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4-0 大体合ってる御伽物語 -小野篁-

 ——「司命と!」「司録の」

「「大体合ってる御伽物語(おとぎものがたり)!」」


 司命

「まずご紹介するのは……地上から冥府へテレポート! デリバリー界のニューヒロイン、くそ生意気小娘の、のんちゃんだ」 


 司録

「正しくは、(たかむら) 野々子(ののこ)です。中学二年生。競技かるた部。小学六年生の時点で、史上最年少クイーンの座を獲得」


 司命

「待て待て、小六でかるたクイーン? 一般的な小六なんて、まともに靴紐も結べないだろ」


 司録

「それは人によりますね。

 さて、篁野々子は、前世、前々世、それ以前にも、地上と冥府を往復する能力を有していました。寿命を終えるたび、その力だけを引き継いで生まれ変わるのです」


 司命

「こんなやつ、歴史上、他にいないよ」


 司録

「その出発点である人物は、平安時代を生きた小野篁(おののたかむら)。昼は地上で朝廷の役人、夜は冥府でエンマ様の裁きの手伝いをしたとされています」


 司命

「あー、小野さんね。名前は聞いたことがある」


 司録

「雲上人と(あが)められる最高職で国政を担い、日本屈指の歌人でもありました」


 司命

「お上品なことで。ここらにはいないタイプだな」


 司録

「おまけに字も上手い。エンマ様が達筆なのは、小野篁の手ほどきを受けたからです。その見返りに、小野篁の知人の寿命を伸ばしたとか」


 司命

「当時の〝司命〟の取り計らいだろうな」


 司録

「昼は役人、歌人。夜はエンマ大王の補佐。体がいくつあっても足りません」


 司命

「そんな小野さんの、生まれ変わりの生まれ変わりの……生まれ変わりが、のんちゃんというわけだ。昼は中学生、兼、かるたクイーン。夜は冥府の配達人。小野さんと同じくらい忙しそうだ」


 司録

「篁野々子に、前世やそれ以前の記憶はありません。エンマ様は彼女、または彼の手を借り、必要に応じて地上の物品を取り寄せます」


 司命

「寺の境内(けいだい)にある井戸に飛び込んで、こちら側に来るんだろ? 通勤経路が特異すぎる」


 司録

「定期券は必要なさそうですね」


 司命

「そもそも改札がない」


 司録

「乗り換えもありません」


 司命

「冥府に直通だ。

 れーちゃんも気にしていたが、お代はどうやって払っているんだ? 冥府(うち)は一文無しなのに」


 司録

「まあ、貨幣という概念がないので、ある意味では貧乏家族ですね。篁野々子は、一生分の配達の礼として、来世についてちょこっとだけ決める権利をもらえるのです」


 司命

「来世を決める!? さすがに都合が良すぎるだろ」


 司録

「ちょこっとだけですからね」


 司命

「人生の微調整か。エンマ様がOKを出せば、来世で願いが叶う、ということだな」


 司録

「確か前回のお願いは、〝とびきり可愛い女の子に生まれ変わらせて〟だったかと」


 司命

「……あいつがしょうもないやつでよかったな」


 司録

「〝世界の覇者にして〟などと頼まれたら困りますね」


 司命

「しかし、配達人がのんちゃんになってから、エンマ様の注文の数が増えていないか? やたら甘いものが届く気がする」


 司録

「エンマ様は、ぼくたちにお裾分けをしてくださいますね」


 司命

「ぼくたちの感覚としては、大体、月に一度のペースかな。のんちゃんに言わせれば、週一らしいが」


 司録

「冥府と地上では時間の流れ方が異なりますので。本来、その差が読めないのが恐ろしいのですが。井戸を通る方法に限っては規則的で、冥府では、地上のおよそ五倍の時間が流れるようです」


 司命

「つまりこちらで一時間うろうろしてると、あちらでは五時間経つわけだ」


 司録

「ええ。ですから彼女は絶対に長居しません」


 司命

「地上で行方不明になっちゃうからな。でも、たまにエンマ様と話し込んでいないか? もしかして、のんちゃんはエンマ様のお気に入り?」


 司録

「おまえは本当に下世話ですね。エンマ様が誰かを気に入るなど、天地がひっくり返ってもないでしょう」


 司命

「……」


 司録

「とにもかくにも、今回の人生は、ただの配達人で終わりたくはないようです」


 司命

「れーちゃんの位置を横取りしたいと。司録はどちらを応援する?」


 司録

「別にどちらでも。優秀な方が残ればよいのではないですか」


 司命

「あはは! 情け容赦のないことで」


 司録

「合理的と言ってください。司命は?」


 司命

「ぼくはどちらも転落すればいいと思うね」


 司録

「どの口が情けの話をしたのですか」


 司命・司録

「「以上、〝大体合ってる御伽物語〟でした!」」

司命

「わたあめと 焼きそば買って コーギーと、だっけ?」

 司録

「わたの原 八十島(やそしま)かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ 海人(あま)釣舟(つりぶね)、です。

 おまえは坊主めくりでもしていなさい」

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