9-0 大体合ってる御伽物語 -須佐之男命-
——「司命と!」「司録の」
「「大体合ってる御伽物語!」」
司録
「今回は……日本神話屈指の問題児。海と嵐の神、須佐之男命をご紹介します」
司命
「まずいよなあ。ぼく、絶対に関わりたくないぞ」
司録
「殴り込みに来てしまったものは仕方ありません。ぼくも身をひそめますが、せめて解説だけでもしておきましょう」
司命
「トラブルを起こしては、歴史を動かす男! 天岩戸事件は、スケールのでかい姉弟喧嘩だったよな」
司録
「その後、高天原を追放され、地上へ降りることになります」
司命
「クビってわけだ」
司録
「ところが一転、地上では八岐大蛇を討ち、英雄として名を上げました」
司命
「オロチの過去はどうあれ、人食い大蛇を退治したのは事実。神代のスーパーヒーローだよな。そのあとは高天原に戻ったのか?」
司録
「須佐之男命は出雲国にとどまります。八岐大蛇の被害に遭った姉妹の末っ子、櫛名田比売と結ばれ、国を治める側へと転じます」
司命
「荒ぶる神が、家庭持ち! 劇的なビフォーアフターだね」
司録
「そんな須佐之男命、一時期は〝根の国〟を支配したという記録があります」
司命
「お、冥界にも地上にも繋がっている国か。そういう土地は複数あるんだよな。地上では、霊場と呼ばれたりする」
司録
「〝根の国〟では、のちに国作りの神となる、大国主命との逸話があります」
司命
「大国主命といえば、因幡の白兎伝説だろ。皮を剥がれたうさぎを助けた話。おれ、ああいうのは大好きだ」
司録
「司命は、動物には優しいですね。須佐之男命に直接の関係はありませんが、これも有名な話ですから紹介しておきましょうか」
司命
「わーい。もふもふ昔話だ」
司録
「隠岐の島から因幡国へ渡ろうとするウサギ。しかし目の前には海。自力では泳げません」
司命
「か弱いウサちゃんだもの」
司録
「そこで、サメをだまそうと考えました。〝ぼくたちの仲間ときみたちの仲間、どちらが多いか比べっこしよう〟と持ちかけたのです」
司命
「全然、か弱くなかった。むしろたくましい。サメを数えるふりをしながら、背中をぴょんぴょんと飛び移り、因幡国を目指したんだな」
司録
「ところが、もう少しで渡り切るというところで、〝やーい、だまされた〟とネタばらしをし、サメたちをからかってしまいます」
司命
「あと一歩、勝利宣言が早かった」
司録
「サメたちはかんかんになり、ウサギの毛をすべてむしり取ってしまいました」
司命
「調子に乗って、痛い目を見るとはこのことだ。人間味があるなあ」
司録
「ウサギですが。
しくしくと泣いていると、通りがかった神が〝海水で体を洗い、風に当たれば治る〟と嘘のアドバイス。もちろん、塩がしみて余計に痛むばかりです」
司命
「動物をいじめるやつは、神様だろうと嫌いだ」
司録
「そこへ来たのが大国主命です。『真水で洗い、ガマの穂にくるまれ』と、まともなアドバイス。するとたちまち回復し、元通りの白ウサギになりましたとさ」
司命
「守ってもらえてよかったねえ」
司録
「ウサギは心を改め、大国主命に付き従うことにしたのです」
司命
「助けてから仲間にする。順序だっていて良いな。きび団子ひとつで釣るよりも、よほど納得感がある」
司録
「桃鬼さんに聞かれないように。
さて、須佐之男命に話を戻しましょう。冥界では、娘婿候補となった大国主命に数々の過酷な試練を課しました。蛇だらけの部屋に放り込んだかと思えば、お次はムカデとハチの部屋へ」
司命
「お、圧迫面接。暴れん坊らしくなってきたね!」
司録
「しかし娘が大国主命に肩入れし、二人は駆け落ち。太刀、弓矢、琴も持ち出されてしまいます」
司命
「あちゃー。娘に宝に未来まで。相続フルセットだ」
司録
「結果として娘夫婦を追うことはなく、やがて表舞台から退いたとされています」
司命
「世界をかき回し、伝説を残して去る。いやあ……厄介だけれど、いなきゃいないで困るタイプだな」
司録
「今回、アマテラス様のご意向で派遣されてきたようですが?」
司命
「完全にキレていたな。れーちゃん、取って食われなきゃいいが。あはは」
司録
「八岐大蛇に関する新たな記事を世界中にばらまいたのですから、反感を買うのは当然でしょうよ」
司命
「今頃、焼き芋ならぬ、焼きウサギになっていたりして。ぎゃはは」
司録
「アマテラス様は、須佐之男命が昔のエンマ様を知っているとおっしゃっていました」
司命
「うーん。チビエンマ様、想像がつかないね。生まれたときから〝閻魔大王〟だったわけじゃないのか?」
司録
「過去をたどれば、エンマ様が〝閻魔〟の職に就いた経緯がわかります。それを再現すれば、再び力を取り戻すことができるでしょう」
司命
「まったく、冥府は手のかかるやつばかりだなあ!」
司録
「おまえもですよ」
司命
「さあて、須佐之男命の登場が、冥府カンパニーにとって吉と出るか凶と出るか? お楽しみに!」
司命・司録
「「以上、〝大体合ってる御伽物語〟でした!」」
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