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15.朝食タイム





 翌日。

 びっくりすることに、俺はヒューイが起こしに来るまでぐっすり眠った。ヒューイとルディの何とも言えない微笑ましそうな視線が、思い出すだけでも恥ずかしい。綺麗に忘れることにしよう。はい、忘れた!


 朝食はリビングみたいなところで、三人で食べることになった。野菜中心のさっぱりした食事は、正直嬉しい。

 市場でも食べたイチゴっぽいものを食べてたら、ヒューイが不思議そうに聞いてきた。



「神子様は果物が好きなのですか?」



「うん。朝はこういうのがいい」



 お城の食事に不満はないけど、朝からどでかい肉が出てきたりするんだよな。食べれないからシロにあげてるけどね。

 ちなみに何の肉かは知らないし、知りたくないから聞いてない。昼とか夜ならちゃんと食べれるし、美味しいと思うよ。でも朝は駄目なんだよ、わかってくれ。ゼリー飲料が朝食代わりだった人間の胃は、そんなに頑丈じゃないんです。


 その点、これは市場で原型を見たし、美味しいのも知ってる。朝食にしては甘すぎるけど、果物の甘さは嫌いじゃない。俺にはこっちのほうが合ってた。

 たぶんルディの好みなんだろうな。俺と同じように果物や野菜を食べてる。ゾウって草食だし、肉より野菜の方が好きなのかもしれない。ありがたいことだ。


 ちなみにヒューイの前にだけはででんと肉がある。小さく切られてるけど、量が半端ない。自分は食べないのにちゃんと用意してるんだから、ルディは本当に気が利くなぁ。

 そう思ってたら、見慣れないものを皿ごと差し出された。



「こちらは食べたことありますか?」



「たぶんないと思うけど、何これ?」



 焼き芋みたいにも見えるけど、それにしては細長いような。

 素直に聞いたら、信じられない言葉が飛び出してきた。



「バナナです」



「バナナ!?」



 もしかして焼いたバナナ!? それは初めてだ!!

 いや、俺の知ってるバナナかどうかはわからないけど。でも興味は引かれた。確かによく見たらドライフルーツのバナナっぽく見える気がしてきたようなしないような。

 好奇心のまま串焼きになってるバナナを手に取って齧り付けば、じゅわりと甘みが広がった。うん、バナナだ。だけど、すごくトロトロしてる。自然と頬が緩む美味しさだ。



「美味しい」



「それはよかった」



 パクパクと食べてたら、バナナ以外にもいろいろと薦めてくれた。ルディが薦めてくれるものは全部美味しい。しかも大皿で盛られた料理を少しずつ取り分けてくれるから、いろんな種類をたくさん食べれる。なんだかビュッフェみたいで楽しいな。

 昨日は夕食も食べずに寝ちゃったから、お腹も空いてる。いくらでも食べられそうだ。



「神子様、こちらもいかがですか」



 ヒューイが薦めてくれたのは、一口サイズの木の実っぽい何かだった。ブルーベリーみたいに見えるけど、色が緑だ。これも見たことない気がする。

 ひょいと手掴みで一粒だけ手に取って口に放り込んだ途端、俺は思わず叫んでいた。



「すっぱ!!」



 梅干し!? 梅干しなのか、これ!? 見た目は全然違うのに、梅干しっぽい味がする! 不思議!!

 今まで甘かったから、油断して大きな声が出た。ヒューイは慌てた顔をしてるけど、俺にとっては懐かしい味だから問題ない。

 すごくすごく不思議だけどさ。


 そんな小さな騒動がありながらも、楽しい朝食の時間が続く。テーブルに並ぶ食べ物は美味しいし、話題も食べ物のことが多いから俺も興味深く聞ける。

 そう。そのまま楽しんで食べれたら、それがよかったんだけど。

 ……起きてからずっと気になってることがあるんだよね。何度か聞こうかと思ったけど、なんとなく聞き辛くていまだに聞けてない。でも、聞かなかったらずっと気になったままだと思って、思い切って聞いてみた。



「なぁ、ルディ。昨日いた人たちは?」



 何せこの量の食事だ。まさかルディが作ったわけじゃないだろう。たぶん、コックさんみたいな人がいると思う。

 料理だけじゃなくて、昨日はもっといろんな人がいたはずなんだ。掃除してる人とか、何かを運んでる人とか。入った瞬間に騒がしかったもん。

 だけど、今日は誰にも会わないし、俺たち以外の声も気配もしない。気になって当然だろう。


 俺の質問に、ルディはいたって普通に答えてくれた。



「皆、家に帰っています。神子様が滞在中は、顔を合わせることはないと思います」



 ……それはなんだ。あの、昨日のアレが、何かソレしましたか?

 すっごく不安に思って黙り込んでしまったら、ルディはちゃんと補足してくれた。



「元々その予定だったのです。神子様は他人に世話をされるのは好まない、とシロから聞いていましたので」



「なるほど!」



 よかった! ちゃんと最初から決まってることだった!

 いつだかトラの人たちが無理やり身支度手伝ってきたけど、あれはすごく嫌だったもんな。流石シロ。よくわかってる! 俺は自分のことはちゃんと自分でできるので!


 あらかじめ決められていたことだとわかれば、もやもやしてたものもすっかり晴れた。よかったよかった、と思ったところで、今度は違うことを思い出した。



「そういえば、昨日、一緒に来てくれた人にもお礼言ってない」



 馬車を降りた途端にルディの家だったから、すっかり忘れてた。多分護衛を兼ねてたんだと思うし、悪いことをしちゃったな。

 少しだけ心配になってルディを見れば、彼はなんでか少しだけ目を細めた。



「帰りも同行します。その時に是非」



 そうなんだ。ならその時に言えばいいか。ルディの仕事を増やしたいわけでもないからね。


 安心したら、食欲が戻ってきた。今度は全然ミニじゃないトマトに齧りつけば、これはちょっとすっぱかった。でも甘いものが多かったから、ちょうどいい口直しかもしれない。



「沢山召し上がってくださいね」



 ルディが俺を見る目が、微笑ましそうというか、親戚の子供を見守るおじちゃんみたいな感じなのは何なんだろうな。今まで話したことがあんまりなかったとはいえ、嫌われてなさそうなのはよかったけど。でもなんとなく居心地が悪い。マルクスの睨むような視線に比べたら、月とスッポンレベルにマシだけどね。


 お言葉に甘えるように、再びバナナに齧りつく。うん、美味しい。

 色々と気になることはあるけど……目の前の美味しいものには逆らえない。また一つ口に入れれば自然と緩む頬を、どうしても抑えることはできなかった。







アルファポリスに追いつきましたので、毎日更新はここまでになります。

今後は週2~3回更新になりますが、引き続きよろしくお願いいたします。

(まだ年齢制限はどうするか迷ってるので、引き続きこちらで更新します)

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