8-0 大体合ってる御伽物語 -桃太郎-
———「司命と!」「司録の」
「「大体合ってる御伽物語!」」
司録
「……おい、司命、生きていますか?」
司命
「ああ……司録も無事か」
司命・司録
「「……くっそおおお!!やられたーーー!!!」」
司命
「皿洗いをしていたら、突然、桃鬼さんに後ろから斬りつけられたぞ!」
司録
「正確には、驚いた拍子に泡で滑り、二人そろって頭を桶にぶつけ、刀はかすった程度。難を逃れたわけですが……」
司命
「それは言わなくていい。恥ずかしいから言わないでおこう」
司録
「しかし、実際に刀を振り下ろされたわけですから、紛れもなく消滅の危機でしたよ。最近のぼくたち、怪我をしすぎでは?」
司命
「労災案件だよな、これ」
司録
「さて。今回は——もはや名前を出すのも癪ですが、桃太郎についてご紹介します」
司命
「言わずとしれた、日本昔話界隈のトップランナーだな。司録は、桃鬼さんの生前が桃太郎だったと知っていたか?」
司録
「知りませんよ。ぼくらよりずっと前から冥府で働く古株ですからね」
司命
「生前、近所に住んでいたクソガキどもが歌っていたなあ」
司録
「も~もたろさん、ももたろさん♪ お腰につけた、きび団子♪ ですか?」
司命
「うん、そんな感じだったかな。要は、桃から生まれた正義のヒーローだ。説明は以上!」
司録
「さすがに情報量がなさすぎます。もう少し努力しましょうか」
司命
「だってえええ! 傷が痛むよおお! 悔しいよおお! 油断していた自分が憎いよおお!」
司録
「ほとんどは、滑って転んでぶつけてできた、たんこぶの痛みでしょう」
司命
「どちらかというと、精神的ダメージが大きいんだよ。もういい。適当に解説してくれ」
司録
「はいはい。
昔々あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きます」
司命
「うわあああ! きっとそいつらが、桃爺と桃婆じゃん。うわあああ!」
司録
「川で、おばあさんはびっくり。どんぶらこ、どんぶらこと大きな桃が流れてきました。家に持ち帰り、おじいさんと二人で食べようと桃を割ると、中から赤ん坊が現れます」
司命
「ばぶう……」
司録
「子どものいなかった二人は、その赤ん坊を桃太郎と名付け、大切に育てました」
司命
「うわああん! どこで育て方を間違えたら、同僚を斬り捨てる半鬼になるんだよ!」
司録
「やかましい。少しは落ち着いてくださいよ」
司命
「無理。ぼく、人間不信になった」
司録
「それは今に始まったことではないでしょう。
さて、成長した桃太郎は、人々から財宝を奪うという鬼たちの退治を決意します。おばあさんにきび団子を作ってもらい——」
司命
「その団子が問題なんだよ!」
司録
「鬼ヶ島への道中で、犬、猿、キジを仲間にしました。彼らは、きび団子と交換に、桃太郎のお供になったのです」
司命
「同じ団子を、せっせとれーちゃんに与えていたよな。れーちゃんもれーちゃんで、食いすぎだけれど……」
司録
「人間を服従させるには、団子が一つでは足りないのかもしれません。だから長い時間をかけて、焼き芋の体内に蓄積させた」
司命
「主従契約完了、ってわけだ」
司録
「桃太郎は犬、猿、キジとともに鬼たちを討ちます」
司命
「バッサバッサと」
司録
「そして鬼ヶ島から財宝を持ち帰りましたとさ。めでたしめでたし」
司命
「人間にとっては英雄譚だ」
司録
「一方で、鬼たちにとっては、侵略と虐殺です」
司命
「エンマ様はそれを罪と判断し、冥府で働く罰を与えたのか」
司録
「そして桃太郎だけでなく、おじいさんやおばあさん、鬼ヶ島の鬼たちもまとめて厨房で雇ったわけです」
司命
「せめて鬼たちとは部署を分けてほしいもんだ」
司録
「しかも桃太郎、おじいさん、おばあさんは、半分鬼の姿に変えられました」
司命
「……確かに、反乱を起こしたくもなるかも」
司録
「そんなこんなで恨みが募り、桃鬼さんは冥府の乗っ取りをたくらんでいるようです」
司命
「れーちゃんが自力で体を取り返せたのは、不幸中の幸いだな」
司録
「しかし、ここから壮絶なバトルシーンが始まるに違いありません」
司命
「ぼくたちも加勢しよう! ほら、起き上がるんだ、司録!」
司録
「そうですね。無敵の閻魔帳に、炎、紙の能力が加われば、刀一本など恐るるに足らず。
……うわっ!? 桃爺に桃婆!? 何をするのですか!」
司命
「うわああん! 鍋で殴りつけるのはやめて——」
桃太郎を悪者にして申し訳ないです…
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