6-0 大体合ってる御伽物語 -月読命-
———「司命と!」「司録の」
「「大体合ってる御伽物語!」」
司録
「……いや、早くないですか? このコーナー、つい三話前に担当したばかりですが」
司命
「仕方ないだろ。新キャラの投入ペースがバグってるんだ」
司録
「制作側の都合を押しつけられたというわけですね」
司命
「ここで文句を言うな。おまえの顔を見るだけで頭痛がする。長話はごめんだ」
司録
「ぼくはおまえの顔を見るだけで吐き気がしますよ。おあいこですね。では手短に済ませましょう」
司命
「今回紹介するのは、高天原のロイヤルファミリーの一員、月読命だ」
司録
「なぜ彼について解説する必要があるのです?」
司命
「いいからいいから。おまえには関係ない」
司録
「……。
月読命は、天照大神の弟であり、須佐之男命の兄。この姉兄弟は三貴子とも呼ばれます」
司命
「月読命は、若干、影が薄いんだよなー」
司録
「出オチのようなことを言うのはやめてください」
司命
「太陽の姉、嵐の弟の間に挟まれれば、誰だって霞むさ」
司録
「地味な分、仕事は堅実です。夜と月を統べています」
司命
「地味って、おまえもひどいこと言うじゃん。
で、須佐之男命と同じく、月読命も天照大神と仲が悪いんだよな」
司録
「月読命が、保食神という食物の女神を殺したことが原因で、決裂したとされています」
司命
「なんで殺しちまったかなー」
司録
「月読命の訪問があった際、保食神は、口や鼻や××から食べ物を出して、もてなしました」
司命
「要は、ゲロを振舞ったんだな。うっ、もらいゲロしそう」
司録
「提供方法に問題がありましたね」
司命
「調理方法にも問題アリだろ」
司録
「なんと無礼な、とブチギレる月読命。たちどころに保食神を切り捨てたとされています」
司命
「早い早い早い! 殺すのが早い。物事には順序ってもんが……」
司録
「きっと天照大神も同じことを思ったのでしょう。のちにこの一件を聞き、ブチギレました」
司命
「ブチギレ姉弟」
司録
「これをもって、太陽と月は同じ空に並ばなくなったとされています」
司命
「昼と夜が分かれた理由だな」
司録
「一方、切られた保食神の体からは、稲や粟などの五穀が生まれ、それが田畑の種となりました」
司命
「世のためにはなったわけか。
しかし、いいかげんあの家族は、自分たちの喧嘩が世界にどれほど影響を与えるかを学んだ方がいいな。はあ」
司録
「神様に対してため息をつくのはやめてください。罰が当たりますよ。また不機嫌ですか?」
司命
「誰もが羨むエリート一家に生まれておきながら、喧嘩ばかりで嫌気が差すんだよ。贅沢なやつらだ」
司録
「仕方がないでしょう。昔々の話です。今は三人とも大人になっているはず」
司命
「だといいけれど。さて、月読命にまつわる他のエピソードは?」
司録
「特にありません」
司命
「英雄譚がないな。そりゃ知名度も低いわけだ」
司録
「派手な逸話ばかり持つ神よりも、温和そうで、よほど親近感がありますけれどね」
司命
「親近感? 温和の対義語みたいなやつが、何を抜かしているのやら」
司録
「——改めて聞きますが、なぜ月読命についての解説を?」
司命
「だから関係ないってば。おまえは、のけ者だ。首を突っ込むなよ。あっかんべー」
司録
「月読命は、今も表舞台に顔を出さない隠者です。裏では何をしているかわかりません」
司命
「高天原にはいないのか?」
司録
「少なくとも、常駐しているという話は聞きませんね」
司命
「……ちなみに、居場所を知っているか?」
司録
「……怪しいですね。どうせろくでもないことを企んでいるのでしょう」
司命
「違う違う。おまえは物知りだから、これも知っているのかと思ってさ。でも、さすがに知らないかー。いやいや、無理はしなくていいよ? 司録でも知らないことはあるよなー」
司録
「ありません」
司命
「ん?」
司録
「知らないことはありません」
司命
「えー、すっごーい。じゃあ教えてくれー」
司録
「月読命に会うには、条件があります。夜、満月、海、そして無意識。これらがそろえば対面が叶います」
司命
「なんだかはっきりしない方法だな」
司録
「だからこそ、会える者はほぼいない。
しかし、まさか会いに行こうとしているわけではないのでしょう?」
司命
「と、当然だ」
司録
「なんにせよ、月読命を怒らせて、夜を崩壊させることだけは避けてくださいよ」
司命
「スリルがあるな」
司録
「危険な神かも……」
司命
「おまえは心配性すぎるんだよ」
司録
「もう知りませんよ。まあ、ゲロだけは吐かないように」
司命・司録
「「以上、〝大体合ってる御伽物語〟でした!」」
月読命に関してはエピソードが少なく、謎だらけです。
平日は毎朝7時頃、土日祝は正午頃に更新いたします。




