額を押し付けてきた。可愛い。


 頼りになる二人に囲まれて、俺はゆっくりまったりのんびりとした一日を過ごし。久しぶりに一人でベッドで眠ったのだった。







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