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ロシアン ルーベッド  作者: 楠本 茶茶(クスモト サティ)
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第32部分 サブマネ

第32部分 サブマネ


「社長、おはようございます」

『おはよう、タク。さっそくはじめましょうか」

「はい。昨日考えてみましたが、やはり問題山積ですね。頭が痛いところです」

『見せて』

「これですが、全然整理はしてませんよ。ブレーンストーミングのつもりなので」

『それでいいのよ、タク。すべてはこれから』

「気がラクになれますね、そういうお心遣い」

『パターンと課題、解決すべきことを並べたのね。ふむ』

 社長が長考に入った。オレは待っている。


『タク、①はどこが良いと思う?』

「手っ取り早い方法は囲い込みですね、治外法権的な」

『島か船かな、豪華客船。伊豆の初島とか、横浜の山下丸みたいな感じでもいいし』

「ショッピングモール的な感じもどうでしょうか」

『病院とターミナル施設、老人ホームとお寺、葬祭や火葬場とかの複合施設みたいに?』

「あ、そうなんです。場合によっては他の宗教施設を中心におくのも一方かと」

『もう街を作ってしまえ、と?』

「カネかかりますけど」

『それは今はいいの。生贄の選抜は?』


「ズバリ来ましたが… これはいくらでも、後付けでも。何ならゲストに選ばせても」

『そうね。じゃ②は?』

「あ、それと、ホテルなら、インフラも設備もどこかでキチンと分けた方が良いです」

『どうやって?』

「ホテル用区画と、そうですね住宅用区画とかに」

『わかったわ、じゃ②をどうぞ』

「②は死の方法ですね。帝北では、選ばれたら見張りつけて軟禁、即日執行でした。元々同意はあったし、外に漏れる心配はほぼ無かった。選んだ後に、生贄自身の意思でどこかに移動してもらうのには、やはり無理があると思います。」

『そうよね』

「誰かが逃げると、興行的には成立が難しいですね。ハンターを送るのはさすがに…」


『身代わりの動物とかは?』

「今はネコ一匹でもウルサイですからね。家畜でさえ痛みを与えないようにヤッてます」

『そうだったんだ。アタシ食べるだけだから、ふふふ…』

「それに苦痛を与えないと約束をするには、麻薬や麻酔が不可欠、つまり医者ですね」

『③と関わるわね。じゃヤルのと幇助の方は』

「これだけはクリアは難しいと思います。思いついたのは銃殺刑方式だけ」

『ああ、書いてあったわね』

「あれは良心への言い訳です。結果みんなで殺人です」


オレは続ける。

「逆に皆の意見で機械が方法を一つ選ぶ。誰か特定できない指示を機械が実行したら?」

『責任は、だれ』

「全員でしょうね。何するかわかってるんだから。ただ主犯は特定できないってだけです」

「んん、でも面白いから覚えておくわ」

「直(ちょく)に殺人だと責任モロ被りになりますからね。結局は自殺中継しかできないことになる」


『ねぇタク… タクはそんなことばっか考えてるの?』

「そ、そんな… きのうが初めてですよ」

『ホント? なんでそんなことしたの?』

「えっ、社長指示では?」

『アタシそんな指示してないわよ』

 社長はいたずらっぽく笑っている。


「うふふ… 恐れ入りました。まことそのとおりでした。じつは毎日考えてます」

『そうだと思ったわ、悪い顔してるもん。そちもワルよのぉって感じ』

「いえいえ、お代官さまには到底及びませぬ」


……


一瞬、間が空いた。

『ほっほっほ』

「ほっほっほ」

同じタイミングで声が重なった。

『これじゃ時代劇だわね』

「これじゃ時代劇ですね」

同じタイミングで同じことを言った二人は、腹を押さえてしばらく笑い続けた。


『ああ、お腹痛いね、タク…  じゃ④行こ』

ようやく笑い納めて、社長が言った。

「④⑤⑥の構想は… ふふふ、一つしかありません。モデルは… あ、失礼、IRです。」

『それはどういう?』

「①④⑤⑥全部を扱う複合型施設の経営、解決策はこれしかありません。ただし…」

『ただし?』

「バレた場合、街ごと消滅の危機になるのは確実ですが…」

社長は考えこんでいる。


『タク、サブマネやりなさい』

「えっ? いま何と?」

『サブマネージャをやりなさい、来月から。新企画検討担当の特命を付けるから』

「ちょっと待って…」

『いいから。』 と社長がオレの口を指で封じた。

『基本給倍の代償よ。タクは今までのこの会社にない企画を検討し、企画会議に挙げるの』

「そんな、いきなりですか?」

『今まで居た人には解らない新しい視点が必要なのよ、この会社には』

「はい、しかし…」

『黙って。タクは企画会議の1週間前には、まずアタシだけに企画を報告するのよ』

「はい」

『そこで打ち合わせて会議、だよ。必要なら言ってね、スタッフ付けるから』


「私は明日から何をすれば良いですか?」

『まずあらゆる部署に行って、実情をよく見てきなさい。明日会社に指示を出すわ』

「はいわかりました。でもルーベッドはとても解決できませんよ」

『それはだんだん考えましょ。いまはまず、できることから。焦らないでね』

「御配慮ありがとうございます」


社長は気軽に言うけどさ、しかしそんなこと今のオレにできるのだろうか。


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