第29部分 合意
第29部分 合意
死者の叔父は五月雨ホテルの回し者だった。そしてこのことは、五月雨ホテルが何らかの情報源を帝北ホテル内も持っていたことを意味している。ただしあまり上の方ではないだろう。上層部は軒並み事情聴取中だから(笑)。
しかし言動は注意注意、行動は慎重にしなくては。
このままでは帝北ホテルは間違いなく廃業で、関係者は離散する。潰れてしまえば仁義は不要になるだろう。オレに何を求めるのかはまだ分からないが、おそらく狙いは帝北ホテルの「ロシアンルーベット」の二番煎じ。帝北のノウハウを聞き出し、差別化したプランを作り、新たな収入源にしたいのだろうが、諸問題の本質は未解決のままだ。
平たく言うと、嘱託殺人・自殺幇助・死亡検案書の虚偽記載など、要の闇の部分をどうするつもりなのだろう。それに今は警察も医療関係者も顧客もピリピリしていて、とてもそれどころではないはずだ。しかし需要はたしかにあったし、遠い将来を見据えて密かに下準備をしておくつもりなら理解できなくはない。
翌日昼に南風原から電話が入った。
『こんにちは、月見里さん』
「こんにちは、南風原さん」
ちなみにオレは「もしもし」と言う習慣を嫌っている。
『一晩考えて… 御協力いただけますよね』
「はい、基本的には。私の役目は何ですか」
『まずは社長や重役の御伽衆とフロント業務ですね』
「御伽衆って、あの戦国武将のアレみたいな役ですか」
『これは話が早い。アイデアや役立つことを自由に語っていただきたいですね』
「アイデアを自由にですか、なるほど」
『いかがですか』
「わかりました、お引き受けいたします」
『これはありがたい。早速上に報告します』
「よろしくお願いいたします」
『またお電話差し上げますね。では』
オレはそのままレナにラインを送った。返信はすぐに来た。
「レナ、こんにちは。取り調べはどう?」
『タク、ありがと。精神的にキツイわ』
「可哀想に。レナはなんでもないのにね」
『仕方ないよ』
「そう、オレ転職する」
『え、どこへ』
「五月雨ホテル」
『あそこ? なんで』
「声掛けられた」
『でも… なんでもない、お給料は?』
「給料倍だって」
『ええ? すごいね タク』
「こないだの女のコの叔父さんね」
『うん』
「レナ約束、黙っててくれる?」
『もちろん』
「叔父さん五月雨の回し者」
『まさか。でもつながるかも』
「だろ? おかしいと思ったよ」
『信じられない世の中』
「まったくだ。レナだけ、信じられるの」
『レナもタクだけ』
「叔父さん スケベ心で服めくったと思ってた」
『同感。でも裏地もあったのね。』
「真っ黒なやつね」
『ねえタク、会いたい』
「オレも レナ」
『会ったらキスして』
「あたりまえ!」
『今して』
「今!? (*´ε`*)チュッチュ」
『わお! うれP』
「あ、レナはいまどこ」
『ああ、別のビジネスホテル』
「近い?」
『近いよ。えっと…なんだっけ?』
「ふふふ、それよくあるね。で、どこ?」
『ホテル シーレイン』
「わかった、あそこね」
『来てくれる』
「いまから行く」
『家族いるよ』
「わかってる、ロビーでいいだろ」
『うん 待ってる』
「じゃ行くね」
『あ、ちょっと 十五分待ってから来て』
「え、どして」
『スッピン ちょっと化けたいの』
「かまわんて」
『レナが構うの』
「全然いいのに。でもわかったよ」
「ありがと。大好き」
「会いに行くね、大好きなレナに」




